列王記下19章/聖なるものを侮辱してはならない

聖書には繰り返し語られる類型のエピソードがある。

その一つが
①圧倒的に強大なものが
②その力を頼りに聖なるものを侮辱するが
③聖なるものは勝利する
という類型である。

・本章

本章は前章に引き続き、強大な帝国であるアッシリアが弱小国、南ユダ王国を攻め滅ぼそうとしている状況である。

アッシリア王は南ユダ王国とその唯一の神を侮辱し、このような手紙を送る。

「ユダの王ヒゼキヤにこう言え。
お前が依り頼んでいる神にだまされ、エルサレムはアッシリアの王の手に渡されることはないと思ってはならない。
お前はアッシリアの王たちが、すべての国々を滅ぼし去るために行ったことを聞いているであろう。
それでも、お前だけが救い出されると言うのか。
わたしの先祖たちはゴザン、ハラン、レツェフおよびテラサルにいたエデンの人々を打ち滅ぼしたが、これらの諸国の神々は彼らを救いえたであろうか。
ハマトの王、アルパドの王、セファルワイムの町の王、ヘナやイワの王はどこに行ったのか。」‬

‭‭列王記下‬ ‭19‬:‭10‬-‭13‬ 新共同訳

しかしながら、この手紙の送り主、センナケリブはエルサレムと南ユダ王国を滅ぼせず、それどころか彼は自分の親族に殺害される。

つまり、エルサレムは救われる。

その夜、主の御使いが現れ、アッシリアの陣営で十八万五千人を撃った。
朝早く起きてみると、彼らは皆死体となっていた。
アッシリアの王センナケリブは、そこをたって帰って行き、ニネベに落ち着いた。
彼が自分の神ニスロクの神殿で礼拝しているときに、アドラメレクとサルエツェルが彼を剣にかけて殺した。
彼らはアララトの地に逃亡し、センナケリブに代わってその子エサル・ハドンが王となった。

‭‭列王記下‬ ‭19‬:‭35‬-‭37‬ 新共同訳

・マカバイ記

本章の後のイスラエルの歴史を記したものにマカバイ記がある。

マカバイ記はアレクサンドロス大王の後継国家の一つ、セレウコス朝シリアからイスラエル人が政治的宗教的自由を取り戻す過程が、信仰者の視点から書かれている。

ユダヤ人たちの独立闘争を鎮圧するためにセレウコス朝シリアが派遣した将軍、ニカノルは主に捧げられた神殿を侮辱するが、

しかしニカノルは、彼らを鼻であしらい、嘲笑し、罵倒し、傲慢な口を利いた。
彼は興奮し、誓って言った。
「もし、ユダとその軍勢を、今すぐにもわたしの手に渡さないなら、無事に帰還した暁には、この神殿を焼き払ってやる。」こうして彼は、激昂して出て行った。

‭‭マカバイ記 一‬ ‭7‬:‭34‬-‭35‬ 新共同訳

彼は戦いの中で死ぬ。

さて、ニカノルはエルサレムを出て行き、ベト・ホロンに陣を敷き、そこにシリア軍も合流した。
ユダも三千人の部隊をもってアダサに陣を敷き、祈って言った。
「かつて王から派遣された者たちが、冒瀆行為を行ったとき、御使いが現れ、彼らのうち十八万五千人を打ち倒しました。
そのように、今日、わたしたちの目の前の軍勢を粉砕し、生き残った者たちに、ニカノルがあなたの聖所をあしざまにののしったことを知らせ、彼をその悪行に従って裁いてください。」
アダルの月の十三日に両陣営は戦いを交え、ニカノル軍は打ち破られ、ニカノル自身がこの戦闘で真っ先に倒れた。‬

‭‭マカバイ記 一‬ ‭7‬:‭39‬-‭43‬ 新共同訳

この戦いの前に、マカバイと呼ばれたユダが唯一の神に捧げる祈り(前述引用箇所)の中で、本章35節が引用されている。

・キリスト

イエスは答えて言われた。
「この神殿を壊してみよ。三日で建て直してみせる。」
それでユダヤ人たちは、「この神殿は建てるのに四十六年もかかったのに、あなたは三日で建て直すのか」と言った。
イエスの言われる神殿とは、御自分の体のことだったのである。
イエスが死者の中から復活されたとき、弟子たちは、イエスがこう言われたのを思い出し、聖書とイエスの語られた言葉とを信じた。

ヨハネ 2:19-22 新共同訳

キリストの死と復活はどうであろうか。

彼もアッシリア帝国やアレクサンドロス大王に匹敵するような大帝国、ローマ帝国に捉えられ、侮辱されるが、その"神殿"は復活する。

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