インヘリタンス まとめ
あんまりまっとうな感想や意見は書けませんので箇条書きにて。
↑の公式サイトは3月いっぱいで消えるらしいです。
☆ネタバレだらけの感想です。
・結局、2月11日(日)前後篇通し、17日(土)前後篇通し、21日(水)前後篇通し、24日(土)後篇のみ、の3.5回観ました。
前篇が3時間、後篇が3時間半。こういう数字で語ると桁違いの作品。
ちなみに席は、11日は下手寄り真ん中よりちょい後ろ。17日はどセンターで11日より後ろ寄り。21日は下手寄りの最前!24日は初日の席の2つ後ろ。一度くらい上手側からも見たかった…。
・ニューヨークのゲイコミュニティの話。という、リアルではあまりにも接点のない設定ではあるのですが、そんなことはさておき、お話に没頭していけるので3時間が全然長くない。引き込まれて先が知りたくて気がついたら6時間半経っているというなかなか至福の時間。
・推し田中さんについて。
初めて彼を大きな舞台で観たのが2019年サンシャイン劇場での「ダークアリス」という朗読劇でした。
あのときのどきどきを思い出しつつ、あれから5年経って舞台にいる田中さんは、今や全面的な安心感をもって見ていられます。
それでも今回は、ちょっと今までの舞台とは桁が違いました。後半の長台詞は6ページだそうです。22年の主演舞台「ホームレッスン」もたいがい長台詞のモノローグでしたが、あれを数倍上回る説得力。とにかく本当にいい役者さんになったなと嬉しい気持ちでいっぱいです(←偉そう)。
・登場人物、演じるキャストの中に誰ひとり嫌いな人物がいないというのもすごい、と思います。
主人公エリック(福士誠治さん)は「自分が特別だと決して思わない」と評される人物。友人が多く、最終的にはレオ(新原泰佑さん)始め傷ついた人たちを守る、ウォルター(篠井英介さん)を引き継ぐ立場となる。でもトビー(田中俊介さん)に対してこれでもかという罵倒を浴びせる覚悟もある。
・トビーは、最初はエリックの恋人であり、冒頭留守電(この、セレブなパーティってヘンリー(山路和弘さん)の家なんですよね?後にエリックとヘンリーの結婚祝賀会を行う…)を入れてくる人物。才能がないわけではないのに、自分を大きく見せようとして自滅していく。そういう点ではエリックと対照。アダム(新原泰佑さん二役)に挑発され、その思いをレオに託す。よくない意味で。
・アダムは裕福な家族と暮らす若者。その美しさと聡明さで俳優として花咲かせる。レオは貧困の中に生きる男娼。実は冒頭から登場していて、この「インヘリタンス」という物語そのものがのちのレオが書いた作品という仕掛けです。
・冒頭のシーンで、学生に指導をする、ような立場の先生が、「ハワーズ・エンド」の作者E・M・フォースターことモーガン(篠井英介さん二役)。時空を超えた存在でありながら学生たちに寄り添うところが素晴らしい。後篇の休憩明け、下手の椅子に腰かけたモーガンとその横でくつろぐレオ。このシーンが大好きでした。前篇後半、トビーに責められるモーガンのシーンも好きだった。
・このお芝居「R15」なんですよね。
性描写もあります。でもインティマシーコーディネートの方が入っているので、どきどきはしますがはらはらはしない。これって大事なことかもしれません。ちゃんと「見せる」ための動きになっている、ように思います。
・あと何が好きだったかな。後ろに出る字幕の使い方が秀逸でした。
冒頭の、「ハワーズ・エンド」の書き出しを書き換えるところ。前篇一幕最後の、エイズで亡くなった方の名前がうわーっと流れて埋め尽くされるところ。後篇の、今までのトビーに対するみんなの台詞がいろいろな筆跡で書かれるところ。もう、トビー。(←!)
・篠井さんのお芝居を観るのは、30年以上ぶりかもしれません。昔、一人芝居を拝見しました。もちろんドラマなどではずっと。
今回はウォルターとモーガンの二役。どちらも優しさと包容力を以て登場人物だけでなく物語全てを包み込んでくれるような人で。ラストの台詞の重みに痺れました。あと「恋をするというのは、傷つくことを予約するようなもの。離別であれ死別であれ」という台詞にも。
・後篇の最終幕、唯一の女性キャスト「マーガレット」(麻美れいさん)も圧倒的な存在感でした。芝居の開演前、「また、唯一の女性に癒しとか慰めの役割を負わせるのではないか」と危惧する意見をネット上で見かけましたが、そういう立場ではなく、ただ息子の境遇を、それに対するかつての自分の対応などを悔やむ母親で。
・エリックの友人の方々。活動家だったり、お医者さんや先生やいろいろな立場ですがみな自分の意見を持っていてコミュニティを作っている、その様子はちょっと羨ましい気もします。
みなそれぞれに、結構な長台詞があります。ゲイの世界の歴史の解説や、支持政党の話や、…思い返すとやっぱり6時間半あるのでキリがない…
・わたしは、世代的にはウォルターやヘンリー寄りです。一幕最後の字幕の中には当時リアルタイムのニュースで見た名前がいくつもありました。知人や著名人が感染で死んでいく。この怖さは、つい最近みんなで体感したものと似ているのでは。
---------
思いつくままに感想を書きとめました。
いい加減に上げないと、次が控えています。
(「青春ジャック〜止められるか俺たちを2」を舞台挨拶つきで見てきました!)
楽しい時間をありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?