酒の飲み方が判らない
自粛を続けている。このところコロナの勢いは劣えているように見受けられるが、今のところ私はまだ警戒レベルを変えていない。
人類にとってかなりの難敵であるこのコロナは、私には何やら意思を持っているように思えてならない。「ちょっと一休みするか。」「みんなが油断し始めた頃に、もっと強烈なやつをお見舞いするかな。」と手ぐすね引いていやしないか‥‥
まあ本気でそんな風に思っている訳ではないが、何か安心できない自分がいる。感染者が急減したメカニズムについて、腹落ちする理屈を誰も説明してくれないことが理由の一つだ。武漢からギリギリで帰ってきた私は、神経質になり過ぎているところも確かにある。
そんな臆病な私は、外飲みの禁を未だ解いていない。手帳で確認すると、最後に外でお酒を飲んだのは2020年2月26日。それは帰国からすぐの幽閉2週間~更に軟禁2週間を経た後の、高校時代の友人との酒席だった。
細君は私を 「アル中」と言う。確かに365日酒を飲まない日はないが(熱がある時のビールの喉ごしも好き)、アル中説はきっぱり否定する。酒が抜けても禁断症状は起きないし、酒の勢いを借りなきゃ言いにくいことを言えないなんてことはない。酔って議論を吹っ掛けたりなど絶対しないし、前後不覚になって駅で夜を明かしたこともない。
手前味噌にはなるが、話題もまあまあ豊富で、場を和ませる "優良酔っ払い" だったと自負する。そして「お酒は陽が落ちてから」と節度もちゃんと持ち合わせている。"正しいお酒の飲み方講座" を主催したいぐらいだ。
サラリーマン時代を振り返ると、私は外で飲んでばかりいた。30代の終わり、大阪に単身赴任してすぐ、狭いキッチンでまな板を滑らせ指を切ったのを機に自炊は一切止め、ほぼ毎日外で飲んだ。4年間の単身生活を終え名古屋に帰ってからも、平日に家族と食事するという生活に馴染めず(?)、お客様接待、同僚との飲み会や麻雀ばかりの、家に足が向かない毎日を送った。「アル中!」と謗(そし)る細君の気持ちはよく理解できる。
そんな私が、もう1年8ヶ月も外でお酒を飲んでいない。
もう間もなく各種ワクチンが出揃い、その接種が進み、治療薬も登場してコロナ終息にも目途が立つことだろう。私の外飲み解禁の日も近い。
外飲み再開の折は、どんな飲み方をしたらいいのだろう。アフターコロナの新マナーとは如何なるものか。同伴者との距離・向き、他のお客さんとの距離、発声の方向、声の大きさ、飛沫防止の配慮、マスクの脱着、接触是非などなど。咳やくしゃみなどは言語道断だが、他人のコップや皿を触ることも憚(はばか)られるのかも。考えなきゃいけないことが多過ぎる。
果たして、楽しくお酒が飲めるのか。
私はアフターコロナの新時代に "優良酔っ払い" でいられるのか。
< 了 >