橈骨遠位端骨折に対する1週間のギプス固定 vs 3-5週間のギプス固定 (Marcel A. N. de Bruijn MD, J Orthop Trauma 2025)
橈骨遠位端骨折は、日常もっともよく遭遇する骨折の一つです。
転位のない橈骨遠位端骨折ではギプス固定が行われます。
ギプス固定はかなり患者さんの生活の質を落としますので、固定期間は短ければ短いほど良いですが、固定期間が短いと転位のリスクが生じてきます。
本研究は無作為割付試験として転位のない骨折にたいするギプス固定で、1週間固定 VS 3から5週固定 で 比較検討した研究となります
概要
橈骨遠位端骨折における至適ギプス固定期間については、これまで明確なエビデンスが存在していなかった。本研究では、転位のないまたは最小転位の橈骨遠位端骨折に対して、従来の3-5週間固定と1週間固定の有効性を比較検討している。
研究デザインはステップウェッジクラスターランダム化比較試験を採用しており、各参加施設が従来治療から新治療に順次移行する形式となっている。レベル1-3の救急施設において、18-85歳の非転位または最小転位橈骨遠位端骨折402例を対象とした多施設共同研究である。
結果として、1週間固定群(205例)と3-5週間固定群(197例)の患者背景には有意差を認めなかった(平均年齢:53.7歳 vs 53.3歳、女性:66% vs 67%、利き手骨折:44% vs 53%、関節外骨折:39% vs 41%)。
主要評価項目である6週時点でのPRWEスコアにおいて、臨床的有意差は認められなかった(-4.5 [CI: -12.9 to 4.02], p=0.30)。さらに、その他の機能評価指標や疼痛スコア、患者満足度においても両群間に有意差は認めなかった。
特筆すべき点として、二次転位率(対照群1.5% vs 介入群1.0%, p=0.32)および手術移行率(両群とも1.5%, p=0.92)にも有意差を認めなかった。この結果は、適切に選択された症例においては、1週間の固定期間でも十分な骨折部の安定性が得られることを示唆している。
本研究により、整復を必要としない橈骨遠位端骨折においては、1週間のギプス固定で従来の3-5週間固定と同等の治療成績が得られることが示された。ただし、これは厳密に「整復不要の軽症例」に限定された知見であり、整復を要する症例では従来通りの固定期間が必要となる。
論文の詳細と管理人のコメント
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