メルカリ流行による激変のリユース業界を紐解く
はじめに
近年「手軽さ」「お得感」などからフリマアプリは大流行しました。その火付け役となったメルカリはメルペイや海外展開など日本を代表する企業となりつつあります。
その一方店舗型リユース企業ってどうなったんだろ?と疑問に思いました。
そこで市場規模の高い2社を中心にマーケティングトレースしてみました。フリマアプリもリユース市場に含めて考えています。
1.レンタル→アパレル?業界1位ゲオホールディングス
ゲオと聞いて頭に浮かべるのはCDやDVDのレンタル、新品、中古ゲームの販売などを思い浮かべるのではないでしょうか。
ゲオはビデオレンタル点として誕生しメディア事業を強みとしていました。現在はアパレル、メディア機器中心のリユース事業やスマホなどのモバイル事業、新たにアミューズメント事業を開始するなど「豊かで楽しい日常の暮らしを提供する」という企業理念をもとに様々な事業を展開しています。
その中でも近年力を入れているのはリユース事業、特にアパレル商材をメインで扱う事業です。
実は「セカンドストリート」はゲオが運営しています。同形態などリユース系リユースと称される事業の好調がゲオの成長を支えています。
セカンドストリートの店舗数(2019年3月時点)は630店舗と2014年の2倍近くに増加しています。この店舗数は大手アパレル企業に匹敵します。
リユース業界がフリマアプリ躍進に影響を受ける中、順調に成長を遂げている要因を探っていきます。
2.窮地からのV字回復?ブックオフホールディングス
続いて「本を売るならブックオフ〜♪」のCMでおなじみブックオフホールディングス。駅前好立地に出店し、チェーン展開で販売、買取を安定させることで「新古本」市場を生み出しリユース業界で圧倒的な地位を獲得します。
しかし、ネットサービスの流行による環境変化への対応に苦戦します。
アマゾンなどネット上での中古本流通の増加、メルカリなどフリマアプリの登場による影響を受け業績を悪化させます。
さらに店舗を抱えずに売買可能なネットサービスに対して、ブックオフは駅前好立地に店舗を抱えるため、土地代、人件費など店舗運営費用は重荷となっていきます。
その結果2016年に上場以来初の営業赤字に追い込まれます。
窮地に追い込まれたブックオフは、「本だけじゃないブックオフ」を掲げ商材や店舗戦略など抜本的な改革を行った結果見事にV字回復に成功。この要因を紐解いていきます。
3.リユース業界の環境整理(PEST)
Point
①リユース市場規模拡大
フリマアプリの流行により中古品への抵抗感が薄れ、リユース市場は活性化しています。リユース人口の拡大や流通量増加が見込まれ、今後も成長していくことが予想されます。
②リユース市場規模は店舗<ネット
リユース市場の売上構成比ではネットが店舗を超えるまで成長しています。将来的にはフリマアプリなどCtoC市場が店舗、ECを含めたBtoC市場を上回ることが予測されます。
③「衣類・服飾雑貨」「ベビー用品」「日用品」などが大幅拡大
商品別に見ると衣類・服飾雑貨が市場を大きく拡大し、リユース商品類で一番の売上高となっております。その他ベビー用品、日用品などフリマアプリで売買される低単価商品の売上が拡大しています。
4.5Force分析
Point
①価格の査定を消費者が行う時代に
フリマアプリの流行により、消費者が相場を把握し、自ら査定を行うようになりました。その結果相場の高いフリマアプリの利用者が増え、既存のリユース企業は買取方法の見直しが必要となりました。
②ブランド品を巡る業界再編
低単価商品はフリマアプリが影響力を強めた為、従来のリユース企業はブランド品など高単価商品の売買を強化します。大手企業はブランド品に強い中小企業を買収、傘下に置くことで市場競争が激化しています。
5.2社を4P分析で紐解く
5−1 流通
フリマアプリ、特にメルカリの登場によりオンラインでの取引が増える中、ゲオとブックオフはどのような販売戦略をしてきたのでしょうか。
それを紐解く鍵が貸借対照表に現れています。
そこで問題です。
(※読みづらい図ですみません)
上の図はゲオとブックオフの2019年の決算時の資料を参考にしています。
どちらがゲオなのか皆さんお分かりでしょうか。
ヒントは①現預金、純資産の違い ②有形固定資産の違い
に着目して近年の取組を仮説立てする事で答えが見えてくると思います。
正解は↓
①がゲオ、②がブックオフでした。簡単でしたでしょうか。
この財務数値をもとに2社の販売戦略を紐解きます。
ゲオ:強気の出店攻勢
リユース業界が環境の変化に苦しむ中、ゲオは商品買取、販売を強化するために強気の出店攻勢を続けます。特にセカンドストリート業態の出店を強化し、成長を続けています。
その他アメリカやマレーシアなどへの海外進出、企業から余剰在庫を買い取り、「新古品」として販売するオフプライスストアなど様々な業態での出店を強化しています。
ブックオフ:不採算店舗、事業の見直しで固定費削減へ
①駅前店舗減らすことで固定費削減へ
ブックオフは駅前に店舗を構えることで成長を続けてきましたが、好立地出店の影響で固定費がかさみ、業績悪化の要因の一つとなっていました。
そこで店舗戦略を改め、駅前の不採算店舗を閉鎖し販管費削減に努めました。現在は駅前不採算店舗の閉鎖を継続しつつ、郊外にて大型店を出店し、ファミリー層獲得など業態変更を進めています。
②ハグオール事業の見直し
また2013年に新たな柱となるよう総合買取業ハグオールをスタートし、催事での販売、イベント買取、百貨店内買取窓口、宅配買取など様々なチャネルで売買する事業を展開します。
しかし集まる商材のばらつき、時期による買い取り量の波など、買い取りから販売までの物流費などのコストがかさみ、業績悪化の要因の一つとなっていました。その結果2019年3月期に百貨店内買取窓口に一本化し、倉庫や土地の売却で固定費を削減する事でスリム化を図ります。
安定的な売上で出店攻勢を強めたゲオ、業績悪化からスリム化を図り復活したブックオフ。この2社の相反する店舗戦略が有形固定資産や現預金、純資産の違いとなって貸借対照表に現れています。
5−2 商品
ゲオ:専門性を強化
ゲオは様々なジャンルの商品を取り扱う総合リユース企業ですが、「セカンドストリート=アパレル」のように専門分野を強化するブランディングをしています。「セカンドストリート」以外では近年人気傾向にある中古スマホへの売買を「ゲオモバイル」として強化し、成長を促進しています。
また楽器専門店、ブランド特化店、アウトドア専門店など商品ごとでの専門店出店を進めており、リユース業界の中で専門性を伸ばして成長しています。
ブックオフ:地域ごとに合った商品展開→本依存脱却へ
ブックオフは「本だけじゃないブックオフ」を掲げ、本部主導で一律の基準を設け、商品戦略の抜本的な転換を行いました。その結果本が並べられていた棚にテレビが数台だけ置かれるなど小型店舗を中心に売り場効率が悪化し、業績悪化の要因の一つとなっていました。
そこで店舗運営の権限を本部から地域営業部に権限委譲をすることで、地域性に合わせた店舗運営にシフトし、店舗のリニューアルを進めます。これが功を奏し本依存脱却に成功します。2019年3月期では69店舗で実施し、地域性を生かした店舗リニューアルがV字回復を牽引しています。
5−3 広告
ゲオ:店舗を増やす事で認知度UPへ
ゲオは店舗数を増やすことが最大の宣伝と考えています。
「業界全体ではオーバーストアでも、セカンドストリートはまだまだ出せます。今は約600店、10万人商圏に1店舗あります。これを5万人商圏に1店にしたい」
※遠藤社長インタビュー レンタルDVDからアパレルへ ゲオ衣替え中
今後も出店を強化する事で、店舗自体が広告として機能していくと推測されます。
また、定期的に買取UPキャンペーンを実施しており、今回訪れた際にはブランドスニーカーの買取強化をしていました。商圏内に店舗を作る→買取キャンペーン広告設置→買取増=出品増のプロセスが組み込まれていると感じました。
ブックオフ:「本を売るなら〜♪」から「本だけじゃない〜!」
ブックオフは広告戦略も一新します。寺田心くんを起用し客との掛け合いで「本だけじゃないブックオフ」というメッセージを発信。心くんのオーバーすぎる演技も相まってとても印象に残るCMとなっています。
全4シリーズあり、YouTubeでのシリーズの再生回数は1000万回を超えており、顧客に「本だけじゃないブックオフ」を想起させることに成功しています。専用のHPまである気合の入りようです。企業の一貫したブランディング戦略がコミュニケーション戦略にも組み込まれています。
5−4 価格
価格は2社共通して高価格帯を強化しています。
・ブランド品事業の買収
・フリマアプリの影響力の少ないジャンル
この2点から高価格帯、ブランド品ジャンルは今後ますます競争が熾烈になっていくと予測します。
5−5 4Pまとめ
2社の4Pをまとめると以下の図のようになります。
6.2社のポジショニング
上記した4Pを踏まえて2社のポジションを図で表すと以下のようになります。
・強気の姿勢で出店を強化、専門ジャンルのブランドを成長させたゲオ
・地域ごとに商品戦略を定め、店舗をリニューアルする事で復活したブックオフ
2社異なる戦略で激動のリユース業界を牽引していることがわかりました。
7.もしCMOだったら
①潜在顧客獲得の施策:リユース×環境問題
環境省の調査によると、使わなくなった物の処分方法として、自宅・物置で眠らせている物が半数以上を占めます。この「宝の山」をどうすればリユースへと促す事が出来るのでしょうか。
この課題に対し、リユースと環境問題解決をより強く想起させるさせる施策を考えましたがこれといったアイディアが思い浮かばず。参考事例を探しに、アパレルでSDGsといえばパタゴニアだ!と思いHPに駆け込みました。さすがパタゴニア先生!面白そうなアイディアのネタが転がっていました。
それが「WORN WEAR:新品よりもずっといい」と題し、衣類の修理イベントを行い、商品を長く使ってもらう事で無駄な消費を減らす取組です。
商品自体の価値向上や顧客との接点作りとしても有効なコミュニケーション戦略はファン獲得に繋がっていると推測できます。
自社商品の寿命を伸ばす=自社の売上が減るリスクがありますが、長期的視点に立ち、LTV(顧客生涯価値)を高める取組であると感じました。
この事例を知り、リユース業界こそ修理、リメイク事業に乗り出すべきだと思います。家に寝かせてある商品は汚れていたり、破れていたりなど、値がつかないという理由が多いと思います。そのような商品がリメイクされ、新たな商品とし生まれ変わることで消費を減らし、社会に貢献したという実感が芽生えるのではないでしょうか。
不用品によるサイクルを生み出す事でリユース人口を増やすことに繋がると思います。
現在コメ兵ではブランド品のリメーク販売を行っていますが、他の商品類でも実施したら面白いのではないかと感じます。
②新品消費増へ:リセールバリューを生かした施策
モノが売れない時代と言われる中、新品の商品が落ち込むと将来的にリユース商品が減ってしまいます。
この問題の解決策として、リセールバリューの可視化が鍵となると思いました。メルカリの流行により「着なかったとしてもも高く売れるから買おう」というリセールバリューの認識が広がったことが消費のハードルを下げることに繋がっていると感じます。
リセールバリューを生かした施策として、ゲオやブックオフなど2次流通企業と1次流通企業の協業を進めたいと考えます。例えばZOZOTOWNと協業し、リアルとオンラインのデータを共有することは双方にメリットがあるように感じます。ZOZOTOWNで購入した商品は履歴提示で査定金額UPなどリセールバリューを高めることで消費活動を促し、結果としてリユース商品の増加に繋がるのではないかと考えました。
先日メルカリが2次流通データの開放し一次流通企業との協業を発表しました。今後リユース企業は「消費活動の一環としてのリユース」と捉え一次流通企業と協業することが重要になっていくと推測します。
その他施策案
・顧客の手間削減:ウーバーとの提携し買取サービス強化
・ブランド品強化:思い出話で買取査定額UP(対面売買の強み生かす)
・リユースが楽しいを想起:中古品テーマパーク併設店舗郊外に出店、ポケモンGOとコラボした買取イベント
・買取強化:地方自治体、大学との協力✅
・人件費対策:自動鑑定サービス、EC強化
・新規事業開拓:大手企業と提携し社会貢献イベント
・モノを持たない時代対策:中古品なんでもシェアリング
以上となります。
無駄に長くなってしまいましたが、
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