列王記下13章/契約のゆえに

アラムの王ハザエルはヨアハズの生きている間、絶えずイスラエルに圧迫を加えた。
しかし、主はアブラハム、イサク、ヤコブと結んだ契約のゆえに、彼らを恵み、憐れみ、御顔を向け、彼らを滅ぼそうとはされず、今に至るまで、御前から捨てることはなさらなかった。

列王記下 13:22-23 新共同訳

契約とは何だろうか。
個々のキリスト者やさまざまな教会がどう考えていようとも、聖書自体は契約を非常に重視する。
聖書自体が旧約聖書と新約聖書に大別されることからもそれは明らかである。

その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。
「あなたの子孫にこの土地を与える。
エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」

創世記 15:18-21 新共同訳

一般的には不評な契約である。
「このような記述があるために、ユダヤ人国家である現代イスラエルはアラブ人のパレスチナを侵略している」
と批判されがちである。
ちなみに、ユダヤ人もアラブ人もアブラハムを先祖と自己認識しているので、両者ともにこの契約の対象者である。

旧約の契約とは要は土地の契約だろうか。
土地をどうするかという相続権の問題が神と人の契約の主問題だろうか。

主はアブラムに言われた。
「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい。
わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し、あなたの名を高める 祝福の源となるように。
あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。
地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」

創世記 12:1-3 新共同訳

一神教の祖、アブラハムと神との契約の骨子は彼の"子孫"というパン種により全人類が祝福に入るということではないか。

「『我々の父はアブラハムだ』などと思ってもみるな。言っておくが、神はこんな石からでも、アブラハムの子たちを造り出すことがおできになる。」

マタイによる福音書 3:9 新共同訳

「『アブラハム、イサク、ヤコブと結んだ契約のゆえに、彼らを恵み、憐れ』んだのならば、神の憐れみの対象者はあくまでも契約を結んだ人間に限定されるのではないのか。
だとするならば、それは普遍的な"神"なのか」と、批判できるかもしれない。

王と大臣たちの名によって布告を出し、ニネベに断食を命じた。
「人も家畜も、牛、羊に至るまで、何一つ食物を口にしてはならない。食べることも、水を飲むことも禁ずる。
人も家畜も粗布をまとい、ひたすら神に祈願せよ。
おのおの悪の道を離れ、その手から不法を捨てよ。
そうすれば神が思い直されて激しい怒りを静め、我々は滅びを免れるかもしれない。」
神は彼らの業、彼らが悪の道を離れたことを御覧になり、思い直され、宣告した災いをくだすのをやめられた。

ヨナ書 3:7-10 新共同訳

このヨナ書に対してもこう批判できるかもしれない。
「確かに旧約の小預言書、ヨナ書の主題は『神の憐れみは異教徒にも及ぶ』だろう。
しかし、だとするならば契約概念は一体どうなったのか。
契約せずとも憐れみが及ぶならば契約なぞ不要ではないのか」と。

それから、イエスはパンを取り、感謝の祈りを唱えて、それを裂き、使徒たちに与えて言われた。
「これは、あなたがたのために与えられるわたしの体である。
わたしの記念としてこのように行いなさい。」
食事を終えてから、杯も同じようにして言われた。
「この杯は、あなたがたのために流される、わたしの血による新しい契約である。」

ルカによる福音書 22:19-20 新共同訳

最も新しい契約は全人類が対象者であるキリストの契約である。
では、神と人の最も古い契約とは何だろうか。

神はノアと彼の息子たちに言われた。
「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。
あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。
わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」

創世記 9:8-11 新共同訳

神はこのノアとの契約で全人類と契約している。
最も古い契約は全人類と結ばれ、最も新しい契約も全人類と結ばれている。

またノアとの契約では神の憐れみの対象者は人間に限定されていない。
「地の全ての獣」が憐れみの対象である。

神はヨナに言われた。
「お前はとうごまの木のことで怒るが、それは正しいことか。」
彼は言った。
「もちろんです。怒りのあまり死にたいくらいです。」
すると、主はこう言われた。
「お前は、自分で労することも育てることもなく、一夜にして生じ、一夜にして滅びたこのとうごまの木さえ惜しんでいる。
それならば、どうしてわたしが、この大いなる都ニネベを惜しまずにいられるだろうか。
そこには、十二万人以上の右も左もわきまえぬ人間と、無数の家畜がいるのだから。」

ヨナ書 4:9-11 新共同訳

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