【Re-Mission(リミッション)】ゲームでがん治療のモチベーションを高める画期的なアプローチ
要約
Re-Missionは、アメリカの非営利団体HopeLabによって開発され、若いがん患者や医療専門家からの直接のフィードバックを取り入れて設計された、がん治療のアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を助けるためのビデオゲーム。
81カ国で200,000以上のコピーが配布されており、日本ではRe-Mission2はiOSやAndroidから利用可能。
(※この記事を読むのにかかる時間:約3分)
がんは日本に限らず、世界中で多くの人々に影響を与えており、治療のアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)向上はその後の患者の生存率と生活の質に直接関係していると言われている。
今回はそんながん患者のアドヒアランスを向上させるためのゲーム、Re-Missionについて紹介する。
Re-Mission:ゲーム概要
Re-Mission(リミッション)は2006年という、まだスマートフォンが発売されていないような時代にアメリカの非営利団体「HopeLab」によって開発されたゲームと医療を組み合わせた、先進的取り組みとも言えるのが特徴だ。
ゲームのイメージは、15年前にYouTubeに投稿されたこちらの動画(2分)をみると理解が深まる。
ゲームとしてはサードパーソンシューターゲーム(TPS)で、プレイヤーがRX5-E("Roxxi")というナノボットを制御し、人体内で特定のがんタイプや関連する感染症(例えば非ホジキンリンパ腫や白血病など)を細胞レベルで戦う。その後、プレイヤーは患者の健康を監視し、症状をゲーム内のDr. Westに報告する必要がある。
このゲームの対象者は若いがん患者であり、ゲームのプレイによって、ポジティブな動機付けに関与する脳回路を強く活性化させるのと同時に、治療への理解とそのモチベーションのアップによって、治療のアドヒアランスを向上させることを目的としている。
普及状況
2006年にリリースされたRe-Missionは、2012年にはRe-Mission 2 とアップグレードされたものが配布された。これらのシリーズは、いずれも米医療保険会社CIGNA HealthCareと提携しており、無料で子供達に配布されており、Re-Missionは81カ国で200,000以上のコピーが配布された。
現在日本では、Re-Mission2がiOSやAndroidから利用可能である。
Re-Missionの効果
実際に効果があるのか、といった視点から、Re-Missionはエビデンスレベルが一番高いとされるRCT(ランダム化比較試験:randomized controlled trial)での研究が行われている。(Kato et al. 2008)
対象者
2004年から2005年にかけて、米国、カナダ、オーストラリアの34の医療施設で実施された、13〜29歳の男女375人。
条件
悪性腫瘍の初回診断または再発診断を受けており、現在治療中であり、少なくとも今後4ヵ月間は治療を継続すると予想される患者を割り付けを行い、実験を行った。
方法
ビデオゲーム(Re-Mission)による介入を行い、アウトカム評価には、アドヒアランス、自己効力感、知識、コントロール、ストレス、QOLが含まれた。
結果
介入群では対照群と比較して、アドヒアランス、自己効力感※(Self-efficacy)と知識が増加した。その一方で他の値には影響が少なかった。
考察
がん治療を受けている青年および若年成人において、ビデオゲーム介入は治療アドヒアランスおよびがんに関連した自己効力感と知識の指標を有意に改善した。
この結果は現在、ゲームを用いて治療を向上させるという考え方の基礎となっている研究であり、興味がある方はぜひ全文を読んでみてほしい。
※ある状況下で結果を出すために適切な行動を選択し、かつ遂行するための能力を自らが持っているかどうか認知するための言葉のこと。(引用)
まとめ
Re-MissionとRe-Mission 2は、がん治療のアドヒアランスを向上させるための革新的なゲームであり、治療の重要性を理解し、治療に対するモチベーションを高めることを目的としている。
2000年代からリリースされているこのゲームのおかげで、現在までゲームを用いた医療への介入が様々な人によって行われている。
Re-Mission : https://hopelab.org/case-study/re-mission/