サービス終了ライン2024:スマホアプリを分断する『1億の壁』
こんにちは。Game-iです。
Game-iはApp StoreやGoogle Playのトップセールスランキングをもとにして売上予測などを行っているアプリ分析サイトです。
約2年前に、スマホアプリのサービス終了ラインについて検証した記事を沢山の方に読んでいただきました。その中で、自分がプレイしていたアプリの動向や、現在プレイ中のアプリがどのような位置にあるのかを気にする声が多かったのが印象的です。
2022年頃は、コロナ禍の制限が徐々に緩和されつつも、依然としてスマホゲームの利用率が高かった時期です。しかし、それから2年が経ち、状況は大きく変化しました。そこで今回は、2024年のデータをもとに、改めて現状を検証してみることにしました。
この記事では、2024年にサービス終了が発表された主要なアプリをピックアップし、前回の状況とどのように変化したのかを解説します。また、サービス終了が注目される順位や売上予測値についても、分かりやすくお伝えします。
2024年にサービス終了した主要なアプリ
各月に終了したアプリの中で6ヶ月前の売上予測値が最も高かったタイトルをピックアップしました。なお、6ヶ月はサービス終了判断のタイミングとして最も重要な数値だと考えています。(理由は前回記事参照)
■2024年1月:SINoALICE ーシノアリスー
「シノアリス」は、スクウェア・エニックスが手がけるダークファンタジーRPGです。スクエニのアプリはよく議論の対象になりますが、ビジネス視点では、サービス終了のタイミングは慎重に計画が練られていたように感じます。
売上がまだ高い時点でサービス終了を決定し、ファンに余裕を持って最後の時間を提供することで、ユーザーのロイヤルティを高める効果があったと考えられます。
その他のアプリはこちら
■2024年2月:ディシディアファイナルファンタジー オペラオムニア
「ディシディアFFOO」では、FFシリーズのキャラクターたちと繰り広げる熱いバトルを楽しんでいたファンも多かったのではないでしょうか。
開発には大手ゲーム会社のコーエーテクモが関わり、その分コスト面での課題も大きかったと思われますが、7年間にわたる長期運営は見事です。
終了は残念でしたが、運営チームの努力と、ファンの熱い支援があればこそと感じます。
その他のアプリはこちら
■2024年3月:ジャンプチ ヒーローズ
「ジャンプチ ヒーローズ」は、ジャンプ作品のキャラクターたちが共演する夢のようなゲームとして、多くのファンに親しまれてきました。また、開発のワンダープラネットにおいては『クラッシュフィーバー』と並ぶ代表作になっていました。
ジャンプ創刊50周年を記念してリリースされた本作は、人気IPが多く権利料などのコストが高かった可能性もありますが、5年間の運営を通じて、“創刊50周年記念としての役目を十分に果たした”と運営チームからコメントが発表されていました。
その他のアプリはこちら
■2024年4月:NieR Re[in]carnation
「NieR Re[in]carnation」は、人気シリーズ「NieR」の新作として期待され、配信直後にはiOSセルラン総合1位を獲得するなど、大きな話題を呼びました。サービス終了の前月にストーリーが完結しており、計画的な終了だったと考えられます。運営型ゲームでは、グラフィック素材の準備や開発、テストに時間がかかるため、ストーリーを完結させて終了するには十分な計画が必要です。
開発を担当したアプリボットはサイバーエージェントグループの一員であり、新規タイトルへの開発リソースを集中させる戦略が背景にあった可能性も考えられます。
その他のアプリはこちら
■2024年5月:StarHorsePocket+
「StarHorsePocket+」は、アーケードのメダルゲームとして人気の「スターホース」シリーズをスマホ向けに展開したアプリです。競馬ファンやシリーズファンに支持され、7年間もの長期運営を実現しました。
2020年には名称変更を伴う大型アップデートを行っており、この時点でテコ入れが必要と判断されていたことが伺えます。大型アップデート後に早期終了するアプリも多い中、その後さらに4年間運営が続いたのは非常に好印象です。
その他のアプリはこちら
■2024年6月:ダンまち〜メモリア・フレーゼ〜
「ダンまち~メモリア・フレーゼ~」は、人気ライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」を原作としたスマホゲームです。2023年には新作「ダンまち バトル・クロニクル(ダンクロ)」が配信され、IPとして異なるジャンルの2タイトルが同時に展開される状態になっていました。
開発元のWFS(GREE子会社)は、「ヘブンバーンズレッド」や「アナザーエデン」といった人気タイトルを手がける企業です。そのため、「メモリア・フレーゼ」の売上減少を受けて、新規タイトルへのリソース集中を図った可能性も考えられます。
その他のアプリはこちら
■2024年7月:マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝
「マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝」は、人気アニメ「まどかマギカ」のスマホ向けスピンオフ作品です。2024年1月の売上予測は高水準を記録しましたが、その前後の月は半分以下の値に落ち込んでおり、このタイミングで課金促進のテコ入れ施策が行われた可能性が考えられます。
ユーザーの間では約7年を通じて「運営はやり切った」という評価が多く、新作アプリ「魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra」へスムーズに移行する形で幕を閉じました。長年のファンと共に築いた軌跡を、新作へと上手く引き継いだ格好ではないでしょうか。
その他のアプリはこちら
■2024年8月:ロストディケイド
「ロストディケイド」は、ブシロードからリリースされた放置系スマホゲームです。2021年4月には運営がブシロードからRastar Games Japanに移管され、その後も運営が続けられていましたが、2023年にはセルラン圏外となり、2024年はほとんど記録が残っていません。
それでも、少数のプレイヤーに支えられながら細々と運営が続けられていたようです。長期運営を目指したものの、競争の激しい市場環境の中での厳しい戦いが垣間見えます。
なんと8月は終了記録に残っていたアプリは1件のみでした
■2024年9月:実況パワフルサッカー 【選手育成サッカーゲーム】
「実況パワフルサッカー 【選手育成サッカーゲーム】」は、コナミが手がけた人気サッカーゲームです。「パワプロ」で好評の選手育成システムをサッカーに応用し、多くのサッカーファンから支持を集めました。約8年間の運営期間中、売上予測は常に月間1億円以上をキープする安定したタイトルでしたが、惜しまれる声が多い中での終了となりました。
また、開発を受託していたエイミングは赤字決算が続いており、ビジネス的な厳しさが背景にあった可能性も考えられます。長期運営を実現しただけに、終了は多くのファンにとっても残念なニュースでした。
その他のアプリはこちら
■2024年10月:機兵とドラゴン
「機兵とドラゴン」は、DONUTSが配信したタワーディフェンス型のマルチ対戦ゲームです。『城ドラ』や『ドラゴンポーカー』を手がけた森山尋氏がゲームデザインを担当し、開発に4年を費やしましたが、リリースからわずか半年での終了となりました。
インストール数が伸びず、ユーザーを十分に確保できなかった結果、売上が低迷し、サービス継続が困難になったと考えられます。ゲーム性を高く評価する声も一部で見られましたが、市場への浸透が難しかった点が課題だったのかもしれません。
その他のアプリはこちら
■2024年11月:どうぶつの森 ポケットキャンプ
「どうぶつの森 ポケットキャンプ」は、任天堂の人気シリーズ「どうぶつの森」をスマホ向けに展開した作品です。約7年間の運営期間を経る中で、年々売上予測値が減少し、サービス終了の判断に至ったと考えられます。
終了時に有料オフライン版「どうぶつの森 ポケットキャンプ コンプリート」が配信され、セーブデータを引き継いで遊べる仕組みを提供。このような形でファンの思い出を残すのは、任天堂らしい配慮と言えるでしょう。
余談ですが、開発を担当したDeNAはその後、「ポケモンTCGポケット」を配信し、大きな成功を収めています。
その他のアプリはこちら
■2024年12月:八月のシンデレラナイン
「八月のシンデレラナイン」は、アカツキゲームスが手がける女子野球×青春をテーマにしたスマホゲームです。オリジナル作品として大きく力を注ぎ、球団とのコラボやラノベ、マンガ、アニメ化など、KADOKAWAとの連携によるメディアミックスも積極的に展開されました。
必ずしも高い売上を維持していたわけではありませんが、約7年半の運営を通じて、ブランディングやファン層の獲得に成功したと言えるでしょう。さらに、サービス終了に際してはオフライン版アプリを配信し、有終の美を飾る形で幕を閉じました。この丁寧な対応は、長年支えてきたファンへの感謝の表れといえます。
その他のアプリはこちら
以上、各月の主要アプリを列挙しました。
2024年サービス終了アプリの分析
過去1年間のサービス終了アプリについて、過去のデータも参照しつつ傾向を分析したいと思います。
データ比較(2022年 vs. 2024年)
最高順位:264位 → 160位
平均順位:531位 → 345位
中央順位:504位 → 327位
売上予測:5,377万G → 9,307万G
「えっ、嘘でしょ!?」
2022年時点では6ヶ月前の売上予測が1億Gを超えて終了したアプリは「テイルズ オブ クレストリア」のみでしたが、2024年には1億G以上のアプリがなんと5本も終了しています。
終了アプリの特徴と背景
長期運営
多くのアプリが5年以上、中には7年以上運営されており、人気IPや安定収益を背景に長く愛されてきました。計画的な終了
ストーリー完結や新作への移行など、計画的に終了するケースが増加。これはユーザーへの配慮と企業戦略の現れといえます。
サービス終了のライン推測
順位の分布
終了アプリの6か月前順位は221位~495位に分布。200位以内で終了する例はないものの、中央値は以前より上昇しています。
200位以内なら大丈夫……というのはアプリが限られ過ぎて全然安心できませんよね。続いて売上予測値による傾向を見てみます。売上予測値
売上予測値の範囲は4,769万G~1.64億G。それぞれ以下の傾向が見られます。約5,000万G未満:この範囲終了するアプリは、ゲームが運営を続けるための最低限の売上が得られていない可能性があります。オリジナル作品でない場合、IPの権利料など外部コストが重くのしかかります。
5,000万G~1億G:この範囲では、ゲーム自体に一定の人気があり、収益も得られているものの、開発体制(大手企業)や広告費用などの運営規模によって継続が困難になる場合があります。
1億G以上:ここまで来ると、ゲームはかなり成功していると言えますが、それでもサービス終了に至る例が存在します。これは、開発コストの高さ(ハイエンド3D、楽曲使用、コラボ等)、新作への移行、または運営側の戦略的な判断によるものかもしれません。
1億Gを越える売上で終了するアプリは、売上予測や順位からは運営状況の健全性は判断出来ないと思います。ユーザーとしてはコンテンツの進行度(完結が見えている)や企業の経営戦略に注目するのが良いかもしれません。
「終了」ではなく「完結」ならば、新たなサービスや展開につながる可能性もあり、必ずしも不幸な結果ではないとも言えます。
まとめ
2024年のサービス終了アプリを振り返ると、いくつかの特徴が浮き彫りになりました。
長期運営の増加:多くのアプリが5年以上の運営を達成し、計画的な終了が目立ちました。
高売上でも終了:1億G以上の売上を記録しても、新作への移行や戦略的判断で終了するケースが増加。
終了ラインの変化:順位や売上予測値の基準が以前より上昇し、競争の激化がうかがえます。
業界全体が成熟する中、「どう続けるか」だけでなく「どう終えるか」も重要な時代になっているように感じます。2025年も引き続きゲーム関連企業の戦略に注目していきたいと思います。
最後までお読み頂き有難うございました!よければスキ(ハートマーク)タップやXフォローお願いします!!
公式X: @game_idaa