ニューコンセンサス理論への批判

ニューケインジアンらの、ニューコンセンサス理論でも「利子率外生、貨幣供給内生」の見解を採用しており、ポストケインズ経済学の内生的貨幣供給理論とは似ているようであるが、自然利子率の考え方の相違、インフレーションの想定(デマンドプルインフレかコストプッシュインフレか)、また、物価の安定を図る上での財政政策、所得政策の政策割り当て、金融政策の目標の相違(物価の安定なのか金融システムの安定なのか)などの点が異なっていると考えられています。こうした論点から、ニューコンセンサス理論についてポストケインズ経済学の視点から批判をしてください。

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ニューコンセンサス理論(New Consensus Macroeconomics, NCM)は、主流派経済学の中で広く受け入れられているマクロ経済政策フレームワークですが、その特徴的な見解はポストケインズ経済学(Post-Keynesian Economics, PKE)の視点からいくつかの批判を受けています。以下に主要な論点を整理し、批判を展開します。


1. 自然利子率の仮定

NCMは、自然利子率(natural rate of interest)という概念を基盤とし、中央銀行の政策金利がこの自然利子率と一致することで経済が均衡に達すると仮定します。しかし、PKEの視点では、自然利子率という考え方そのものが批判されています。理由は以下の通りです。

  • 概念の曖昧性: 自然利子率は観測不可能であり、理論的にのみ導入されるものです。このような測定不能な変数に基づいて政策を設計することの妥当性が疑問視されます。

  • 内生的貨幣供給との整合性: PKEは貨幣供給が内生的であり、金利は政策的に決定されると考えます。市場均衡として自然利子率が存在するという考えは内生的貨幣理論と矛盾します。

  • 歴史的・制度的条件の無視: NCMの自然利子率は時間と空間を超越した普遍的な存在として扱われますが、PKEは金利が制度的・歴史的要因に強く依存することを主張します。


2. インフレーションのメカニズム

NCMは主にデマンドプル型のインフレーションに焦点を当て、失業率が自然失業率を下回ると賃金が上昇し、それが物価上昇につながると考えます。一方、PKEはコストプッシュ型インフレーションの重要性を強調します。

  • 賃金-物価スパイラルの強調: PKEは労働者の賃金要求と企業の価格設定が相互に影響を与える中で、コストプッシュインフレが生じることを重視します。特に、原材料価格の上昇や為替変動、供給側のショックが重要な要因となります。

  • 需要管理の限界: NCMが利上げを通じた需要抑制でインフレを管理しようとするのに対し、PKEはこれが供給側の要因を無視していると批判します。その結果、過度な金融引き締めが失業の増加を引き起こす可能性を指摘します。


3. 政策の割り当て

NCMは主に金融政策を物価安定に、財政政策を経済成長と雇用の安定に割り当てる一方で、PKEはこれを以下のように批判します。

  • 財政政策の過小評価: NCMでは、財政政策の役割がしばしば軽視され、金融政策に過度に依存する傾向があります。PKEは、特に低金利環境や流動性の罠の状況下では、財政政策が需要管理の主要なツールであるべきと主張します。

  • 所得政策の軽視: PKEは、インフレを抑制するために所得政策(例: 賃金交渉の管理や価格設定の調整)が重要であるとしますが、NCMはこれをほとんど考慮していません。


4. 金融政策の目標

NCMは金融政策の主たる目標を物価安定とし、金融システムの安定性は二次的な課題として扱います。これに対し、PKEは以下の点で異議を唱えます。

  • 金融システムの脆弱性: PKEは、現代の金融システムが不安定性を内包しており、その管理が金融政策の中心課題であるべきと考えます。2008年の金融危機は、この視点の妥当性を示しています。

  • インフレターゲットの限界: インフレターゲット政策は、供給ショックやコストプッシュ型インフレに対して効果が限定的であるため、PKEは金融政策の目標をより広範な経済安定(例: 雇用最大化、金融安定)に設定するべきと提案します。


結論

ニューコンセンサス理論は、理論的な簡潔さと政策実践の適用性を追求していますが、その背後にある仮定は現実経済の複雑性を過度に単純化しているとPKEは批判します。特に、自然利子率の概念、インフレのメカニズムに関する見解、政策割り当て、金融政策の目標設定などの点で、NCMは現実的かつ包括的な政策フレームワークとしての妥当性に欠けているといえます。PKEの視点からは、これらの問題を修正し、より現実に即した政策設計が必要であると主張されます。

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