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"ゲームは新たなうつの治療になり得るか?”【Legends of Hoa’manu】

要約


Legends of Hoa’manu(レジェンズ・オブ・ホアマヌ) はイタリアのCentro Zaffiriaが開発し、認知能力を訓練する目的で作られたゲーム。
このゲームは非侵襲的な脳刺激手法であるTranscranial Direct-Current Stimulation(tDCS)と組み合わせて使用される。
研究では、うつ病患者の多くがゲームを有用と感じ、続けたいと考えていることが報告された。
ゲームと既存の治療を組み合わせることで、メンタルヘルスケアの新たなアプローチが可能となるのではないか。


背景


うつ病には認知制御の障害が大きく関わっている。抑うつ気分や思考の制止などのうつ病の症状によって、注意・集中力や判断力・記憶力が低下してしまうことが原因の一つだ。
認知能力が高度低下してしまった場合には、治療効果の低下やその後のQOL、人間関係に大きな影響が出てしまう。
それでは、うつ病の患者に対して認知能力を上げることができれば、病気の発症・進行を抑え、治療ができるのでは?といったことが現在の重要なテーマである。

今回は認知能力を上げるためのゲーム、Legends of Hoa’manu(レジェンズ・オブ・ホアマヌ) について紹介する。

Legends of Hoa’manu とは


Legends of Hoa’manu(レジェンズ・オブ・ホアマヌ) はイタリアのCentro Zaffiriaが2021年頃に開発し、ジュネーブ大学とエルサレム大学での研究に使用されているゲームである。

ゲームの目的としては、認知能力(注意、知覚、記憶)を訓練することであり、現在ではうつ病の患者への適応が進められている。

このゲームは基本的には単体で使用するのではなく、Transcranial Direct-Current Stimulation(tDCS)といった非侵襲的な脳刺激手法を組み合わせている(詳細は後述)。

ゲームのイメージはこのような感じである。

ゲームの舞台は、人類が植民地化したとある太陽系の惑星。
ある日、宇宙からの侵略者がこの惑星に降り立ち、地表の居住性を保つための古代の塔に手を加え始める。
プレイヤーはヒーローのホアマヌとなり、侵略者を阻止して惑星の平和を取り戻すため、アクション要素とロジック要素を交互に繰り返しながら、数々の難題に立ち向かっていく。

(公式HPhttps://www.zaffiria.it/legends-of-hoamanu/ より)

Legends of Hoa’manuの効果と使用方法は?


ゲームプレイによるうつ病への効果測定として、Legends of Hoa’manuは研究が進められている。
(参考)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9589526/#CR63
http://thediscoverproject.site/images/pubPosters/pubPosters.pdf

Legends of Hoa’manuはゲーム単体で使用するのではなく、Transcranial Direct-Current Stimulation(tDCS)といった非侵襲的な脳刺激手法を組み合わせている。

Transcranial Direct-Current Stimulation(tDCS)は、頭皮に小さな電極を配置し、非常に低い電流を脳に流すことで、脳内の神経細胞の活動を調節し、認知機能の向上を狙う治療を目的とした手法だ。

その際、下画像Bにあるように、数字パッドを使って、モニター上の数字を速く正確に再現する作業や、Cでは 視覚運動課題:タッチスクリーン上の図形を、できるだけ速く、正確に追うなどの認知機能を向上させるタスクを行うことで、認知機能を効果的に向上させることを目指す。

しかし、tDCSは基本的には、多くの国で研究目的や臨床試験で使用されているが、一般的な医療治療として広く承認されているわけではない。


tDCS イメージ画像
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1935861X19303602?via%3Dihub より。

通常では、上記の画像のB,Cのように認知機能を上げるが、一般的には楽しいとは言えないゲームを用いている。

しかし、「認知機能の向上」×「ゲームプレイ自体が楽しい」を掛け合わせたゲームを用いれば、
患者のモチベーションが上がるのでは?
といった仮説に基づき、Legends of Hoa’manuは研究・開発されている。

実際にうつ病の患者が20人参加した2の研究では、参加者の75%がゲームを続けたいと回答し、70%が、ゲームをすることがうつ病への対処に役立つと考えていると報告された。
また、65%の参加者が、ゲーム中に幸せを感じたと回答し、悲しく感じたと答えた人はわずか5%、20%がどちらとも言えないという結果であった。

まとめ

Legends of Hoa’manuのような新規ゲームと既存の治療を用いた医療への介入は、最終的には、通常の治療や薬に抵抗がある人たちへの、現在のメンタルヘルスケアにおける障壁を克服する助けとなるかもしれない。
その点で、ゲーム単体で新たな治療を生み出すことだけでなく、既存の治療と組み合わせたり、既存の方法をゲームに落とし込むといった発想が重要であろう。

Legends of Hoa’manu : https://www.zaffiria.it/legends-of-hoamanu/

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