1周目クリア感想「メタファー:リファンダジオ
アトラスの新作RPGである「メタファー:リファンタジオ」をクリアしました。クリア時間は99時間ほど。
本作は同社の大ヒットタイトル「ペルソナ5」発売後、メインスタッフである橋本桂、副島成記、目黒将司が中心となって開発された、コマンド式ファンタジーRPGになります。8年前にこの発表があった時、全く新しいRPGをこのスタッフが生み出すと聞いて、とてもワクワクしたことを覚えています。
そして今年10月に発売された本作。システムにはペルソナ、女神転生、世界樹の迷宮などで培われたアトラスRPGの遺伝子を色濃く残しつつも、新しい試みに満ちた傑作になっていたと思いました。
ストーリーは多種族が暮らすユークロニア連合王国で、暗殺された王の魔法から新たな王を選挙で決めることになり、忌み嫌われる種族の出身である主人公がそれに巻き込まれていくというもの。
システムとしては王国の暦で6月から10月の間、国中を巡りながら支援者たちの絆を高め、主人公パーティを強くしながらストーリーやサブクエストを進めていく形になります。
上記のシステムは、ペルソナシリーズのシステムにとても近く、期限までにクリアが必要なメインクエストが発生し、それまでにサブクエストで強化したり、仲間との絆を深める(=主人公やパーティの強化につながる)イベントをこなす、という部分はアレンジこそ加えているものの、基本的には同じようなフィーリングでプレイできました。
戦闘に参加するメインキャラクターは主人公を含め7名。その他にも主人公のナビ役として妖精がいたり、移動手段となる鎧戦車の操縦、メンテナンスを行うキャラクターなどが主な旅のお供になります。
戦闘に参加するパーティは4名(主人公交代不可)なので、バックアップは最大3名で、これは多すぎず少なすぎずの絶妙な塩梅だと思いました。本作の敵は弱点や攻撃の特徴が多彩なため、レベルが低い段階ではキャラクターやアーキタイプ(職業のようなもの)を切り替えながら戦う必要があるため、一人として不要なキャラクターは居ないように感じました。
本作のメインテーマに沿って、プレイアブルキャラは各種族から加わっており、特に上記のハイザメなどは、かなり私達がイメージする人間的種族から離れた外見をしており、やはりこの世界でも差別を受け続けているようでした。
キャラクターの育成は、アーキタイプと呼ばれる主人公たちが目覚めさせた英雄像を装備して、スキルやステータスを強化して行います。まあペルソナのようなものですが、全てのキャラクターが複数のアーキタイプを装備できるため、その組み合わせは無限大で、プレイヤーごとに個性が出てきそうです。ただ、各キャラクターは固有の最強アーキタイプ(ロイヤル)を持っており、これを揃えることで効率的にクリアできるため、最終的にはそこがゴールになってしまったのは結構残念でした。ロイヤル揃えで繰り出すジンテーゼ(合体攻撃)がチート級なんでね……。
そのアーキタイプを駆使して繰り広げられる戦闘は基本的には従来と同じコマンド式。本作ではプレスアイコンと呼ばれる星を消費して行動します。プレスアイコンを消費し切ると敵ターンに移るため、これを以下に有効活用するかが攻略の鍵となります。敵の弱点を付けばアイコンの消費が減り、またフィールドで先制攻撃すると敵を気絶+HPを減らした状態で攻撃できるため、できるだけその状態で攻撃することが基本です。そのためのアーキタイプやスキル構成を考えるのがとても楽しく、RPGで一番時間を取られる戦闘が最後までずっと充実していました。また、ペルソナシリーズのころからおしゃれかつ使いやすいUIは健在で、例えばアイテムの使用一つにしても、選択するとそのアイテムで回復が必要なキャラクターにアイコンが移動したり、不要なアイテムの場合メッセージが表示されるなど、ストレスがたまらない仕様になっていました。
さて、広大なユークロニア連合王国の移動は、基本的には一画面に記された地図の上を、アイコンが移動するシンプルなもの。
ここはファンタジーRPGを開発と聞いて、オープンワールドを移動するゲームを期待していましたので、残念な部分ではありました。ただ、鎧戦車の移動中は主人公を動かして、鎧戦車から周りを見る時間があったり、下記のような絶景を見かけると、下車して景色を堪能するシーンが随所に挟み込まれており、旅情は十分に感じられるシステムになっていたと思いました。
このあたり、オープンワールドゲームの良し悪しにもなると思うのですが、100時間をプレイするRPGで、さらに移動でウロウロする時間が必要かどうか。本作のスタッフは「不要」と判断したのでしょうし、実際それが味になっているため、私も移動中に十分旅情を感じれたため、これはこれでありだな、と感じています。ただまあ、メタファー2があるなら、オープンワールドでこの世界を見たい気持ちも少しあったりもします。
本作の中核にあるテーマは、「幻想(虚構)は現実を変える力になりうるのか」。過去にも様々なフィクションで語られたテーマになりますが、本作でも差別や格差、生活の不安が蔓延しているファンタジー世界が、文字通り私達が生きる現代社会のメタファーとなっており、またファンタジー世界の現実では私達が生きる現代社会が理想郷として、主人公が持ち歩いている本に描かれていたりと、常にゲームをプレイする私達に問いかけるような作りになっていました。
なお、本作では冒頭にプレイヤーの名前を聞いてきており、プレイしてしばらくしてから主人公の名前を聞いてきます。本作のテーマ的にもラストの余韻的にも、本名もしくは自分のHNなどでプレイすると、物語を堪能できる仕組みになっていると思いました。
本作でボス的位置に居るのが「ニンゲン」です。
ニンゲンはおそらくメタファーの世界でも発音はニンゲン。
デザインは様々ですがヒエロニムス・ボスの快楽の園に描かれた不気味な怪物のようなものをモチーフにしており、高校生の頃その絵のインパクトに魅せられた私も大喜びでした。ボス(ボッシュ)の絵が動いて攻撃してくる芸術的なボス戦が堪能できるゲームなんて最高ですよ。
そんな感じで私は大満足でゲームをプレイできました。10月11日の発売の本作を11月16日でクリア。体験版でそれなりの時間遊べたとは言え、100時間ちかくプレイする必要があるゲームを約1ヶ月でクリアしたのは、最近の可処分時間を考えると結構異例で。それだけ何はともあれメタファーをプレイしている日々でした。
ペルソナ3だと学生が主人公とメンバーになるため、年齢を重ねるとあまりピンとこない方も、本作だと結構多彩な年齢、見た目のキャラクターが揃っているRPGで、かつしっかりファンタジーしている作品ですので、今まで敬遠していた人も一度プレイしてみてー、とおすすめしたくなる作品でした。おそらく個人的GOTYになるかと思います。