そうだ!大江戸温泉物語に行こう!!コスパ抜群旅館を紐解く
はじめに
皆さん温泉は好きですか?
僕は温泉が大好きです!!!!
コロナウイルスの影響で旅館のキャンセルが相次いでいるとのニュースが出始めた頃、
これは旅館に行って助けなくては!!(ただ自分が安い時期に行きたかっただけですすみません)と思い即座に温泉旅館を調べていました。
そこで静岡県の温泉地伊東で一泊二食付きで7000円の宿を見つけてしまい、気付いた時には予約していました。
その旅館こそが今回の題材である大江戸温泉物語グループです。実際に利用し感じたことは、
「コスパ良すぎでしょ!!」ということです。正直支払った価格で得られるサービスの域を超えていました。利用した際は昨今の事情も相まって特段安くなっていたのですが、調べてみると普段からもとてもお値打ちな価格で泊まることができるようです。
なぜここまでの低価格で高品質なサービスを提供できるのか。マーケティングトレースしてみました。
1.概要
大江戸温泉物語グループ(以下大江戸温泉と記載)は日本初の温泉テーマパークである「お台場 大江戸温泉物語」の運営会社としてスタートします。2007年から旅館運営をスタートさせ、現在は同事業が収入源の柱となっており拡大に貢献しています。
訪日客需要も相まって宿泊者数も年々増加傾向にあり、安定した経営状況であることが甲斐見えます。
他の旅館もインバウンド需要で増加しているんじゃないか。と思ったのですが、ここ数年旅館の倒産が相次いでいます。その理由を探るために宿泊業界を取り巻く市場を分析してみます。
2.市場分析(PEST分析)
Point
①ホテルを中心に宿泊施設増加も旅館は減少が続く
宿泊施設は年々増加傾向にあり、その中でもホテルは特段増えています。数年前から続く訪日客需要、近年では東京オリンピックの影響で都心を中心にホテルの軒数、客室数共に増加し続けています。
一方旅館は減少し続けています。多種多様な宿泊形態が増えた事による利用率の低下が要因の一つに挙げられます。また、旅館は古くから家族経営の所が多く、後継の問題から閉めてしまうケースが増加しています。
②シニア、ファミリー層を中心に温泉需要増
旅館といえば温泉ですよね。その温泉旅行は安定した需要があり、今後行きたい旅行タイプで最も高い比率となっています。旅館数自体は減っていますが、旅館需要は安定して推移していると推測されます。
年代別に見ると30〜40代のファミリー層、60〜70代のシニア層が他の年代よりも高い需要があります。旅館側としては、大人数が見込めるファミリー層・余暇の時間が多いシニア層をいかに獲得する事が肝となっています。
③訪日客の消費構造 モノ→コトへ
宿泊業界にとって欠かせない訪日客の消費構造がここ数年で変化が見られます。「爆買」などの言葉が生まれたように訪日客の消費額は買物代が多く占めていました。しかし近年では買物代の割合減少し、宿泊費、飲食費、娯楽サービス費の割合が増加しています。特に日本文化体験・見学ツアーなど日本特有の体験需要が拡大しています。
3.ターゲット : 平日シニア層 土日ファミリー層
宿泊施設にとって平日は利用者が少なく、経営者の頭を悩ませています。大江戸温泉はこの問題をシニア層のリピーターを増やすことで解決しています。
平日は利用頻度の高いシニア層、土日は一部屋に大人数が泊まるファミリー層を獲得しています。また、日本らしさを体験できることで訪日客利用者が増加しています。その結果ビジネス、シティホテルよりも超える、業界トップ水準の稼働率を年間通じて維持しています。
適切な市場分析から、ニーズが高まっているシニア、ファミリー、訪日客の獲得が稼働率の高さに現れています。
4.4P分析
流通:旅館の再生企業へ
大江戸温泉は2007年から年々増加している経営悪化や事業継承に悩む旅館を取得・再生する事業に乗り出しました。
「人口100万人以上の大都市から、車で2~3時間以内で行ける場所」(森田社長インタビューより)
と条件を絞り、旅館取得を続けています。
例えば、静岡県の伊豆半島でも熱海や伊東など北部や中部は対象エリアになりますが、南部の下田では対象外になるといった感じです。
市場を分析し、アクセスの良い好立地を選定。一から作るよりもコストをかけずに始められるメリットを生かして成長を続け、2017年9月時点では6店舗だったものが、2年立たずで6倍の38店舗(2019年5月末時点)へと増やすことに成功しています。
価格:「大江戸モデル」で無駄を省き、低価格実現
取得した旅館をどのように再建しているのでしょうか。
そこで鍵となるのが、「大江戸モデル」と称される独自のメソットです。
再建事業で取得した施設の多くは老舗の高級旅館でした。
上記旅館の無駄を省くことで、従来の旅館の高品質なサービスを残しつつ、低価格で提供できる「コスパ抜群の旅館」へと変貌を遂げています。
具体的には・・・
①使用ニーズの低下から「デッドスペース」となった宴会場をバイキングスペースへと変換することで人員コスト、廃棄コスト削減。
②食材や備品を本部での集中購買方式に変更することで原価コスト削減。
③マーケティング本部が客室値段のマネジメントや、コールセンターの管理など集客業務全ての機能を掛け持つように変更。
効率的なスタッフ配置を徹底することで人員コスト削減。
上記3つの施策を中心にコスト削減を徹底することで低価格で高品質なサービスを提供することが可能となります。
商品:顧客目線のサービス
温泉など従来の旅館の良さを残しつつ、大江戸温泉ならではのサービスを組み合わせることで顧客満足度の高いサービスを提供しています。
①有名料理長監修の元、満足度の高いバイキングを提供
大江戸温泉グループの特徴の1つとして、食事をバイキングスタイルで提供することで通常のコース料理よりも顧客満足度を高めています。
従来のコース料理からバイキング形式にする理由として
・コース料理だと顧客の好き嫌いの違いで食べ残しが出やすい、好きなメニューを十分に食べられないなど満足してもらうことの難易度が高い。
▶︎バイキング形式なら好きなものを好きなだけ食べられる。
・団体の宴会ニーズの減少や、年に複数回、旅館やホテルでの宿泊を楽しむシニア層の増加により、コース料理だと飽きられてしまうケースが増加。
▶︎バイキング形式にすることで地域や時期によって異なる料理を提供することが容易に。
このようなメリットが挙げられます。
また、最高料理顧問に最も有名なホテルブッフェのひとつとして挙げられる品川プリンスホテル「ハプナ」で料理長を務めた高階孝晴氏を起用しています。大江戸温泉が食に力を入れていることがわかります。
個人的にバイキングって食べる前に「ああ、いつものやつね」と想像できてしまうことが多く、あまり良いイメージがないんですよね。
ですが、大江戸温泉のバイキングでイメージが覆されました。笑
入ってすぐのカウンターでシェフが天ぷらやお肉をその場で調理し提供してくれます。もうこの時点でテンション上がっていたのですが、びっくりしたのが、「バラエティの豊富さ」と「料理のクオリティの高さ」が良い意味で想像を超えていました。
利用した際は鯛とブリのフェアをしていて、刺身はもちろん、蒸籠蒸しや煮物、しゃぶしゃぶなど有名店さながらの料理が所狭しと並んでいました。まさに「天国」とはこのことなんだなと思いました・・・。
後から気付いたのですが、食べるのに精一杯で写真を全く撮っていなかったので、気になる方はリンクから飛んで見ていただけたらと思います。
②演劇など館内エンタメを充実させ、シニア層の固定ファン獲得
大江戸温泉には様々な娯楽が用意されています。その中でも人気なのが、演劇や落語など館内で行われるショーです。大江戸温泉専属の演者を抱えている施設があり、その施設を起点に演者が全国を回り公演を行っています。
この館内エンタメ目当てで訪れる顧客が増加しています。特にシニア層のリピーター獲得に繋がり、上記した平日稼働率の高さに貢献しています。
③主要駅から宿までの往復直行バスにより移動のハードルを下げる
旅館に行きたいけど、交通便があまり良くないから移動が億劫なんだよね、と考える方って結構いると思います。特に電車移動が大変なシニア層や訪日客などにとって移動は旅館に訪れる際のハードルの一つだと思います。
大江戸温泉は主要駅から宿までの往復直行バスを運行させ、上記した移動ハードルを下げることで他の旅館との優位性を図っています。
中には無料運行している路線もあり、現在はキャンペーン中で無料運行路線が多数を占めています。実質交通費込で宿に泊まれるなんてお得すぎますよね。
自分は新宿駅から伊東までの直通バスを利用したのですが、このバスが無料だったことが旅館の決めての一つでした。
私以外にもバスが決め手で予約する方も多くいるのではないかと思います。
提供サービスを移動手段まで含めて設計することで、施設以外でも他の旅館との差別化、優位性を高めることに繋がっています。
広告:データを用いた緻密かつ効率的なマーケティング
大江戸温泉は「いいふろ会員」という会員サービスがあります。宿泊客には次回の利用時の割引券を渡しつつ、会員情報をもとに、利用施設の履歴や購買行動を分析し集客に繋げています。最近足が遠のいている顧客にはタイミングを見計らってダイレクトメールを送るなど緻密なマーケティングで、リピーター獲得に繋げています。
また、自社チャネル経由の集客(ダイレクトマーケティング)を徹底しています。予約は旅行代理店を極力通さず、自社ホームページなどで直接受け付けることで手数料を抑え、手ごろな価格を実現しています。
リピーターの獲得や低価格の実現のために徹底したマーケティングが行われています。
5.まとめ:大江戸温泉のビジネスモデル
取得した旅館を独自のメソットで再生させ、ニーズの高まる訪日客やシニア、ファミリー層のリピーターを獲得し、平日、土日ともに高い稼働率を維持することが可能となっています。このようなビジネスモデルが大江戸温泉の規模拡大に繋がっています。
自分が利用した際に感じたコスパの良さは徹底的な“無駄”を省く大江戸温泉の企業努力の賜物であるとわかりました。
6.もし私がCMOだったら
宿泊券をプレゼント化する
宿泊業界の近々の課題としてコロナショックの乗り切るためにキャッシュを集めることが挙げられます。
しばらくは宿泊者数が期待できないため、何か施策が必要になります。そこで、夏以降に使える宿泊券をネット上で販売します。
また、メッセージを付加できるようにして、プレゼントとして活用しやすい形式にします。
大江戸温泉はシニア層などファンが多いので、その方々に思いを伝えることで、“大江戸温泉を助けたい”と共感した方が購入するはずです。
また、自分のためによりも他人にプレゼントすることで、より社会に貢献した気分になれるので、購入ハードルが下がると思います。
通常のシステム上でキャンセル不可で予約を受け付るよりも、宿泊券という形で販売することで、顧客に悪いイメージを持たれないまま、キャッシュを手に入れることができるのではないかと思いました。
以上となります。
大江戸温泉は顧客目線のサービスが徹底されていて、本当に素晴らしい旅館でした。
行ったことがない方は是非コロナの影響が落ち着いた頃にでも足を運んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
自粛ムードの中、マーケティングトレースで企業分析をすることは、家で出来る絶好の学習コンテンツだと思います。
マーケティング力を高めるためにも今後も継続していきたいと思います。
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