2022年1月に読んだ本
去年1年間毎月付けた読書記録を今年も付けていく。今年からは毎月1日にまとめようと思っているけれど、まだ2月以降どうするかは分からない。
1月は第166回芥川賞・直木賞が発表された。直木賞は二作品同時受賞で、しかも両方歴史小説というなかなか面白い結果になった。
歴史小説は正直あまり興味がないんだけれど、齋藤孝先生が著書の中で次のように述べている。
今回直木賞を受賞した二作は、今村 翔吾著『塞王の楯』と米澤 穂信著『黒牢城』である。
『塞王の楯』は、城の石垣作りに命をかける職人集団「穴太衆」の姿を描いた歴史小説で、幼い頃、戦乱で家族を失い、「穴太衆」に育てられた石垣職人・匡介が主人公。
一方の『黒牢城』は、織田信長に背いて「有岡城」に立てこもった荒木村重が主人公ということで、両者ともに目の付け所がユニークで興味をそそられる。
尚、自分が直木賞を獲るかもと注目していたのはデビュー作にしてアガサクリスティー賞を受賞した、逢坂 冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』だった。
こちらも独ソ戦で活躍した女狙撃手が主人公で、歴史小説と遠からず近からずな雰囲気を感じる。面白かった。
--
2022年1月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1133ページ
ナイス数:145ナイス
--
■聖なるズー (集英社文庫)
DVにより心的外傷を負った筆者は「愛とセックス」に対する疑問を胸に京都大学院でセクシュアリティ研究の世界に足を踏み入れ、動物性愛者(ズーファイル)の存在を知る。
ドイツにある世界唯一の動物性愛者による団体ZETAのメンバーとコンタクトを取り、彼らの家で一緒に生活をしながらズーの思考、愛、そしてセックス観への理解を深めていく。
ノンフィクションで一見ルポのようでありながらも、登場人物の所作や振る舞いの表現、ドイツという国の歴史や文化に対する省察は小説家のそれであり飽くことなく一気に読みすすめられた。
随所に出てくる「クヌーデル」が妙に頭に残る。
読了日:01月09日 著者:濱野 ちひろ
--
■同志少女よ、敵を撃て
第166回直木賞候補作。第2次世界大戦下の独ソ戦が作品の舞台。
戦場で戦う女性狙撃手が、一人の少女からいかにして勇敢な兵士になったか、そうならざるを得なかったか。その葛藤と悲哀が精緻に描かれており、暖かくも悲しい人間ドラマと息詰まる戦闘シーンの描写は圧巻の一言。
主人公の少女セラフィマはドイツにほど近いソビエトの村で猟師の娘として狩猟銃を覚える。程なくして村を悲劇が襲い、村人は全滅する。遺されたセラフィマは村を助けに来た女性少尉イリーナに、村を焼かれ母の死体を足蹴にされ、唯一の思い出である家族写真も捨てられ、心に誓う。
ドイツ兵を殺し、あのイェーガーなる男を殺し、そして、自らと母の亡骸を侮辱したイリーナを殺すのだ。
悲しみが怒りへ、そして殺意へと変わってゆく。
読了日:01月17日 著者:逢坂 冬馬
--
■ノベライズ 花束みたいな恋をした
2021年、数々の来場者の心を抉った映画『花束みたいな恋をした』。そのノベライズがよりエグいという話を以前から耳にして気になっていた。やはり坂元裕二さんはスゴい。映画を観たからそう感じるのも当然なのかもしれないけど映画を観てるかのようにシーンが再現されていた。各々の描写が見事に文章に落とし込まれていて、映画を観てるときに感じたスピード感と寸分違わず繰り広げられる愛憎劇に心が揺り動かされた。絹ちゃんの麦くんに対する想いの描写が、映画よりも分かりやすく端的に描かれていてめちゃめちゃ良かった。
読了日:01月22日 著者:坂元 裕二
--
■別冊NHK100分de名著 読書の学校 苫野一徳 特別授業『社会契約論』 (別冊NHK100分de名著読書の学校)
ルソーは『エミール』の上巻を読んだことがあるのだけれど、優生思想が強すぎて、中・下巻を読む気にならなかった。
教育学部にいて「先生になるなら『エミール』はぜひ読んで」と教授から言われたことがあるけど、ほんまにお前読んだんか?という気分になる。こんな考えの教師だらけになったら生きづらい国になりそう。
閑話休題、『社会契約論』について
「哲学(者)」と「思想(家)」は別だけど、哲学(多くの人が納得する考え)を提示するには思想(個人としての強い信念)が必要という話は納得感が強かった。いろんな分野で同じことが言えると思う。
”人間は命を守るためなら何だってするというより、自由を手に入れるためならむしろ命を賭してでも戦う。”
というヘーゲルの言葉は完全に『進撃の巨人』の世界観で胸に来るものがあった。
”あらゆる問題は教育で解決できるというのはナイーヴすぎる考え”というのも納得度が高く、よく分かってるやんという気になった。
読了日:01月25日 著者:苫野 一徳