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80歳以上の高齢者に対する股関節骨折リスク分析ツールの評価 Ensrud KE et al. Hip Fracture Risk Assessment Tools for Adults Aged 80 Years and Older. JAMA Netw Open. 2024;7(6):e2418612.


高齢者の股関節骨折を予防するために

アメリカでの股関節骨折の現状

●米国では股関節骨折の70%が80歳以上の高齢者で発生しており、これらの患者の20-30%が1年以内に死亡
● 股関節骨折後の生存者においても、移動能力の低下や日常生活動作の障害、施設入所が必要となることが多く、さらに骨折関連の医療費全体の72%を股関節骨折が占めている

予防的介入ツールとしての骨折リスク評価ツール

低骨密度(BMD)は股関節骨折の強力な予測因子として知られているが、年齢が進むにつれて予測精度が低下することが分かっており、臨床的リスク要因も含めた総合的な評価が必要とされている。

● 骨折リスク評価ツールとしてFRAX(Fracture Risk Assessment Tool)Garvanの骨折リスク計算機が開発され、米国のガイドラインではFRAXの使用が推奨されているものの、80歳以上の高齢者における予測性能の検証は十分ではない。高齢者特有の死亡リスクの考慮や適切な予測期間の設定、さらには加齢に伴って増加するFrailなどの非骨格系リスク要因の考慮が必要

● 本研究では、80歳以上の地域在住高齢者8,890名を対象に5年間の追跡調査を実施
●FRAX、Garvanツール、および大腿骨頸部骨密度(FNBMD)の予測性能を比較●新しい正確な股関節骨折リスクの評価方法を確立することを目指した

結果のまとめ

80歳以上の高齢者8,890名を対象に、股関節骨折のリスク予測ツールの性能を比較検討した研究

●5年間の追跡で、女性の6.5%(321名)、男性の3.1%(123名)が股関節骨折を経験。死亡率は女性16.7%、男性23.1%。
【簡単な解説】 高齢者の股関節骨折は女性の方が多く発生し、男性の方が死亡率が高い。

●骨密度(FNBMD)単独での予測能力が、複合的な評価ツール(FRAXやGarvan)より優れていた。女性ではFNBMD単独が0.72、男性では0.77という予測精度であった。
【簡単な解説】 複雑な評価ツールを使うより、単純に骨密度を測定する方が股関節骨折のリスクを正確に予測できる。

● Garvanツールは高リスク群で実際より大幅に高く予測し、FRAXは中程度のリスク群で実際より低めに予測する傾向。
【簡単な解説】 現在使用されている評価ツールは、80歳以上の高齢者では正確な予測ができない。

【臨床への示唆】
より良い評価ツールが開発されるまでは、骨密度測定に加えて、患者さんの余命予測や本人の希望を考慮して治療を決めていく必要が示された。

論文の詳細と管理人のコメント

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