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マスキュリストたち


正面から民主制を否定するという大胆さで、独裁肯定者としてのトランプ=ヴァンス=マスクの三者会盟ばかり注目されているが、この3人の反民主主義カルテルにはマスキュリズム(Masculism)という大きな原動力が秘匿されている。

日本語では普及している語彙かどうか心許ないので、マスキュリズムという言葉について説明します。

マスキュリズムは、1993年に出版された
The Myth of Male Power: Why Men are the Disposable Sex の著者、ワレン・ファレルが発明した概念で、簡単にいえば「男性に対する性差別撤廃」を目指した運動です。

男性差別?
そ、そんなものがあったのか、と、ぶっくらこく人も多いとおもうが、まあ、他人の話に耳を傾けるに如くはない。こんな内容です

1 現代民主社会の政治に参加する権利は、歴史的に、徴兵制度のもとで戦場に駆り立てられて血を流して戦った男たちに代償として認められた権利で、戦場に出て戦わない女たちに与えられるのはおかしい。

権利と義務のバランスという点からも、女性に参政権が与えられるのは民主社会の基本的なルールに反している

2 実際には性別による差異が殆どない犯罪、例えば家庭内暴力において、あたかも男が常に加害者で女が被害者であるかのように女達が演出するのは、卑怯であり、不公正である

3 ジェンダー差別の指標として、よく用いられる収入格差は、支出をもとに格差を測らないと公正とは言えない。

平均的なカップルでは、通常、支出を決定するのは女性の側で、男の側は女性に支出についての許可を求める。支出に視点を移すと家庭経済を支配しているのは女性の側である

4 社会の支配層、政治家、経営者、いわば社会の勝利者が男ばかりであると批判されるが、
ホームレスや過労死犠牲者、自殺、土木作業者、兵卒なども男のほうが多い。

5 平均寿命が女のほうが長いのは生物学的理由による、という科学的根拠は存在しない。
男が早死になのは、社会が男性側により苛酷であることの証拠である

とまあ、こういう論拠が並んでいて、順に見ていくと、

1は、北海文明圏を中心にほぼ受け入れられた考えになっていて、第二次世界大戦中に比較的に粗悪なつくりの狙撃銃だったモシン・ナガンやSVT-40で、確認戦果だけで309人のナチを狙撃・殺害したリュドミラ・パヴリチェンコを持ち出すまでもなく、女の人達が体力を要する歩兵戦場でさえ、訓練によって、男と遜色なく戦えることは、赤軍の長い戦闘の歴史が証明している。

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