WEEK 4: アメリカの「共同親権」制度 - ダディ、もう日本人でいちゃ、ダメなの? / NYCで「実子連れ去り」の被害にあった子供たち
CHAPTER 10: FIRST HEARING
水曜日
午後3時。
わたしが申請した理由開示命令の口頭審理が行われました。
しかし母親は現れませんでした。
念の為10分ほど待ち、審理がスタート。
裁判官は、このような家裁のケースではジャッジではなくレフェリー(Referee)と呼ばれます。
日本語に訳すと「審理人」になると思います。
我々のケースの担当は、女性の審理人でした。
わたしは全てを説明しました。弁護士と相談しながら書いたスクリプトをもとに。
子供たちの安否すら確認できない、全ては子供たちの安全のためであり、子供たちにも自分のベットで自分のおもちゃに囲まれて寝る権利がある。
そして母親の問題点についても強調しました。
これは子供たちの安全マターに関わることである、と。
審理人は、わたしの言い分全てを聞いた後に、いくつかわたしに質問をしました。
母親はアメリカの市民権を持っていないんですね、保安官が探していることを母親は認識しているのですね。
そして審理人は、次のような結論を下しました。
現時点では、すぐに警察を動かして探すことはできない。
けど緊急だとは思うから、ACSの調査員を派遣する。来週の月曜日に母親の出した保護命令の口頭審理があるから、それにも現れなかったら話は別だけど、兎に角、ここに当事者全員が揃わないといけない。
あなたの言い分はわかった。けどもう次の審理は来週だから、それまで待つしかないということで、この日は終わりました。
金曜日
この頃、日本では近々共同親権制度が導入されそうだ、ということで、議論がヒートアップしているようでした。
日本の親権制度に関しては、夏休みに、母親の実家から「締め出し」を食らって以来、色々と勉強してきました。
正直なところ、Xなどで流れてくる日本の別居親たちの悲痛な叫びを読み、酷い、あり得ない、こんな制度狂っている、と怒りを感じつつも、この人たちよりは、まだこっちはマシかもしれない。そう自分を慰めている部分もあります。
相手が拒否し続けるから「同意なし」という理由で子供に会えない父親。1年に1度、娘の誕生日に元夫も一緒にお祝いをという提案すら面会交流調停で却下されている母親。仕事から帰ってきたらもぬけの殻、子供の居場所すらわからない母親。海外の人と未婚で出産、日本人実子扶養定住ビザ取得のために親権を父親に設定し、その後生後3ヶ月の娘は連れ去られままの母親。
そんな方々の投稿を読んでいると、どんだけ精神力が強いんだと、尊敬の念を感じます。
わたしも見習わないといけない。
一番辛いのは、子供たちのはずだから。
CHAPTER 11: WEEKENDS
土曜日
子供たちに会えなくなり、そろそろ一ヶ月が経ちます。
一番辛いのは週末です。
学校は休み。
子供たちは何をしているのだろう、と思ってしまうからです。
わたしは自営業なので、週末も仕事をすることで気を紛らすこともできますけど、ずーっと家にいると、どうしても外の空気が吸いたくなります。
でも周りは学校が多いせいか、ご近所さんは、家庭持ちがかなりの割合を占めるので、週末となると、子供と一緒に歩いているお父さんがあちらこちらにいます。
なら15分ほど歩いて、セントラル・パークまで足を延ばすという手もありますけど、それもなんとなく気が向きません。
毎年春から夏にかけて、長男と二人で、毎日のようにセントラル・パークに遊びに行ったことを思い出してしまうからです。
21あるプレイグラウンド、ぜんぶ回ろう。
長男とわたしで、なんとかその「任務」は18まで達成しました。
その中でも一番長い滑り台のあるビリー・ジョンソン・プレイグラウンドで、偶然、今とてもお世話になっているスクールママ友とその息子の〇〇くんに会ったんです。
長男と〇〇くんが仲良く遊ぶので、わたしの方から、スクールママ友に「いくつですか?」と声をかけました。
「4歳よ」と教えてくれたので、同じ歳だね。
そこから話が弾みました。
ご近所さんで、9月から同じ幼稚園に通うということもすぐに判明し、それ以来の付き合いなんです。
そういった記憶が、例えば買い物をしているときや地下鉄に乗っているときに、ふっと頭の中に蘇り、なんか無性に胸が痛くなるんです。
なぜ長男と次男は、父親に会えないのか。
そしてなぜ、自分は子供たちに会えないのか。
ハッと気づくと、無機質なスーパーの壁を眺めています。
夕方、弁護士と月曜日の審理について話しました。
「昨日の審理に現れなかったということは、召喚を無視したとしても大事にはならない、どうせ月曜日に審理があるんだし、とアドバイスした人がいるということだと思います。
それよりも大事なことは、月曜日のことです。
家裁での審理ですから、そんなに長く時間を割いてくれることはないと思います。多分15分。どんなに長くても20分」
なんとなく、短いんだろうなとは思っていました。
金曜日も早めに家裁に行き、法廷の外の待合室で待ちながら、色々と観察したんです。
一番びっくりしたのは、綺麗でほぼ誰もいないことでした。
イメージとしては、たくさんの人たちが待っていて、そこらへんでちょっとした口論が起きたりしている。そんな感じでした。
かなり大きな待合室でしたけど、待っている人はせいぜい2、3人。
他には、エレベーターを出たところにあるデスクに警察官が1人。
法廷に呼ばれ、終わって出ていくるまでの時間も、みんなそれぞれ15分ぐらいでした。
一度だけ、双方の付き添いたちの間で喧嘩が勃発しましたけど、すぐに警察官が8人ぐらい出てきて事態を収拾し、それぞれ違うエレベーターに誘導しました。
それ以外は、まさに静寂という感じの空間でした。
子供たちと会えることが最優先です。
そうわたしは伝えました。
「もちろんです。全く会えないのはおかしいですし、シェルターに子供がいる方が良い訳ないですから。けどあちらは自分はDV被害者だからあなたのことが『怖い』と言い続けると思います。裁判所は、女性が『怖い』と言ったら無視はできないんです。それでもあなたのDVに関しては、証拠が一つもないし、子供達に危害を与えたというわけでもないですから」
ということは、子供に会えるようになりますかね?
「子供には会えるようになると思います。けど裁判や審理はクラップシュート(サイコロ博打)みたいなところがありますから、何が起きるかわからないものなんです」
昨晩、ブルックリンのバーで出会った人が、つい最近まで離婚と子供の親権につてい揉めていたらしく「離婚訴訟はいつも母親に有利だ」と言ってました。
「ブルックリンの裁判所は母親にやや有利、ホワイトプレイーンズではやや父親に有利。そんな話はよく聞きます」
へぇ、そんなもんなんだ。
ならマンハッタンはどうなんですか?
「マンハッタンの裁判長たちは、弁護士に恥ずかしい思いをさせることに快感を覚える人が多いみたいです」
半分冗談なのはわかりますけど、なんとなく納得しました。
来週はやっと、待ちに待った、当事者全員が揃う口頭審理です。
果たして、子供に会えるようになるか?
アメリカは共同親権制度だから、とにかく今は我慢。必ずちゃんとフェアな日数合えるようになるはずだ。そう周りの友人たちは、みんな言ってくれてますけど、審理はクラップシュートみたいなところもあるのなら、何が起きるかわからない。
兎に角、早く子供に会いたい。
審理まで、あと二日です。
To be continued…..(続く)