聖書には繰り返し語られる類型のエピソードがある。
その一つが
①圧倒的に強大なものが
②その力を頼りに聖なるものを侮辱するが
③聖なるものは勝利する
という類型である。
・本章
本章は前章に引き続き、強大な帝国であるアッシリアが弱小国、南ユダ王国を攻め滅ぼそうとしている状況である。
アッシリア王は南ユダ王国とその唯一の神を侮辱し、このような手紙を送る。
しかしながら、この手紙の送り主、センナケリブはエルサレムと南ユダ王国を滅ぼせず、それどころか彼は自分の親族に殺害される。
つまり、エルサレムは救われる。
・マカバイ記
本章の後のイスラエルの歴史を記したものにマカバイ記がある。
マカバイ記はアレクサンドロス大王の後継国家の一つ、セレウコス朝シリアからイスラエル人が政治的宗教的自由を取り戻す過程が、信仰者の視点から書かれている。
ユダヤ人たちの独立闘争を鎮圧するためにセレウコス朝シリアが派遣した将軍、ニカノルは主に捧げられた神殿を侮辱するが、
彼は戦いの中で死ぬ。
この戦いの前に、マカバイと呼ばれたユダが唯一の神に捧げる祈り(前述引用箇所)の中で、本章35節が引用されている。
・キリスト
キリストの死と復活はどうであろうか。
彼もアッシリア帝国やアレクサンドロス大王に匹敵するような大帝国、ローマ帝国に捉えられ、侮辱されるが、その"神殿"は復活する。