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院試体験記(ひっそり)



1.はじめに

 こんにちは、折り紙好きの数学徒です。いつの間にか東大数学科の4年生になっていました。院試を受けたので、体験記を書きたかったのですが、合格発表の日まで手がつかず、発表後に書き始めることになってしまいました。結果が分かってからの体験記はあまり好きではないので、取るに足らない話を多めにして、ひっそり書いておきます。

2.プロフィール

所属:東京大学理学部数学科
専攻:代数(数論及び数論幾何)
講究本:Etale Cohomology Theory(Lei Fu)
受験校:東京大学数理科学研究科(第1希望分野 数論)
    東京工業大学理学院数学系(代数分野)
   どちらも合格をいただきました!

3.院試直前期まで

 n人書いていると思いますが、学内で院試ゼミを春休みくらいから行いました。4Sから始まったB問題ゼミにかなりの時間を割いたのは、未だによかったのか悪かったのか分かりません。結果的には代数Ⅰ Ⅱ Ⅲに対する劇的な成長と、数論や代数幾何へのモチベーションアップにも繋がったので、そこはよかったと思っています。一方で、院試対策に時間をかけすぎて、4年次の講究が想定よりもかなり進みませんでした。難しい本を読んでいるので仕方ないとは思うものの、あまりの進まなさに泣きそうになる日もよくあり、本当に院試の対策ばかりしていていいのだろうかという気持ちになりました。このバランスはとても難しいと思います。

4.院試直前期(8月)

 前期の授業も終わり、本腰を入れて対策に取り組もうと思った矢先に、新型コロナウイルス陽性になりました。療養期間中は体力的に数学ができず、とても不安な気持ちでいっぱいでした。
 また、ストレスからか食欲と性欲が爆増しました。沢山美味しいご飯を食べたので、店紹介もまた後日暇があればします。1番お世話になったのはコーヒーではTully's、ご飯では松屋です。多分禁欲とかせず、思う存分発散してよいと思います。
 この時期に行っていたのは、主にA問題と口頭試問の対策です。A問題は定番となっている積分の問題があることや、Jordan標準形の計算練習の確認も兼ねて、直前期に再び戻るのがよいと思います。また口頭試問対策は定義の確認と、その場で解けるような問題を持ち寄って出し合うということをしました。ここで具体例を沢山触ることが、学んだ知識の定着につながるので、いっぱいやりましょう。

5.東工大院試(8/16〜8/18)

 東工大の院試についてもいくつか書いておきます。基本情報は略します。今年は全体的に難化したと感じています。午前の解析の問題が2問ともほとんど解けないという結果になってしまい、非常に焦りました。
 さらに午後の代数は例年とは異なり3問あり、選ぶ余地がでてしまいました。表現論の問題は絶対に解けることがすぐ分かったのでとても安心したのですが、それがよくなかったです。環論の問題と体論の問題があり、どちらも(1)は瞬殺といった感じでした。そこで小問の個数の兼ね合いと、解けたと勘違いしていたことも合わせ、環論を選びました。これが今回最大の失敗でした。何度も解けたつもりになっては、あぁ間違ってた、、を繰り返してしまい、気づいたら30分前。引き返す勇気がありませんでした。結果として進捗は生まれず時間切れ。終わったあとに体論も難しかったよと聞いて安心はしましたが、元々体論を得意としていたはずなのに、なぜ裏切ってしまったんだろうと後悔の念が拭えませんでした。
 このような感じで、体感は散々でしたが、まわりの東大から受けにきている友人たちも同じような感想の人が多かったので、ひとまずは落ち着きました。しかし口頭試問の通過発表はとても不安で、発表の時間も遅くなることが分かっていたので、彼女の提案で鶯谷のホテルで気を紛らわしていました。この日8/17は彼女の誕生日であり、ずっと不安定で何も用意できていなかった自分に、会えるだけで嬉しいよと言って支えていただいた彼女には、本当に頭が上がりません。結果としては僕含め、友人のほとんどが通っていて、時間も固められていたため、とても安心しました。家に帰り、みんなで夜に解き直しを行い、翌日面接に向かいました。
 口頭試問は口外禁止だった気がするので、内容は言いませんが、本当に一瞬で終わり驚きました。流石にこれで落とされたら意味が分からないだろうと思い、ひとまず心が落ち着きました。

6.東大院試(8/26〜8/30)

 直前期でやることがなく、ルービックキューブで遊んでいたら、すごくハマって、気づいたら前日です。最後はもう神頼みだろとなり、代々木八幡宮に行きました。人も少なく、大学からも少し歩くので、気晴らしにちょうどよいです。なんか縁起がいいような気にもなるので、とてもオススメです。
 本番はやはり上手く行きませんね。東工大よりはマシだったものの、A問題は難しく感じ、あまり解けませんでした。必答の解析の問題は上手く評価ができず。選択も、簡単ではあるが久しぶりにやった複素解析の計算は、cosθ=e^{iθ}+e^{-iθ}としてしまったことで変な結果が出てしまい、なんど見直しても気づけないまま、明らかに間違っているが提出。もう1つの選択も微分方程式を粘ったが上手い変形が降ってこず終了。1日目が終わったあとは、前年度の開示得点分布を見て、A問題の寄与が明らかに低いことを確認し、明日以降が勝負だ、と、強く心を落ち着かせて散歩をしていました。
 2日目のB問題はまあまあの出来でした。2問目の環論なのか整数なのかよく分からない問題が、かなり簡単で落ち着いたこと、Galois理論の問題ではここが肝かな?みたいなところに気づけたこと、1問目の群論も多少手は出せたし、悪くはないという感じです。
 口頭試問通過発表は、東工大よりは緊張はしていませんでしたが、それでも直前30分は全身の体温が冷えきっていました。数理棟で見た人もいたらしいですが、そのようなことができる精神状態ではなかったです。また、東工大と異なるところは、この通過発表が合格を意味することでは全くないということも大きいです。実際昨年の代数系は、口頭試問で半分ほど落とされています。ゆえに、ここからがまだ勝負という感じがあり、あまり合否によってマイナスな気持ちが変わるわけでもないと思っていました。
 口頭試問は口外禁止なので詳しくは書けませんが、上手く行きました。これで落とされたらよく分からないなぁと思い、しかし完全無欠という訳でもないので、しばらく不安な日々を過ごすことになりました。受かって喜ぶ夢も、不合格で落ち込む夢も、どちらも繰り返して見ました。夜が嫌になる、長い長い2週間でした。

7.総括

 院試はクソです!なにより東大数理以外の人と仲が悪くなる危険性すらあります。自分の精神が不安定になることで、他人への攻撃性が増してしまう自分にとても嫌な気持ちになりました。やっぱり人生余裕を持って生きていきたいものですね。趣味で作った折り紙が高値で売れて、生計を立てていけないかな、、、。

開示(Aと英語低すぎ!)

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