詩編3章/わたしを苦しめる者
前提として、詩編3章はおそらく名もなき個人が作成した詩をダビデ王に捧げたもの。
または、編集の過程でその作者がダビデに帰されたものである。
テクスト通りに読んだ場合でも、歴史背景を念頭に置いて読んだ場合でも、この詩編の"わたしを苦しめる者"は単に自分の敵である人間のことを指す。
この詩はまさに私たちの内心の惨めさについて嘆く。
神に従おうとする意志はあれど、それは歯向かう者たちに取り囲まれている。
善さに向かおうとする思いはあれど、それは藁のように弱々しいものでしかない。
人間は善に向かう際、途方もなく無力である。
向かおうと決意したところで、その決意は、他の誰でもないわたしの心の中で、あらゆる敵に取り囲まれる。
そのような我々が、仮に顔を天に向けるような生き方ができるとするならば、それは恩寵のめぐみ無しには不可能ではないか。