『水曜スペシャルノンフィクションどうでしょう 第1回(第4稿)』
*『水曜スペシャルノンフィクションどうでしょう 第1回(第3稿①、❷、③、❹、❺)』の❺をまず読んでから、お進み頂ければ幸いです。お進み頂かないともっと幸いです。ま、行くも地獄、引くも地獄だよ。
【1999年12月24日(金)(『ナチュラルボーン戦場特派員が戦場童貞を捨てにいく話』より抜粋)】
7時30分起床。どうやら寝坊しないで済んだようだ。このまま二度寝しなければ、だ・が・な。
しっかし、ホント体調もバッチリだ。しっかも、なんか今日はいいことがありそうな予感がする。自慢じゃないが自慢だが、俺のこの手の予感は結構当たる。
おいおい、クリスマスイブの今宵、ヤレちゃうかもよ、ズッコンバッコンと。あ、起っきしちゃった。「出番は夜だぜ」と言い聞かせる、手でやさしくね。
ふぅ~。カレン民族解放軍の従軍初日にはこうと取っておいた、一張羅の勝負パンツにはきかえ、気をひきしめる。ヤッたるで~、夜の2回戦も。
8時30分、ホテルの玄関にピックアップトラックが停まる。ツアーのお客様がトラックの荷台に乗るのだ。申し訳なさ程度に天井と側面に幌はついているが、動くオープンカフェ状態だ。
まあ、タイでは北に位置するチェンマイなので朝晩は若干冷え込むが、昼間は暑いくらいだから問題ない。
トラックの荷台には、左端と右端に長いベンチが向き合うように置いてある。
俺が腰掛けた向かいのベンチの正面に20代くらいのノルウェー人カップル、その隣が2、30代のアメリカ人カップル。俺の横には、20代とおぼしきイタリア男3人組。
揃いも揃って、白人ばっかし。逆にこいつらの体臭がアレだから、オープンエア状態でよかった。
昔、ベトナムで、密室のバンタイプに同じように白人ばかりと乗り合わせたときはもう臭くて臭くてゲロはきまくってやったぜ。しかもゲロの方がいい臭いとくらあ。
白人も自覚しているのか、朝から香水をおもいっくそふりかけているが、そのきつい香水の下から白人臭が朝からもう漂ってきている。
ったく、一体ナニ食ってんだ。タイにいる間くらい、タイ料理を食ってりゃ、そんな臭いしねえだろ。ある帰国子女曰く、「白人はシャワーばっかで湯船に浸からないから、臭い垢がブヨブヨの青白い肌に地層のようにたまりにたまっている」とのこと。
はぁ~、先が思いやられるぜ。
ちなみに、この肌寒い朝の中、半袖は日本代表の俺とノルウェーカップルの男のみ。
この半袖ポロシャツのノルウェー男、モシャモシャの胸毛をはみ出させ、腕毛もモジャモジャ。
反則じゃん。毛皮着ているようなもんだ、まさに毛唐だ!
こんなんに比べたら、俺のオケケなんてもうパイパン状態、ワレメちゃん丸見えでございます。もしくはうれし恥ずかし生え出し中学生並み。ワレメちゃん、ちょい見えでございます。
さて、朝から悪態つく間に、ピックアップトラックは街から遠くに見える山並みに向かって疾走。幌の役目はほぼない。高いB払ってふきっさらしの罰ゲームだ。
やっぱ、白人臭が充満してもいいから、普通のワゴン車とかの方が…クション。
ああ、吹き荒ぶ寒風に、ピチT一丁じゃ、腹と腰が冷える。せめて大き目の半袖をピチTの上に着込んでこればよかった。
てか、ケチケチせずに、昨晩の市場でセーターを買っておけばよかった。
寒さに寒イボと弱気が出てくるが、俺は半袖日本代表として、一歩もひくわけにはいかん。ココが踏ん張りどころだ。
先手必勝。「暑いぜよ」とピチTの両袖をまくりあげ、まるでタンクトップかと見紛うばかりを、ノルウェーの胸毛野郎にどうだと見せ誇る。
奴の目に脅えが走る。よもや攻撃の手をゆるめじ。タンクトップ状態から乳首チョイ見せ。乳首はカチカチだ。奴はもう目を完全に伏せていやがる。圧勝だ。
圧勝の代償か体がガタガタ震え出す。山道に入り、車は揺れまくるのでうまく震えを誤魔化せたのが不幸中の幸い。
マッチでタバコに火をつけるふりをして、マッチの炎で暖を取る。「もう風が強くてなかなか火がつかない」とマッチ売りの少女斯くありやと何本もマッチをこすって根元まで燃やしきる。芸の細かい日本人の器用さも猛アピールだ。
10本目のマッチを超えたところで、つい手違いでタバコに火がついてしまったので、仕方なく紫煙を燻らす。紫煙が猛烈な風で後に吹き飛ばされる。
タバコ先をさりげなく、かじかんだ手先に近づけて、暖める。
車はちょうど山道のもっと悪路に差し掛かり、車がガクンと揺れるたびに根性焼き状態になる。根性焼きが熱いのを逆手に「あつい、あつい」と、まるで半袖タンクトップ状態ビーチク横見せでも暑いかのようにふるまってみせる。
と、ずっと下を向いていた負け犬ノルウェー半袖ポロシャツ野郎がコソコソと、ボタンを一番上のボタンまでかおうとし、胸毛がからまって困っている。
ほんに、敗残者のみじめなことよ。
しかし、歴戦の蓄積は完全王者の俺の体をも徐々に蝕んでいたのだ。なにやら腹がゴロゴロキュルキュルと不審な音を立て始めた。
俗に言う、ポンポン痛いだ。
ナニクソ、100年に1人の逸材と呼ばれる自称プロ戦場特派員の俺の覚悟を見るがいい。
ペロン!
ピチTの腹をめくって、さあ、オヘソよ、風を感じろ。持ってくなら、持ってけ、カミナリ様泥棒!
どんなに分かっていても、男にはやらなきゃいけないときがある。
肩や膝がどんなに壊れようが、ここぞの一番では、エースは剛速球を投げ続けるんだよ。膝だ足首だが再起不能になろうが、ここしかない場面では、エースストライカーはカミソリシュートを蹴るんだよ。
こんな玉遊びの連中ですらできるんだ、己の身を省みずに勝負しなきゃいけない刻に、自称プロ戦場特派員がヘソを出し惜しみしてどうする。ヘソなんてカミナリ様に取られてもいい、腹だ腰だがもっと冷えて、出るもんが出るなら、堂々と出し切ってやるぜ。
とりあえず、いくら待ってもカミナリ様泥棒が来ないので、ヘソを隠す。ついでにタンクトップ状態も正しいピチTに戻す。
チェーンマッチ、チェーンスモーキングは片時もやめられない。
ふぅぅ~、完全試合には勝ったが、どうやら勝負には完全に負けた模様の腹具合に、うぅぅ~。
追い討ちを掛けるように、根性焼きにならぬようタバコの火先ばかり見ていたからか、乗り物酔いを始めた頃、最初の目的地に到着。
10時、その男、象の背なに乗りて、鬱蒼とした密林のジャングルの道なき道をゆく。
象使いには見えない。青ざめた顔に時折り苦悶の表情を浮かべる。真っ赤に充血した目にうっすら涙を浮かべ、カサカサに乾ききった唇からくぐもった嗚咽を漏らす。オェ~。
明らかに象酔いだった(そうそう、このくだりを抜粋してネットのどっかに発表したけど、どこだっけな(14年後、2013年の俺です)。白々しい嘘を!(12年後、2011年の俺)。いやいや、時系列的に2011年の俺が、2013年の俺にツッコミすんのはおかしいだろ!(15年後、2014年の俺))
時折、腹痛も襲うのか腹を押さえては、苦悶の表情を浮かべる。
なんて、他人事のように実況中継し、自分の身に振りかかったつらい現実を誤魔化しながら、車酔いを下地に象酔いを上乗せした吐き気と定期的かつ間隔を段々狭めて襲い掛かってくる便意に耐えに耐えていた。
もし万が一、象の上で、上のお口と下のお口から同時にパオーンした日には、「アソコのご長男、タイで象印ですってよ、象印象印」、「…タイガー象印?」とご近所でヒソヒソと陰口を謎のダジャレ未遂で叩かれて後指をさされることは想像に難くない。
なんとか気合いで象を乗り切る。うっすら象で三途の川を渡った気がするし、バカ象のせいで木の枝に首を挟まれて死にそうになった気もするも、新発売のゲロハンジャ~吐きたて、象印みたいにならずに、象の背をゲロ&ウンコ抜きのまま降りる。
12時頃、象降り場から、ちょっと移動した飯屋で昼飯タイム。食前にようやくトイレに駆け込むチャンスを。
もちろんセーフだ! この勝負にも勝利だ!
一応、試合内容のご報告をば。超安産でした。元気な男の子みたいなウンコでしたよ。
さて、昼飯代はツアー料金に含まれているらしいので、クソ後、食べないと損なので、まだ気持ち悪いし、お腹の方も大事を取っておきたいが、腹が減っては戦が出来んとガツガツとパクツク。
食後に追加で、温めた泥みたいなホットコーヒー(20B)も飲む。五臓六腑に染み渡るうまさよ。
13時過ぎ、今度は川下りに向かうため、またピックアップトラックに乗り込む。
割とすぐ着いた、川下りする川を見下ろせる小高い丘に降り立った頃には、調子は短期間で完全復活!
快調快調と胸毛野郎に微笑む。そろそろ敗者にも哀れみを。
じゃあ、もっと。日本人の器用なのが手先だけではないところを見せてやろう。
菊の御紋も器用なところを見せてやろうと、快気祝いの祝砲代わりにスカシ屁の一発もひねりだすかと、得意のスカシ屁をかましてや…あ!
ココで臨時のお知らせです。ここから暫しの間のみ、このノンフィクションはフィクションとなります。
実在のいかなる団体や個人などとは一切関係ありません。
まさかのもしや…た~ま~や~!
「…アレレ、スカシ屁じゃなくて、アレが出ちゃった?」とアナルに緊急インタビュー。
インタビューを簡単にまとめると、「いやいや、違う違う、クリスマスイブの真昼間にサンタさんが突然やってきて、粋な、いや、活きなプレゼントを置いていっただけ。
あ、分かりにくい? なんちゅうか、俺だけちょっとだけ早く、川下りしちゃったみたい、お先です」。
緊急インタビューの途中ですが、う~ん、濁流の小川のせせらぎが、まず俺の右の太股の後ろ側をさらさらさらーって、上から下へ伝わり始めた感じがしないでもない。
が、これ以上、先には行かせん。
「ワッ、うんこ踏んじゃった」って感じで右膝を90度曲げて、即席のダムを作る。
膝の裏に濁流が溜まる、この得もいえぬ感触を、強いて言葉で表すなら、まさに即席の下痢湖、もう決壊寸前!
幸いにも左足にはまだ濁流の流れがいっていない。せめて、このまま右膝曲がりのダンディでいさせてくれ。もし左までいかれたら…両膝曲げて、ブリッコジャンプをするハメに(意味プーチン。←2011年の流行語大賞! …ええ、消しませんとも(2014年の俺))。
遂にココに進退極まり、「ヘルプ!」とツアーのガイドを呼ぶ。
駆け寄ってきたガイドの風下に片足立ちし、十分な距離もとる、もしウンコが漏れていても匂わない程度に。
右膝ダム、決壊の予感…3、ハイ、決壊! 今度は右側の靴下ダムよ、がんばれ!
無傷の左足を守るため、さりげなく重心を右へと自然に傾けるため、小首を右にかしげながら、急いでガイドにトイレの場所を聞く。
さすが腐れ観光地、川に降りる丘の中腹あたりにある小さな小屋が公衆便所らしい。
なるべく、スカシッ屁をしようとしたらウンコを漏らしてしまい、腰をかがめながらも器用に右膝を曲げつつ、慌ててトイレに駆け込む日本人風に見えぬよう、ゆっくり下って―――今、下ってるのは坂ですからね、勘違いしないでくださいよ。まあ、遠の昔に右膝ダムは決壊し、今はトレッキングシューズ用の分厚い靴下ダムの上で支えています。もっとダム建設賛成!―――トイレに駆け込む。
扉を開ける。よかった。タイ式のトイレで助かった。タイ式のトイレとは金隠しのない和式便所みたいなもんだ、概ね。和式便所との違いは、見えない金隠しを背にして、跨ぐ感じくらい。
一番大きな違いは、トイレの片隅に大きな水桶が置いてあり、そこになみなみと水が張ってあることだ。事が終わったら、水面に浮いている手桶を右手で持ち、水をくむ。「手酌で構いませんからお気遣いなく」なんて言いながら、不浄の左手をお椀状にし、そこに手桶の水を入れる。
後は、「失礼します、寒いわネエ、こういうところは初めてかしら。学生さん?」なんて言いながら、お椀状にした不浄の左手の水を局部に掛けながら、同時に菊の御紋をキレイにゴシゴシ洗うわけだ。
それを菊の御紋がキレイになるまで繰り返す。最後は、不浄の左手に水を何度も流して清めたらおしまい。紙はないけど、仏あり!
これ以上、現実逃避の時間稼ぎをしていても仕方ない。
意を決し、ベルトを外して、ズボンのボタンを外し、チャックを下げる。
後は下半身をクネクネとうねりながら、ストリッパーのようにそっと指をかけたズボンとパンツを徐々におろしていく。
このトイレひとりストリップを始める前はまだ最後の、一縷の望みがあった。もしかしたら、全部気のせい。汗汗、大量のドロリとした茶色い汗かもしれないと。
ズボンとパンツが両足首までおりて、ほぼ下半身がスッポンポンになったところで、勇気を出して下を向いて、直撃取材!「本当のところはどう…うわっ…」。
昔の言葉で言うところの、「私、脱いだらスゴイんです」状態。看護婦言葉で言うと「お父さん、元気な男の子ですよ」、「こんなの俺の子じゃねえ!」ですよ。
まあ、こんなめでたい席でそんなと眉をひそめる向きもございましょうから、何となくおめでたく松竹梅で言えば、松ですよ。ピンポンパンで言えば、ピン! シャンリンシャンで言えば、シャン!
そう言えば、カレーって好き? 好きだよね、日本人なら誰だってどんなカレーだって大好き。シャバシャバカレーで言えば、シャバ!
…もうシャバシャバです。
シャバシャバ味のカレーとシャバシャバ味のウンコ、どっちって聞かれたら、後者ですよ、後者が正解、後者が大好き!
まあね、最初から分かってましたよ、ハッキリと匂いで、私はプロですからね、ええ。
もうプロとしてどんな言い訳もできません。
でもね、アナルは閉じたままだったんだよ! その間隙をついて、つけるほどシャバシャバだったから、閉じたままのアナルの隙間から流れ出したらしく、アナル通過感は自分で確認すらできなかったんだから、俺は悪くない!
まずは、いまのところ被害の確認されていない靴を脱ぐ。右側の被害が確認されしズボンは、ノー被害の左、重症の右の順に上手に脱ぎ、トイレの安全地帯に避難させる。被害の出ていない左靴下、そして重傷を負った右靴下はちょっと離して一応避難させる。
しかし、壮絶な若死にをした寿命半日弱の勝負パンツはトイレの片隅に投げ捨てる。現代科学ではもう手の施しようがないひどい有様だったから仕方ない。
さあ、これで下半身は完全にスッポンポンだ。
アレコレ考える前に、まずは出すものは全部出し切りましょうか。よっこいしょういちと便器を跨ぎ、消化試合を粛々とこなす。
チキショ~、俺は、俺はなあ、こんなことをするためにチェンマイくんだりまでノコノコ来たんじゃねえやい。
もう自棄酒だ。自分、今日はガンガンいきたいんで、手酌で失礼しますとかつぶやきながら、ジャパジャパ手酌でアナルに水を掛けながら、左手でゴシゴシとキレイにする。
浴びるように狂ったようにかけにかけまくる。
もちろんアナルだけでなく、おしりも足も、特に右足太股の後側から右膝裏ダム、右ふくろはぎにかけても丁寧に丁寧にキレイキレイ。
風呂みたいに大きな水桶に直接飛び込む案もあったが、最後に流し湯できないので却下。
最後は手をキレイに洗って、きれいさっぱり。なみなみと湛えてあった水桶はもう半分以下に。
さ~て、残るお仕事は証拠隠滅のお時間でだけすよ~。
重傷を負った右足靴下は、被害は上の方だけなので、残っていた水で集中的に傷口を洗い流し、繊維の奥まで染み込むってことは考えないことにし、濡れ靴下をはいて問題解決。
若死に勝負パンツは、タイはチェンマイの奥地のトイレに、やはりこのまま置き去りにすることに。クソの役にも立たなかった、まあ、ある意味クソの役にはちょっとは立った勝負パンツに最後の一瞥をくらわす。
よかった、勝負パンツだからって戦場ネームと住所を書いておかなくて。
でもなんかさあ、敵地に重傷を負った戦友を置き去りにするみたいで、後ろ髪をひかれる思いが…。
きっとすぐ迎えに来る、かならず助けにくるからちょっとだけ待っていてくれよと言いながら、子供を捨てる親の気持ちが少し分かった気分(おひさ、2011年のオレオレ。そういや、この12年間一度も思い出したことすらねえや、こんなダムの役にも立たねえクソ勝負パンツのことなんて。きっと今頃、どっかのホモスカトロマニアに拾われて、幸せに第二の変態人生を送っているんじゃないかしら)。
さて、大問題はズボンだ、恒例のズボンファッションチェック! 緊急避難させておいたズボンを手に取り、お尻回りと右足を中心にチェケラ!
やはりアナル周辺と右足の内側部分に転々と茶色いシミが広がっている。
今回、タイにはズボンは一本しか持ってきていない。替えのズボンがないので、勝負パンツのように捨てるわけにはいかない。
もっと身軽に取材したいが、パンツ一丁で取材するわけにはいかん。
そもそも勝負パンツ一丁は今さっき捨てたばかりだから、下半身スッポンポン一丁に靴下だけ(片方は洗ったけど繊維の奥にはウンコつき)なんて間男スタイルで川下りができますかってんだ。
といって新しいズボンを買う金ももったいないし、近くにズボン屋はなさそうだ。
仕方ない、ズボンのポケットの中身を全部取り出して、ゴシゴシ洗うしかあるまい。
この後、川下しだし、ズボンがビショ濡れになっていてもうまく誤魔化せるはず。
嗚呼、まさにこれぞ、自称プロ戦場特派員ならではの苦悩ではないか。職業病ってヤツだ。ホント悩みはつきないぜ。
なかなかトイレから出てこない日本人を心配したのか、ガイドがトイレの扉を叩く、「オッケー?」と。
タイ人と日本人が、タイでイギリス語を話し合う醜悪さとか言ってる場合ではないので、「もうちょっと待って」と別にウンコを漏らして困っているわけじゃないぜ感だけは伝える。
どうやらガイドは、このまま外で待っているらしい。マズい。まだ心の準備が、下半身スッポンポンwith靴下、右ッ側はビショ濡れで繊維の奥にはウンコだけど。
もはやズボンの中身を全部取り出して、悠長にズボンを503みたいに洗っている暇はない。
ズボンの内側に泥がちょっと跳ねたと思えば、はけないことはないし、いいや、もうはくしかない、ノーパンではくっきゃナイト! 完全犯罪成立のためなら、ええい、ままよ、やるっきゃ騎士!
なるべくズボンの右足の内側に触れぬように、足を通すも生身と半乾きの生身がぶつかる。つ・ま・り、俺の生足だ生尻と半固まりかけた俺の元生ウンコがゴッツンコ!
まあ、南国のおかげか、半乾きというか、ほぼ乾いているのが救いだ。
残す問題は、トイレからの出方である。
こんなに長い時間トイレに篭っていたら、ひどい便秘か、うんこ漏らして後始末に時間がかかっていたかの二択しかない。
アナルを押さえながら、「お・ま・た」と勢いよく扉を開ける。飛びのくガイド相手にすぐさま、ひどい便秘で困っちゃう猛アピール演技を披露する。
そして、まだピカピカのノーパン一年生で恥ずかしい、馬子にも衣装、「捕まえて御覧なさい」と言わんばかりに、一気にガイドとの距離を稼ぐ。
「本当に便秘の方だから、変な想像しないでよ、もうエッチ」とできたてホカホカのノーパンを気取られないように、素知らぬ顔で「さあて、そろそろ川でも下るか」と川の方に下ろうとすると、ガイドが止める。
どうやら、俺以外のツアーメンバーは、もうとっくの昔に川下りに行ったらしい。
なんて薄情な白人連中だ、黄人だって同じ人間だろ。ウンコの後始末中くらい待ってろよ。
てか、ガイドもガイドだ。これじゃあ、せっかく楽しみにしていた川下りが、腹下しで終わっちゃったじゃねえか。
ただ、こうなると、間一髪で命拾いだったな。
川下りしてないのにズボンがビショ濡れじゃ、完全に腹下りでズボンがビショ濡れとバレちゃうとこだった。
天はまだ俺の味方だ。運はまだ尽きてない、ウンもな。
ガイドは車で下流に移動して、川下り連中を待ち構えるとのことで、勝手に置いてけぼりにした俺をとっとと拾って、早く駆けつけなきゃいけないらしい。
仕方なく、後に従う。ブツブツ小声でクレームをガイドの背にぶつけながら。
いいよ、アイツらはそのまま海まで流しちゃえば、臭いから。川下り代を返せ、もしくは腹下し代を払え、せめてパンツ代くらいよこせ。
他の奴らが払った銭の分、まんまと川下りを楽しんでいる間、同じように銭を払った俺は有料腹下し、パンツ代分は足が出たしウンコが出たし。
ガイドが妙に急いでいるというか、俺との距離をなるべく取ろうとしている。それどころか俺の尾行を巻こうとしてないか。まるででっかいウンコ日本人に追いかけられて逃げているかのようだ。
まさか、このガイド、トイレの窓か隙間から一部始終を見ていたんじゃ。
俺の正体がウンコストリッパーとバレてる!?
…もしそうなら、あやつ、このまま生かしてはおけぬ。
その前に、日本代表のウンコストリッパーとして恥ずかしくないウンコプレイを正々堂々とウンコシップに則り、行なえたか振り返る。
走馬灯のように、血の滲む努力の一コマ一コマが駆け巡る。
しゃがみこんだ姿勢でバランスを保ちながら、片足をあげては、右手の手酌から水をパスしては、お椀状にした左手でアナルを洗う、ワンワンプレイなんてファインプレイものだった。
そういや、水を前からかけたほうがいいか、後ろからかけたほうかいいかスランプに陥ったこともあったな。
タオルがないから、何度も何度も犬のようにブルブルして、ケツ毛から雫を振るい落としたのは気迫溢れるガッツプレイだった。
大丈夫、どのプレイもフェアプレイでベストを尽くした。
おめでとう、金メダルだ、まさに黄金色に輝き匂う!
そんな青春を賭けて戦った日々を恥ずべきではない。そもそも参加することに意義があるんですよ、こういう競技は。
日本一のウンコストリッパーとして胸を張り、姓は「スカシ屁改めウンコ漏らし」、字は「パンツ捨てマン」ってウンコネームな仇名を受け入れよう。
だから、「どうか、このことは皆には黙っていてつかわさい」と小声の日本語とともに、ピックアップトラックのところに着く。
今、ツアー客は俺だけだから、「助手席に乗るかい」と誘ってくれると思ったガイドはとっとと運転席へ。
俺は結局、荷台のベンチにポツンとひとり。俺はベンチウォーマーじゃねえぞ!
ノーパンにウンコズボンの組み合わせだから、ケツは冷え切っているさ。
このままじゃ、いつまた温かいのが出てきてもおかしくねえな。
でも狙うぜ、レギュラー!
川下りの終点ポイントらしきにピックアップトラックが停まった。
川下りから帰ってきた奴らはウンコより臭い。川の水でキツい香水は薄れ、白人臭がムキ出しに。
こりゃ、俺のウンコの匂いもまぎれるってナイスな仕組みだ。
まさに最強の布陣。あらかじめ俺がウンコを漏らしてもバレない天の差配。
まさに神風の再来だった。
ま、もし少し匂うとしたら、それは点々とズボンについたままの茶色い染みのせいで、俺のせいじゃないし。
15時頃、でもノーパンDEウンコズボンな羞恥プレイは続く。
ウンコのついたズボンをノーパンではいたまま、タイのチェンマイ近郊に暮らす、少数民族カレン民族の村に見学に行かされる。
村中を好きに見学して、バンバン写真も撮っていいらしい。
村人に手工芸品を売りつけられるが、パンツやズボンは売ってないので、何も買わず。
需要と供給のバランスがうまくいかない。
しかし、気もそぞろ過ぎだ。
村の隅っこで、気分は時効を待つ犯人気取り。ある意味、今の俺の方が少数民族だ。
人望のなせる技か、放し飼いの犬だ豚だ子供が、せっかく村の窓際族になっている俺の尻に寄ってきて群がる。
お前らのエサにするためにウンコ漏らしたわけじゃねえぞ、甘く見んな。
時に自称プロ戦場特派員は毅然とした厳しい態度を取らざるを得ないときがある。ガキだ豚野郎だ犬畜生だ相手にも。
シッシッと追い払う。
実はこのトレッキングツアーには、カレン族の村にお泊りコースもあったのだが、日帰りコースにしておいて、ホントよかった。
先見の明、我にあり!
さて、ココからまたノンフィクションに。
お忘れ、これはお堅いノンフィクション。まさかいい年こいた、自称プロ戦場特派員が仕事サボってのツアー三昧中に、ウンコもらしだなんて、そんな三文小説のシンデレラストーリーみたいなことがあるわけない。
言い訳するわけじゃねえけど、コレはねえ、天災、いや、もう労災みたいなもんですよ。
エースが肩壊すとか、料理人が包丁で指を切っちゃうとか、スナックのションベンホステスあけみが本当の愛が分からなくなるとか、その類の自称プロ戦場特派員稼業という厳しい仕事特有の職業病みたいなもんだ。
そもそも人間なんてちっぽけな存在です、すかしっ屁中の不意なうんこ漏れの前には。ひれ伏すがいい。もはや人智を超えていたのだ。いかに科学技術が進歩しようとも、人類はいまだにそれを防ぐ手段を得てはいない。垂れ流しのエテ公と一緒っすよ、人類も。同じ状況になれば誰だってアナタだって俺と同じハメになっていただろう。や~い、うんこ漏らし。
今回たまたま俺がババをひいて、ババを垂れ流してしまったわけだが、こんなもんロシアンルーレットみたいなもんで、誰にも等しく同じことが起るはず、起れ、いますぐ、お前にもお前にも宇宙船地球号の全員に!
今後もうんこ漏らしの話題が折に触れて出てくるかもしれないが、その部分だけはフィクションだから、各々方、よきにはからえ、同じ日本人でよかったと思わせてやっからよ、いつか。
16時頃、帰りの車では念には念を入れて、ちゃんと風下になるように一番後ろに。
イタリア男3人組を奥に行かせる。隣のイタリア男との間にカメラバックを置いて距離を保つ。
目の前のアメリカ人カップルは幸いウトウトしている。チャンスだ、鬼畜米英め。
しかし今はまだ時期ではない。今日はウンコ漏らし記念日だから勘弁しておいてやる。ただ少なくとも俺はお前らなんかに一度も負けたことはない。
などとなるべくうんこのことは考えないように想いをあちこちにはせる。
夜が近づき、また冷え込んできた中を、ピックアップトラックはチェンマイの町を目指し、山道を疾走しているが、どうやらノーパンのお尻とくっついている、ズボンの例の塊がずっと座っている熱で溶け出してきた、ほんのりと香る匂いがしてきた。
さりげなく尻を浮かして、空気椅子。いつまでもベンチウォーマーなんかやってられないぜ。
レギュラー獲りには一に努力ニに努力、三、四がなくて、五に汗と涙の結晶とウンコの塊、溶けかけ。
17時過ぎ、ようやくホテル前にピックアップトラックが横付けになる。
いや~、トレッキングツアーってホント命懸け。ギリギリの綱渡りだった、一度奈落の底まで落ちたけど、ここまで這い上がってきたぜ。
戦士に束の間の休息も許されない。さっそくホテルのバスタブに生温いお湯をはって、ホテルから抜き足差し足忍び足。
17時30分、私の姿は市場にあった。もちろんノーパンクソズボン姿のまま。50Bで洗剤とたわしとハンガー。
ちょっと、何に使うかなんて、下衆な想像しないでよ。…ご想像にお任せします。
ええええ、そうよそうよ、下衆なご想像通り、うんこズボンに洗剤まぶして、たわしでゴシゴシ洗って、ハンガーに干す気満々よ!
なんか文句ある? ウンコ投げるよ!
18時、ホテルの部屋に戻り、張っておいたぬるま湯のバスタブに脱いだウンコズボンを浸す。
しばしノーパンフリチン姿で待ってから、買い揃えた洗剤、タワシでウンコズボンをゴシゴシ。
うんこを洗う仕事をするくらいなら、早くホントの仕事がしたくてしたくて仕方がない。
一通りキレイに洗ったが、念には念を入れて、今一度浴槽にぬるま湯をはり、洗剤を大量にばらまいて、うんこズボンをしばし浸す。
うんこズボン待ち。この無駄な時間よ。しかしコレも自称プロ戦場特派員の仕事の一環。
この経験が後々生きてくるかもしれん。
1時間待ったら、またゴシゴシ洗って、よ~く絞ったら、キレイにハンガーに干して証拠隠滅。
こんなことばっかしてるけど今宵は折しもクリスマスイブ。
チェンマイでの日帰りトレッキングツアーに1000Bも突っ込んで、主にうんこを漏らしただけ。今年のクリスマスイブの想い出はうんこ漏らし、プライスレス。
あくまで比喩表現ですが、そんなクリスマスイブは大人の味、ホロ苦い思い出。
洗っているときにウンコのおつりがはねたとか邪推はやめてください。あくまで比喩表現ですから、ええ。
とある事情で胸いっぱい腹いっぱいになって、夕飯は抜く。
21時、もうすることがないし、体を清めたいけどうんこが先に入った後のお風呂を頂くというのもアレだし、そもそもぬるま湯だし、お尻と手だけ洗って、サンタさんを待って早く寝ることにする。
ねえ、サンタさん、できればスカトロ可のサンタさんが早く来ないかなあ。今年のプレゼントは新品アナルがいいな!
○本日の出費、「計算するのが面倒臭いから、各々で適当にしといてよ」B。ついでに一日の流れも「いちいちうっとうしいから誰か簡単にまとめといて」ジャ~。
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