ハリーポッターがオナラでジェットスキーになる怪作『スイス・アーミー・マン』最高!
この企画にゴーを出せるA24凄すぎる。
いや、観てみれば、もの凄い面白い映画だって分かるんですよ。
でも、ほぼ長編映画初監督に、こんなチャレンジングな設定の作品、しかも、主役はいくら顔が売れてるからって魔法の世界以外では大きなヒット作のないラドクリフ君と、よく殺されるポール・ダノ(個人的にはブライアン役で大好きだけど)ですよ。
しかも、その設定というのも、とある理由で無人島に漂着したポールが孤独に耐え兼ねて自殺しようとしていたら海からラドクリフが流れ着いて、見ると死んでるみたいなんだけど、ずっとオナラを出し続けてて、死後の腐敗ガスだろうなんて諦めて、もう一回、自殺しようとしたら波にさらわれたラドクリフのケツから出る空気をエンジンに動きはじめたから、これ、乗れるんじゃね?って跨ってみたらジェットスキーよろしく勢いよく進んで、ポールが脱出の悦びと向かい風の気持ち良さから「フォーッ!」って叫んでオープニングっていう。
訳がわからないでしょう。
でも、訳がわからないまま、物語が最後まで進みます。
序盤で「うわー、非現実ー」って冷めたらおしまい。
「これは、こういう世界観だ」って自分に言い聞かせると、最後まで楽しみきれるでしょう。
ポール・ダノの演技力は過去作で存分に実感してきましたが、ラドクリフ君があれだけハジけられるとは驚き。
女優さんで言ったらフルヌード濡れ場バンバン並みの身体の張りよう。
非現実的な存在を、納得させるのは、あの表情と確かな演技力があってのことでしょう。
恐らく、ずいぶん前から、そうなのだろうけれど、子役時代の面影はなく、カルト俳優的な立ち位置を手に入れた作品となったのではないでしょうか。
全編、厨二病的な下ネタ満載で「もはや、これは下ネタを言ってるのではなく、哲学的な話を続けているのでは?」「なぜオナラでジェットスキーのように進むことを笑えるんだ?」なんてゲシュタルト崩壊を起こすほどなのだけれど、それでも気持ちが悪くならずに、2時間観続けられるのは、その色とりどりの映像の美しさと、音楽の美しさもあってのことでしょう。
CM制作出身の監督ということで、日本の監督で言えば石井克也や中島哲也的なアレですか。
ただ、YouTubeでダニエルズ監督の過去のショートフィルムを観るに、そもそも作家性が溢れまくっちゃって手に負えない感じなので、たまたま今までの活動の場がCMだったってだけなのかな。
https://youtu.be/DPG3YrWbB2A
映像のセンス的には、なんとなく大好きなミシェル・ゴンドリーを想起しました。
オリジナル作品を作りたくて仕方がないだろうけど、ストレートな作品の監督としても観てみたい。
あとは、音楽も素晴らしかった!
こちらはヴィルヌーブの『メッセージ』ぽいと言うか、宗教色のある音楽なのだけれど、驚くのは楽器を使ってないという事実。
音楽を手がけたのは米アトランタを拠点に活動するインディ・ロック・バンド、マンチェスター・オーケストラのアンディー・ハルとロバート・マクダウェルだそうで、全て「声だけ」で音楽を作ったとか。
どうかしてる。
でも、思わずサントラをApple musicで聴いてしまいましたよ。
耳に残る。なんか勇気が湧く。
https://itunes.apple.com/jp/album/swiss-army-man-original-motion-picture-soundtrack/id1117618757
下ネタが超苦手!って人にはオススメできないけど、間違いなく映画でしか表現できないことをやってるし、めっちゃ笑えるし、最後グッと来るしと、考えさせられるエンタメなので、どなたにもオススメ!