「診査」はなかなか難しいステップ
最初のステップである「診査」は、患者さんにとっては当たり前のことを行なっているように感じるでしょう。
しかし、これはなかなか難しいステップなのです。
というのは、患者さんの訴えを聞き、不明なところは尋ねながら患者さんが本当に望んでいることを確認する作業(問診)は、歯科医師と患者さんの間でスムーズにコミュニケーションができていないとうまくいきません。
たとえば、来院される際に、最初から患者さん自身で痛みの原因を決めつけていたりすると、歯科医師がいろいろな可能性を探りながら行なう問診の最中に「何で関係のないことを聞くんだ、早く治療してくれ!」などとおっしゃられることもあり、そこから信頼関係が崩れはじめたりします。
患者さんの表情や話し方を観察しながら話をよく聞くことが必要です。歯科治療と言っても、基本的には人間同士の対話によって問診が行なわれますから、医療的な面接技術のほかに、ちょっと堅苦しくいえば心理学や倫理学、行動経済学、言語学といった能力も必要になります。
先述しましたように、診査項目には問診以外に視診、冷診、温診、電気診、打診、触診、画像診査などがあり、これらはほとんど一律に行なわれます。
患者さんの主訴が「痛み」であれば、その痛みを再現することがいちばん簡単な見分け方になるからです。
具体的には、患者さんが気になっている歯をいくつかの方法で刺激して痛みを感じるかどうかを聞きます。
ある方法で痛みを感じるのであれば、そのときに感じた痛みが、まさに患者さんが解決したい痛みと同じものであるのかを問診します。
しかし、実際には「痛みの再現」は簡単ではありません。「歯がズキズキ痛い」とか「右側がジーンと痛い」と言われることもありますが、これでは漠然としていて、なかなか再現できないことも多いのです。
ですから、この方法が使えるのは、症例全体の
1~2割ほどです。
参考文献
「あなたの歯の寿命、大丈夫ですか?歯医者さんとの賢い付き合い方」
著・石井宏
発行・コスモ21
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