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高齢者の大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術における大腿骨ステムの機種による成績の違い (Ishan Shah MD, Clinical Orthopaedics and Related Research Jan.2025)

トップ画像は、人工骨頭で使われる大腿骨ステムを描画して、と結構細かくオーダーして作った画像です。
なかなか人工股関節や人工骨頭のステムを、生成AIで再現することは難しいですね。

さて、高齢者大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭では、セメントステムが推奨されいています。
しかしながら現状セメントレスステムが多く使われていることは事実です。セメントレスステムがセメントステムよりも劣るとされている理由は人工股関節周囲大腿骨骨折を起こすからだと考えられているからで、またこのことはいくつかのレジストリーデータからも明らかになっています。

本研究では、セメントレスステムに限って検討してみたらその再置換率や人工股関節周囲周囲大腿骨骨折はステムごとに違いがあるか?という検討にな
ります。


概要

高齢者の大腿骨頚部骨折に対するセメントレス人工骨頭置換術において、使用する大腿骨ステムの機種による再置換術リスクを大規模データベースを用いて比較検討した初めての研究です。

・データソース:カイザーパーマネンテの股関節骨折レジストリ(12万人以上をカバーする統合医療システム)
・対象期間:2009年から2021年
・対象:60歳以上の大腿骨頚部骨折に対してセメントレス人工骨頭置換術を受けた5,676例
・平均年齢:81歳、BMI:24 kg/m2、女性66%、白人79%
・手術実施:396名の医師、35施設
・比較対象ステム:DePuy社製4機種:Corail (n=653)、Summit (n=1699)、Summit Basic (n=1590)、Tri-Lock (n=384)。Zimmer Biomet社製3機種:M/L Taper (n=402)、Trabecular Metal (n=637)、Versys LD/FX (n=311)

再置換術リスク(Summitと比較):

  • Summit Basic:HR 1.91 [95% CI 1.34-2.72], p<0.001

  • M/L Taper:HR 1.91 [95% CI 1.15-3.15], p=0.01

  • Versys LD/FX:HR 2.12 [95% CI 1.25-3.61], p=0.005

  • その他のステム(Corail、Tri-Lock、Trabecular Metal):有意差なし

周術期骨折による再置換術リスク:

  • M/L Taper:HR 2.43 [95% CI 1.29-4.58], p=0.006

  • Summit Basic:術後3ヶ月以降でHR 2.84 [95% CI 1.36-5.94], p=0.006

フォローアップ中央値は3年(IQR:1.0-5.5年)。7%が追跡不能、56%が死亡。

結論:

  1. セメントレス人工骨頭置換術において、ステムの機種により再置換術リスクに有意な差がある。

  2. Zimmer M/L Taper、DePuy Summit Basic、Zimmer Versys LD/FXは高齢者の大腿骨頚部骨折治療での使用を推奨しない。

  3. 大腿骨頚部骨折の治療においては依然としてセメント使用が推奨されるが、セメントレスを選択せざるを得ない場合は、これらの知見を考慮したステム選択が重要である。

  4. 今後の大規模レジストリ研究により、より成績の良いセメントレスステム間の差異をさらに明らかにする必要がある。

論文の詳細と管理人のコメント

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