がんなんてたいしたことないよ!#21ココロとコトバ
大切にするのは、
○匿名性
○だれも傷つかないこと
○考えを押し付けないこと
○自分たちのなかにある、『患者さん』や『患者さんを支える人』のイメージに囚われないこと
……………
今回お話をしてくださったのは、悪性リンパ腫を経験された「わたし」さん。
当時、28歳だった「わたし」の『ココロとコトバ』をご紹介します。
Q.あなたが言われて救われた(嬉しかった)、または自分にかけてあげたい言葉はありますか?(その1)
誰が言った?
友人、知人
実際の言葉
言葉ではないですが…、
わたしが「がん」だと知ったあとも、変わらずに接してくれたことが嬉しかったです。
病気になる以前から交流のあった友人。
いつも通り、電話で話してくれたり、新年会に誘ってくれたりしました。
また、わたしは漫画を描いているのですが、創作のとき、下描きにアドバイスをくれたり。
病気になっても以前と変わらない関係で接し続けてくれました。
病気になる前から変わらないフラットな対応で接してくれる人と過ごすのは、「現在、病気のわたし」を忘れていられる素敵な時間でした。
特に気持ちが沈んでいたのは、診断直後です。
入院など、治療が始まるとコミュニケーションをとれる相手は、医療者や家族たちが主となります。
話の内容も、「病気について」がメインとなりました。
まさに、頭のなかが病気一色。
だからこそ、友人たちの存在が力になりました。
話すことで気持ちが楽になったんです。
病があってもなくても「わたし」は「わたし」。
そう思わせてくれる友人や知人との時間は、心の平穏をもたらしてくれます。
とても重要な時間だったと思いますね。
Q.あなたが言われて救われた(嬉しかった)、または自分にかけてあげたい言葉はありますか?(その2)
誰が言った?
オンライン患者会のメンバー
実際の言葉
「統計なんて古いデータから計算されたものだし、未来のことはわからない」
自分の罹ったがんの5年後生存率が50%であることがわかって、落ち込みました。
その気持ちを、掲示板に書き込んだんです。
すると、たくさんのかたがメッセージをくださいました。
そのなかにこのコトバがありました。
5年後生存率50%と言われると、どうしても自分は「死んでしまう方の5割」なのではないか?と、想像してしまいます。
不安がよぎるなか、「未来のことはわからない」というコトバが強く刺さりました。
「その通りだな」と思えたんです。
メンバーの多くの方も「5年後生存率○○%」と言われて、落ち込んだりしている。
でも、折り合いをつけている。
この事実を知れたことも、励みになりましたね。
掲示板で教えてもらった「サバイバー生存率」という、生存年数に従って生存率も伸びるグラフを見て元気になりました。
▽サバイバー生存率のグラフ 参考
https://oici.jp/ocr/common/images/cancer_survivor/leaflet001_1p.pdf
Q.あなたが言われて救われた(嬉しかった)、または自分にかけてあげたい言葉はありますか?(その3)
誰が言った?
弟
実際の言葉
「言いたくないなら言わなくていい。僕も言わない。」
がんの診断を伝えたときのエピソードです。
弟は、入院時の緊急連絡先になっていました。
当時、わたしは両親と折り合いが悪かったです。
なので、「がんになったことを知られたくない」と思っていました。
「両親には言ったほうがいいよ」と諭されるかも、と身構えていました。
だから、わたしの気持ちを汲んでくれたコトバが嬉しかったです。
実際に弟の口から、わたしが告知を受けたことが両親に伝わることはありませんでした。
がんになったことを伝えることに対して、ココロの準備が必要だったので、良い意味で放っておいてくれた弟には感謝しています。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その1)
誰が言った?
知人
実際の言葉
「神様は乗り越えられない試練は与えないよ!」
がんと診断されたことを伝えた際に言われました。
なぜ望んでもいない、わたしの力ではどうにもできない「病」を「試練」と言われなくてはならないのでしょうか…。
一瞬とても混乱しました。
がんの性質上、死の可能性は否定できませんよね。
もしわたしが死んだら、「試練を乗り越えられなかった」ということになるのでしょうか?
人間は最終的にみんな死ぬ。
死を受け入れることが人生の課題であることに間違いはありません。
試練…。たしかに、それは事実だと思います。
でも、死んだこともない人に、軽々しく言われたくなかった。
知人はわたしを励ましたかっただけ。
彼女は自分の言った「試練」のなかに、わたしが「死の受容」を見出すなんて思わなかったのでしょう。
彼女が悪いわけではないと思います。
でも、言葉は受け取る人それぞれ。根拠のない楽観はときに人を深く傷つけるのだと、強く、強く感じさせられました。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その2)
誰が言った?
知人
実際の言葉
「それってキャンサーギフトだね!」
がんになってからは、自分を大事にしようと思うようになった。
そう話したとき、かけられたコトバです。
ギフトだというのなら、ぜひ持って行ってくれないか。
ただただ、そう思いました。
わたしがわたしを大事にしようと思ったのは、「自分の死」をリアルなものとして感じたから。
知人が「ギフト」と定義した病によって、
自分に残された命は僅かなんじゃないかという焦り・不安、痛くて苦しい身体、多額の治療費……。
たくさんのことが降りかかってきます。
ギフトというには釣り合わない苦痛です。
「キャンサーギフト」は、病から得たものと失ったもの、治療のなかでの喜びと苦しみの両方を知っている人に使ってほしいコトバ。
そう思いました。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その3)
誰が言った?
父
実際の言葉
「○○さん(有名人)もがんだけど治ったから大丈夫だよ!がんなんてたいしたことないよ!」
1回目の化学療法が終わったときに、がんと診断されたことを伝えました。
その際に言われたコトバです。
「父はわたしの苦しさをわかってくれない」
と思いました。
父が例に出した有名人と、わたしのがんは別種。
そのことも「わかってくれていない」の思いに拍車をかけます。
このコトバをかけられたときは、1回目の化学療法後で、身体が一番しんどい時期。
わたしが苦しんでいるところを見てもいないのに「たいしたことない」と言われ、怒りを感じました。
父自身が安心したい、たいしたことない病で娘は治ると思いたかったのでしょう。
でもまずは、「わたしががんになったこと」を受け入れてほしかったです。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その4)
誰が言った?
弟
実際の言葉
「生活習慣が悪かったんだね。」
がんと診断されたことを伝えた際に言われました。
やはり「がん=生活習慣の乱れ」という認識は広く定着しているのか、と思いました。
わたし自身、告知の際に「生活には気を付けていたのに」と悔しい思いをした。
つまり、病気にならなければ、弟と同じような認識のままだったということでしょうね。
たしかに、生活習慣が発症に影響するがんもあるかもしれません。
でも、生活習慣とは無関係に発症するがんがあることを知ってほしいです。
「がん=生活習慣の乱れ」と思うことは、がんになった人を責めることにつながります。
自分や身近な人ががんになったとき、告知を受けて落ち込んだ気持ちを、余計に傷つける考えかただと思います。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その5)
誰が言った?
知人
実際の言葉
「がんって治るの?」
がんと診断されたことを伝えた際に言われました。
がんが治るかって?私が知りたい!
なぜそんなことを聞くのか逆に質問しました。
興味本位、だったそうです。
「治らないかもしれない」と答えるのは、「わたしはこの病気で死ぬかもしれない」と答えるのと同じ意味に思えて、イヤな気持ちになりました。
このコトバをかけてきた知人は、あまり親しくない人です。
会話の流れで、がんになったことをうっかり伝えてしまった結果がコレでした。
がんになったコトを伝える人は、慎重に決めたほうが良いと思ったできごとでもあります。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その6)
誰が言った?
知人
実際の言葉
「ほら、彼女(私を指して)若いから進行速いのよね。」
習い事の席で言われたコトバです。
わたしが病気だと知っている皆さんとおしゃべりをしている場面だったと記憶しています。
「若い=進行が速い」と思っている人たちが一定数いるのだな、と思いました。
がん種や型によって進行の目安はありますが、年齢が関係ないことは知って欲しいと思います。
もしも事実であったとしても、「進行が速い」なんて聞きたくない。
面と向かって言うことでもないと思います。
相手のコトバがどれほどイヤかは、言われた側の受け取りかたで変化する。
イヤな発言には、きちんと「イヤだ」と表明することが大事だと思いました。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その7)
誰が言った?
知人
実際の言葉
「さては手抜きしてきたな!」
抗がん剤の影響で脱毛が起こり、ウィッグを使用していた時期の話です。
……
以前に一度、ウィッグを着用した姿で会った知り合いがいます。
その人にふたたびお会いする機会があり、そのときは、ケア帽子(綿でできたすっぽり被るタイプの帽子)を使っていました。
ウィッグは見た目が自然になりますが、構造上、頭を締め付けるものが多いです。長くつけていると、頭が痛くなることがあります。
ケア帽子で会った日は、あまり体調が優れませんでした。
ウィッグを付けるのは、しんどかったんですよね。
「手抜きではなく、体調がそこそこ悪いなか、あなたに会うために、できるだけのことをしてきたんです」と、今なら言えるかもしれません。
身づくろいは自分が楽しい気分になるためのもの。相手の目を楽しませる必要はないのだと思いました。
Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?(その8)
誰が言った?
父
実際の言葉
「その副作用、ビタミンDが効くらしいぞ。」
抗がん剤の副作用で末梢神経障害(手足のしびれ)が現れたときのコトです。
本当に効くならとっくに主治医が処方してるよ!
「安易にサプリメントを摂取することで、治療のために飲んでいる薬との兼ね合いで、思わぬ服作用を起こしてしまったらどうするのか」
そこまで思い至らない父に腹が立ちました。
父以外にも、善意で「がんに効く」といういろんなものをいろんな人が紹介してくれます。
薦めたものに対して、「植物由来の成分だから副作用なんてないよ」と説明してくれる人もいました。
しかし、わたしは何種類もの薬を服用しています。
飲み合わせが悪い成分を含んでいないとは言い切れないはず。
「主治医の処方するもの以外は摂らないポリシーです」と伝えて、全部断るようにしていました。
Q.あなたが言ってしまって後悔した言葉はありますか?
誰に言った?
病院の図書室のボランティアの方
実際の言葉
「お元気そうなのが嬉しいです。」
病院の図書室でがんに関する本を借りようとしたときの話です。
「実は私も、5年前大腸がんだったの」と話してくださったボランティアの方に言いました。
当時はわたしは、がん告知直後。
がんが寛解して元気になった人が存在しているということ、実際に目の前にいることがとてもうれしかったです。
自分も元気になれる。という希望というか…、頑張ろう。と言うような前向きなココロを与えてもらえたような気もします。
しかし、自分も寛解した今になってわかるんです。
定期検査のための通院は続く。
そして、再発の不安は消えない。
その方のがんとの折り合いのつけ方も知らずに、無邪気に「お元気そうで嬉しい!」と言ってしまったのは、もしかすると無神経だったかな。
そんなふうに後悔しています。
……
わたしさんは、ココロを支えた芸術についてもお話ししてくださいました。
……
そして、今回「わたし」さんは、当時の経験を漫画で発信されているお方です。
通常は匿名性ですが、「わたし」さんこと『にこらにこらい さん』のnoteもご紹介させていただきます。
こちらもぜひご覧ください。
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