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「うつぼ猿」と世間様

前回は、文楽の演目にある「うつぼ猿」をマンガでお楽しみ頂きました。
今回は、マンガを描きながら感じたことを文章で綴っています。描くことでより見えてきたこと。前回のマンガと合わせてどうぞお楽しみ下さい。

封建時代ならではと思いきや…
よくある?殿様級の無理難題


のどかで良い天気の日、たまたま偶然出会ってしまったために悲劇は起こる。
大名は「天気が良いから出かけよう」と屋敷から外に出ただけ。
猿曳は「天気が良いから祈祷にまわろう」とそこに来ただけ。

偶然の出会いに大名の欲がからんであっというまに悲劇がはじまる。
今日の天気が雨だったら、その道を通らなかったら、きっと悲劇は起こらなかった。

小猿の頃から可愛がって育ててきた猿を、自分の手で殺さなければいけない悲劇。
大名、天気がいいからと外に出て、大きな立派な猿がいるからといっていきなり「猿の皮が欲しい」は無いだろう。野遊びはどうした?外に出た目的は野遊びだったろう?しかも「皮を貸せ」ってなんだ?

よくもまあ、そんな無理難題をふっかけるなあ!って、みなさんも思いますよね。
でも、世の中には「え、そんな要求するなんて信じられない」っていう状況になることってありますよね。相手には何を言っても通じないし、「そんなの無理です」と言うと、怒り出すんですよ。

ああ、逆らえないピンチ地獄!
どうしてこの道を通ってしまったのか猿曳よ!

こういう時、人間に気づきを与えて救ってくれるのは、いつも「自然」なんです。
お猿さんは「杖をふりあげたら船をこぐ真似をするんだよ」と教えてもらったとおりに自然にやっただけ…。その無垢な自然の姿が、人の心に揺さぶりをかける。
自然の力でお猿さん、ピンチ地獄から主人を救うの巻。

けれどもお猿に一番救ってもらえたのは大名。
お礼におめでたい歌と踊りを踊ってご祈祷してもらえてるし(きっとこれ無料でやってくれてるんだよね。)
ハッ、まさか大名、最初からこれが目的で無理難題を言い出したのでは…?
というより、この大名は、目の前で起きたことに、いつも気を取られるタイプなんですね。最後は猿と一緒に楽しく踊ってますものね。

そーゆータイプの人が、人を振り回すのかもしれないですねえ。

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【細川貂々・プロフィール】
1969年生まれ。セツ・モードセミナー出身。漫画家・イラストレーター。1996年漫画家デビュー。パートナーの闘病を描いたコミックエッセイ『ツレがうつになりまして』『イグアナの嫁』シリーズ(幻冬舎)は映画化、ドラマ化もされた著作。男親中心の育児を描いた『ツレパパ』シリーズ(朝日新聞出版)、上方落語や宝塚歌劇が好きで、それらについての著作もある。精神科医の水島広子先生との共著『それでいい。』シリーズ。近著は『生きづらいでしたか?私の苦労と付き合う当事者研究入門』を上梓している。
https://www.hosoten.com/


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