歴代誌上1章/我々の名前の起源
ヤワンの子らは、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニム。
ハムの子らは、クシュ、エジプト、プト、カナン。
歴代誌は系図が頻出する。
そこには先程引用したようにタルシシュ(地名)、クシュ(スーダン)、エジプト(そのままエジプト)、カナン(地名)などが系図に、つまりアダムから始まる個人の名前として記されている。
歴代誌記者、および創世記記者にとって系図は民族、地名、人種、都市の起源神話の側面も持つのだろうが
土地の名前が先にあり、そこから人の名前が名付けられるのではなく
概念的には個人の名前が先に在り、そこから地域名、民族名、人種の名、都市名が名付けられたのだと観念されるものなのだろう。
現代人が考えた場合、通常は
「任意の地名、都市名に住むから、それにちなんだ人々を指す集合名詞でその人たちを呼ぶんだ」と考える。
が、聖書の系図記者は逆で
「唯一の人間の起源であるアダムから始まる個人の誰かが住んだから、それにちなんだ名前で都市や地域が呼ばれるんだ。」という説明を行う。
神は唯一であり、人間の起源も唯一だとすると、このような認知の手順の方がむしろ当たり前なのかもしれない。
起源神話により物事を説明する際、概念、都市、地域等を個人として現す語りはギリシア神話でも行われていたわけで
こういった認知の仕方が人間としては素朴なものであり、現代人はかなりひっくり返った認知の仕方をしているのかもしれない。