【翻訳】ロマン・アブラモビッチ氏の戦争犠牲者のための基金は、ウクライナ人だけに送られるのではない
今回は、ガーディアン紙の記事の翻訳です。
ジェイコブ・スタインバーグ氏による2022年3月3日付の記事『Roman Abramovich’s funds for war victims will not only go to Ukrainians』を訳しました。
記事の後に要約を付しました。次の行より、記事の全訳です。
ロマン・アブラモビッチ氏の戦争犠牲者のための基金は、ウクライナ人だけに送られるのではない
・チェルシーのオーナーは、「すべての戦争の犠牲者」を助けると誓った
・ 情報筋によると、ロシア人への支援の可能性を残している
ロマン・アブラモビッチ氏がチェルシーの売却を利用してウクライナ戦争の犠牲者に資金を寄付する計画は、ウクライナ人だけを対象としておらず、ロシア人兵士やその家族にお金が渡るという見通しを示している。
アブラモビッチは水曜日にチェルシーの売却を望んでいるということを強固にし、ロシアのオリガルヒは、すべての純収益(売却から弁護士費用を差し引いた金額と理解されている)は「ウクライナ戦争のすべての犠牲者のために」使われると述べた。この表現は、ロシアの侵攻によって傷ついたり、遺されたり、その他の影響を受けたウクライナ人のために全額が使われるとは限らないという可能性を残している。
ガーディアン紙は、この発言を明らかにするために、この慈善基金が戦争で傷ついたロシア兵やロシア兵の家族を助けるために使われる可能性があるかどうかを、このプロセスに近い情報筋に尋ねている。ある有力者は、この基金は戦争のすべての犠牲者を対象としており、出自とは関係ないだろうと説明した。アブラモビッチ氏のチームは慈善団体と協力し、最善の方法を模索しているというが、さらなる詳細は明らかにされなかった。
チェルシーを売却した場合、どの程度の金額が基金に入るかはまだ不明である。どのような取引からどのように純益が差し引かれるのかも不明である。チェルシーもアブラモビッチ氏の広報担当者も、純収益の処理に関する質問には答えなかった。
アブラモビッチ氏は、ロシアのウクライナ侵攻以来、監視の目を向けられており、オーナーシップを停止するように、という高まる政治的圧力に屈している。55歳のアブラモビッチ氏は、議会で英国政府から制裁を受けるよう要求された後、この発表を行った。
アブラモビッチ氏は、ウラジーミル・プーチン氏やロシア国家とつながりがあるという疑惑や、制裁を受けるに値する何かをしたという疑惑を激しく否定している。しかし、こうした否定は、ロシアの行動を非難していないアブラモビッチに対する批判を黙らせることはほとんどできなかった。労働党のクリス・ブライアント議員は、チェルシー売却の決定はアブラモビッチによる制裁回避の試みである可能性があると述べている。また、労働党のリーダーであるキーア・スターマー卿は、ボリス・ジョンソンにチェルシーのオーナーに制裁を加えるよう圧力をかけた。
チェルシーに関心を持つ関係者は、アブラモビッチ氏が制裁を受けた場合に備えて、迅速に行動することを検討しており、その時点で売却が許可される可能性は低くなっている。
トッド・ベーリーとハンス・ヨルグ・ヴィスは、チェルシー買収の成功に自信を深めており、今週末にもロマン・アブラモビッチとの交渉を強化する予定だ。関係者によると、少なくとも他の1つのグループが今週中にオファーを出す準備を進めているという。
要約
アブラモビッチがチェルシー売却で得た資金をウクライナの戦争の犠牲者に寄付すると発表したが、その対象はウクライナ人だけでなく、ロシア人兵士やその家族も含まれる可能性がある。そもそも、どの程度の金額が基金に入るのか、純利益がどのように計算されるのかも不明である。
アブラモビッチはプーチンとのつながりが取り沙汰される中で、アブラモビッチがプーチンを批判していないことに厳しい目が向けられていたが、この基金設立でもアブラモビッチへの批判は収まらないだろう。
※ ガーディアンの記事がリリースされるのも、私がこのnoteの執筆を始めたのも、「イギリス政府がアブラモビッチ氏の資産を凍結したことにより、チェルシーは試合の一般チケットやグッズの販売、選手の獲得などが不可能に」なるかもしれないという報道の前のことです。
今回は以上です。