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1椎間および2椎間の腰椎全椎間板置換術後の臨床成績:1,187例の7年から21年の長期経過観察(Marnay, Thierry P., et al. "Clinical Outcomes After 1 and 2-Level Lumbar Total Disc Arthroplasty: 1,187 Patients with 7 to 21-Year Follow-up." JBJS (2025))

JBJS: Clinical Outcomes After 1 and 2-Level Lumbar Total Disc Arthroplasty

不安定性を伴う腰椎の変性疾患(腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症)に対しては腰椎除圧固定術がゴールデンスタンダードと認識しています。
腰椎固定術後には、長期的には隣接椎間および椎体障害。腰椎の可動域低下などの合併症が生じることが分かっています。
これらの問題を解決するために腰椎全椎間板置換術が開発されました

可動性を温存する腰椎全椎間板置換術(TDA)は、初期のデバイス設計や安全性・耐久性への懸念から普及が遅れました。しかし、1990年代に開発された初期の人工椎間板(prodisc I)を使用した研究では、術後7~11年にわたる追跡で、患者の障害や疼痛の大幅な軽減が認められ、優れた臨床成績が報告されました。
1999年に改良された第2世代のデバイスが登場し、米国食品医薬品局(FDA)の治験では、1椎間および2椎間のTDAが固定術と比較されました。その結果、TDAは患者報告による満足度が高く、隣接椎間の変性進行や再手術率が固定術に比べて大幅に低いことが示されました。また、1椎間と2椎間の手術成績に有意差はなく、さらに術前に椎間板摘出術を受けた患者でも同等の成績が得られることが確認されました。

これらの研究結果は、TDAが腰椎変性疾患に対して脊椎固定術よりも優れた治療法であり、2椎間の病変や過去の手術歴を有する症例にも有効であることを示しています。ただし、TDAの長期成績に関するデータは未だ限定的であり、その普及を妨げる一因となっています。本研究は、1椎間または2椎間のTDAを受けた1,187例の患者を対象に、術後7~21年の長期追跡データを分析し、1椎間と2椎間の成績、および術前の椎間板摘出術の有無が臨床成績に与える影響を評価したものです。



研究の概要

1999年から2013年にかけて、1,187名の慢性腰椎変性疾患患者に対してTDAが実施されました。772名が1椎間、415名が2椎間の手術を受け、そのうち373名(31.4%)は再手術例です。

追跡期間は7年から21年(平均11年8か月)。
画像所見、神経学的所見、身体所見のほか、Oswestry Disability Index(ODI)や腰痛・下肢痛のVASによる自己評価が実施されました。

全群において術後3か月でODIの著明な改善が認められ、その効果は長期的に維持されました。術前手術歴のある患者ではVASの改善がやや緩徐でしたが、術後24か月での疼痛改善度に群間で有意差は認められませんでした。

1,187名中49名(4.13%)が追加手術を要し、そのうち人工椎間板の再置換術は0.67%、隣接椎間への手術は1.85%と、従来の椎体固定術と比較して極めて低率でした。

本研究は、TDA患者を対象とした最大規模の評価コホートの1つにおいて、術後7年から21年で評価された1レベルおよび2レベルの腰椎TDAの長期にわたる堅実な臨床的成功を示しました。
患者は、障害および疼痛スコアにおいて劇的な改善を長期間にわたって維持し、また、再置換または再手術、および隣接レベル手術の割合は、他の報告での長期固定術データと比較して低かったです。
さらに、1レベルの腰椎TDAを受けた患者と2レベルのTDAを受けた患者は同等の改善を示しました。

論文の詳細と管理人のコメント

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