瀬島龍三。昭和の権力の傍らには常にその名前が見え隠れしていた。
では、何がそんな偉かったのか、保阪正康等日本の知性たちが挑んでも、そこにあったのは空洞だった。
集団や組織とは何たるかを誰よりも理解し、自身の巨大な幻想を作り上げた。
人間社会、という大仰な言葉を口にするとき、それを象徴する具体的な人物像として僕には彼の名前がまず浮かぶ。
世間は彼の背後にあるものを勝手に想像し恐れ、時の権力者たちは彼の名前を利用した。
人は知らないから恐れる(或いは蔑視する)のである。見えないものを想像力で補うとき、補填する部分が大きいほど、相手の実像から極端な方向へ乖離してゆく。
人間は所詮人間である。24時間365日を100年程度積み重ねたって神になれるはずはないのである。自分と向き合い、地に足つけて世間を覗けば、意外とフラットな世界が広がっているのだと僕は信じている。



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