・サムエル記内における本章の意味
本章開始時点でダビデ家と敵対するサウル家の王位継承権を持つのは現当主イシュ・ボシェトだけである。
サウル家のもう一人の男子、メフィボシェトは足が不自由であり(サムエル記下 4:4)古代オリエントの伝統に則り継承権を保有しない。
サウル家は有力な将軍であり、家内の実権を握っていた(サムエル記下 3:6)アブネルが前章においてダビデ家に寝返った末に暗殺され、本章で前述の現当主イシュ・ボシェトを失う。
これによりサウル家は崩壊し、次章においてダビデ家が統一イスラエルの君主となる。
ここにサウル家とダビデ家の王位を巡る戦いは終結する。
・復讐について
サムエル記上においてダビデが自分の命を狙うサウル王を赦す二つの並行エピソードがある。
それぞれのエピソードでダビデは
と語る。
ダビデはサウル王の死にも、彼の王位を継承したイシュ・ボシェトの暗殺にも関与はしなかったと聖書には記されているが、ダビデの赦しの態度はロマ書においてパウロが説いたそれに近しいように思える。
ではキリスト者における最も完全な敵とわたしの間の態度はこのようなものか?というと無論そのようなことはない。
それはやはり、山上の説教でイエスが説いたものであろう。
ただ、言うまでもなくこの「完全な者」の生き方は途方もなく難しい。