マタイ 5:13-16/塩の配置
マタイ、マルコ、ルカは同じ説話やエピソードが多く共観福音書と呼ばれる。
では、同じエピソードはどのように配列され、それぞれの違いを生み出しているのか。
・ルカによる福音書における地の塩のエピソードの配置箇所
ルカによる福音書で地の塩のエピソードが配置されているのは十四章である。
十四章は、先ず冒頭にファリサイ派の議員宅とそこに招かれるイエスという状況の説明が行われ(1節)、ファリサイ派に招かれた客であるキリストは労働が禁じられている安息日に水種を患っている人を癒す(2-6節)。
そして、ファリサイ派の議員に招待されたキリスト・イエスは招待主たちへと"客と招待する者の教訓"を語り、"大宴会"のたとえを語り、弟子の条件を語る(7-33節)。
この招かれた客であるイエスと招待主であるファリサイ派たちを描いた14章は"地の塩"のエピソードで締め括られ(34-35節)、赦しを語る三つのエピソードが記されたルカ15章へと繋がる。
つまり、福音記者ルカは14章末尾に地の塩を配置することにより、聖性を失った塩というメッセージをファリサイ派に向けられたものとして記述する姿勢が濃厚である。
・マタイによる福音書による地の塩のエピソードの配置位置
マタイ書においては地の塩のエピソードは5章に記されている。
いわゆる山上の説教である。
5章冒頭で山で、弟子に向かい話すキリストという状況説明が行われた後(1-2節)、先ず最初に有名な"貧しき者は幸いである"が語られる(3-12節)。
そしてその直後に地の塩のエピソードが配置されている。
つまり福音記者マタイは地の塩のエピソードを明確にキリストの弟子である人々に対して向けられたものとして記述する姿勢が濃厚である。