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70505Eとウエスターナー

1,2週間前、少し体調を崩したことがきっかけで、心のほうの調子も少し崩した。
天気があまり良くない日が続いたし、体調の悪さと重なったせいだと思う。
日照時間と心の病は関連があるというし、白血病になってつくづく感じることは、身体の調子が悪くなれば、おのずと心のほうも調子が上がらないということだ。

天気の回復に合わせるように体調も良くなってきたので、妻の勧めもあり気分転換に親友のお店に行ってきた。


彼とは高校時代からの付き合いなので、かれこれ26年くらいの付き合いだと思う。

彼と彼の奥さんと古着のセレクトを担当しているM君と僕。
他のお客さんが来るまでの間、4人でおしゃべりを楽しんだ。

その日の彼の奥さんのコーディネートがとても素敵で、特に古着のリーバイス510がとても似合っていた。
510はリリースされていた頃は見向きもされていなかった品番で、今になって日の目を見るとは、そこにいる誰もが思っていなかった。

あの頃のリーバイスのカタログは、いろんな品番・シルエットのモデルが展開されていたこともあり、結構分厚い本みたいだった気がする。とっておいたら面白い資料になったと思う。

そんな話の流れから、90年代後半の自分たちのファッション遍歴の話になり、親友が70505Eを中学生の時に買った話になった。
僕はその話題が出た瞬間、彼を初めて見たときの衝撃を思い出した。

僕は自分のめんどくさい性格が災いして、同じ中学の同級生とは馴染めず、塾にしか居場所がなかった。
当時、自分たちの中学校の体操着で塾に来る人がほとんどだったけれども、カラーギャングよろしく同じ服同じ色での仲間意識がすこぶる苦手だった僕は、なるべく私服に着替えて塾に行くようにしていた。

古着ブームが来て、ヴィンテージに興味も出ていたけれど、なかなか手が伸ばせなくて、当時手に入れたジャケットは、なぜかレギュラーで販売されていたLee のウエスターナーだった。

パンツはみんながリーバイスに向かって行く中、天邪鬼な僕が選んだのは、上京していた従兄弟に連れて行ってもらった、上野のインポートセレクトショップのヤヨイで買ったラングラーの13mwzで、インナーに選んだのは、ありふれたネルシャツ。

今思えば少しちぐはぐで滑稽だけれども、その時の僕にとっては精一杯のお洒落だった。

そんな格好の僕の目の前に、程よく色落ちとダメージがある本物のヴィンテージを羽織る彼が突然現れた時、「すげーかっこいいじゃねえか!!」と心の中で叫んだものだ。

結局、彼とは塾で話すことなく終わってしまったけれど、記憶の中に鮮明に残っていたので、高校で見かけた時にあの時の彼だ!!と思い出し、部活がたまたま一緒になったこともあって、すぐに声をかけて友達になった。


それが親友との出会いで、本格的に服好きになるスタート地点だと思う。

僕とは違い、15歳ちょっとで、すでに洗練されたセンスでファッションを華麗に着こなす彼への憧れもあり、一緒に服屋さん巡りをして、彼の服の選び方、着こなし方を懸命に盗んだ。

古着ブームの真っ只中で、雑誌はBOONを読み、ヴィンテージは高くて買えないので、レプリカデニムブランドのちょっと良いやつを買って、糊付きのまま毎日履いて、できる限りヴィンテージに近くなるように工夫をした。

裏原宿ストリートブランドの隆盛に合わせて、読む雑誌にSmartが追加され、少しずつ東京への憧れが強くなっていき、進路を選ぶときは上京一択となっていった。


時は大分流れて2021年、あの頃の僕のような年頃の子達が、僕達が夢中になったスタイルを選んだりするようになったようだ。

ファッションは周期があって、同じようなスタイルが何年かおきにくるらしいのは、アパレル業界に身を置いたことのある僕は分かっているけれど、正確には同じではなくて、都度新しい要素が加わって、今は K -POPのファッションに影響を受けた子もいるし、女の子もかつてのパフィーのようなガチガチの古着ファッションの子はほとんどいない。

でも、きっと心の中は一緒じゃないかと思っていて、誰かに見てもらいたいとか、目立ちたいとか言う子もいれば、僕みたいに好きな服を着ることで気分が上がるように、変身願望というかオンオフの切り替えをするって子もいるだろう。

服にお金かけるなんて、いい大人の社会人がすることじゃないよと咎められたこともあるけれど、僕は変わらずファッションを楽しむ人でいたいと思っている。

引っ越しの都度、出場機会の少ない服は売るようにしていたので、どこかのタイミングで手放してしまったウエスターナー。
40を超えた今なら、あの渋いジャケットもうまく着こなせるだろうか。

あいつどこ行ったかなぁ。

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g.m.design&art works  野本 昌宏 (がめちゃん)
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