【Thymia(サイミヤ)】メンタルヘルス向上への新たなゲームアプローチ
要約
近年、メンタルヘルスの問題が増加し、新たなアプローチが求められている中、Thymiaは、精神状態の評価・モニタリングを行うゲームを開発している。
ゲームでは、プレイヤーの行動・反応をAI技術を用いて収集し、うつ病の兆候を検出するなどの目的で使用される。
現状
近年、メンタルヘルスの問題が世界中で増加しており、その解決には新たなアプローチが求められている。Thymia(サイミア)は、この課題に取り組むために開発されたゲームベースのアプローチで、うつ病や精神疾患の診断とモニタリングを支援する革新的なプロジェクトを行っている。
Thymiaとは
ゲームを通じた診断とモニタリング
2020年に設立されたThymiaは、メンタルヘルスの診断とモニタリングを支援するために、ゲームを活用する新しいアプローチを実施している。
このゲームでは、プレイヤーの行動や反応データを収集し、精神的な健康状態を評価することを目標にしている。
そこにAI技術を組み合わせることで、うつ病の兆候を検出したり、患者が治療に反応しているかどうかをモニタリングするアプリである。
ゲームの特徴
Thymiaゲームは、精神状態の評価において高い精度を持っている。
プレイヤーはゲーム内で様々な課題に挑戦する。
様々な課題としては、カードの記憶や、アニメーションのシーンを口頭で説明したり、蜂のような動く物体を記憶したりするものが含まれる。
アプリ側では、音声・カメラ映像・アプリでのアクション測定という3つの主要データを取得・分析している。
その行動や反応データが精密に収集され、精神的な健康状態を数値化し、診断や治療の基盤となるデータを提供している。
音声
音響(声の出し方)と内容(話す内容)の両方を分析する。
音響には、トーンやピッチの変化、声の大きさのレベル、間などが含まれ、微妙な感情の手がかりを明らかにする。
一方、話す内容では、使う言葉や構造から認知状態についての洞察を獲得する。
カメラ映像
視線パターン、顔の表情、頭の角度、上半身の動きなど、カメラで撮影できるすべての動きを追跡する。
対面での対話では気づかれないような動きも拾うことが可能。
アプリでの行動
タップ、スワイプ、キーストロークからユーザーの精神状態、反応時間、エラー率に関する洞察を引き出す。
これらのデータを元に、臨床的な状況・臨床的な症状・健康的な指標をそれぞれの点数化を行う。
臨床的な状況
depression(憂鬱さ)
anxiety(不安度)
ADHD
臨床的な症状
anhedonia(喜びの消失)
attention(注意度合い)
mood(気分)
fatigue(疲労)など
健康的な指標
burnout(燃え尽き症候群)
stress(ストレス)
distress(苦痛)
confidence(自信)など
例えば、distress(苦痛)に対しては、以下の4段階でLow,Mild,Moderate,Highを区別している。
Low
過度の感情的動揺を伴うことなく、さまざまな苦痛状況に対してバランスのとれた適応可能な反応を示す。
Mild
軽度の苦痛は、一過性の感情の動揺を経験する個人に時折みられるが、通常は日常機能に長期的な影響を及ぼすことなく切り抜ける。
Moderate
適応的および/または情動調節のメカニズムが適切に使用されていない、または効果的でないことを示す場合もある
High
適応能力が低いか、感情の調節メカニズムが不十分であることも示されている。
効果と研究
論文による効果検証
Thymiaの効果は様々な研究によって検証されており、200もの論文を出している。対象者はさまざまな年齢層や背景の人々で、ゲームを通じた精神状態の評価において高い精度が示されている。
フルテキストで閲覧できないものも多いが、興味があれば確認してみてほしい。
普及状況
Thymiaは、5大陸にまたがる顧客とパートナーを誇っており、カナダ、アメリカ、イギリス、ナイジェリア、ブラジル、インドネシアなど様々な大陸で使用されている。
そのため、現状では日本では使用することができない。
まとめ
Thymiaは、メンタルヘルスケアにおける新たなアプローチとして注目されている。
ゲームを通じた診断とモニタリングは、効果的な治療のための重要なツールとなりうることが示唆されており、今後の展開に期待が寄せられており、メンタルヘルスの向上と精神疾患の早期発見に貢献する可能性が高いプロジェクトと言える。
参考文献:
公式HP: https://thymia.ai/
詳細説明:https://thymia.ai/docs/white-paper