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常磐、うつろう楽しみを

朝起きると、冬の香りがするようになってきたこの頃。
皆さんは冬の朝、お好きですか?

眠いながらもこの香りがハッとして大好きな
絵本作家まつしたゆうりです。

二十四節気では「小雪(しょうせつ)」、
七十二候は次候の「朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)」
になりました。

街路樹も色付き、足元の葉の音が賑やかな季節、
12月2日からは末候の「橘始黄(たちばな はじめて きばむ)」
になります。

色付く木の実

ゆうりちゃん1

そう、この頃からやっと、柑橘類が黄色くなり出すのです…!
皆さん、ご存知でしたか?

今年はじめてお迎えした柚子の木。
夏頃から青い実を付けているのに
「ちっとも黄色くならない…」と心配していたのですが
ここ数週間、寒くなるごとに
慌ててて黄色みを増しており。

普段なにげなく目にし、口にしている食材でも、
育ててみないと気付かないもの!

「知っている」と思っているものほど
知る余白がたくさんあるのでは?!
と、今回はそんな柑橘類の総称として使われていた
常磐の木、「タチバナ」を掘り下げていきます*

柚子はジャムにするのも美味しいですが
ワタをとり、アク抜きをして煮るのもひと手間。
 
時間のないときはそのまま冷凍して
使うときだけ削るといろんな使い方ができて
とっても便利!
 
煮物やブレンド茶の隠し味、
手作りお菓子のアクセントにも*

みんな大好き、常磐の木

ゆうりちゃん2

常磐(ときわ)とは、「常の岩」。
永久不変ほ岩のように、一年じゅう葉を落とさない
木のことをこう呼びます。

今風に言えば、常緑樹。
シマトネリコ、オリーブ、ミモザアカシア…
お庭のシンボルツリーに使われることが多いですよね。
(ひと昔前なら、松や南天、ツツジあたりかしら。)

万葉集の頃は「橘(タチバナ)」も
庭木として愛用されていました。

日本固有種のニッポンタチバナだけでなく、
柑橘類の総称だったよう。

古事記&日本書紀には
非時香菓(時じくの香の木の実)」の名で登場し
いつも香りのする素敵な木の実、
永遠の命をもたらす霊薬とされています。

京都御所紫宸殿に「右近の橘、左近の桜」として
植えられているのも有名ですよね。
(お雛様の飾りも、この配置です)

橘の歌

ゆうりちゃん3

私のイチオシ歌集、万葉集でも
橘はたくさん詠まれています。

初夏に「ホトトギスの好む木」として
詠まれることが多いのですが、
「常磐であること」を褒める、言祝ぎのような
素敵なお歌もあります!

橘は 花にも実にも 見つれども
 いや時じくに なほし見が欲し
 
(訳)橘は、花も実も見るけれど、見ていたいけれど、
   葉だけの時もずっと、ますます見ていたい!

初夏に花の咲き、冬の寒い時にも黄色く丸い実を付け、
冬枯れの景色の中でも
青々とした葉を輝かせてくれる。

今より世界の断りがぼんやりとして
不確定なことが多い世界、
1年を通して変わらないものが
どれほど素晴らしく、心強いものとして
目に映ったのかしら…と思うのです!

そう、初めて行った海外旅行先の香港、
どのお店に入ったらいい分からぬなか、
見慣れたセ○ンイ○ブンの看板が
どれほどほっとし、頼もしく見えたか…!!(笑)

見慣れないもの、常と違うものに囲まれたとき、
「常のもの」がどれほど有難いかを実感します。

「ずっとこのまま変わらなければいいのに」
と思うこと、
「楽しい」や「幸せ」を感じる時も
「ありえない」と知りつつも、願ってしまいますよね。

変わらないもの、変わるもの

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「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉を
ご存知でしょうか。

変わらないもののなかに、
変化するものを取り入れていくことで
“変わらない”で在り続けられる。

という、「んん?!今どっち?」となりそうですが
「確かにそうだなあ〜」と思うことが有り有りで
大好きな言葉のひとつです。

「同じ」であるために
「変わり続ける」こと。

お庭の常緑樹を見ていても
ずっと同じ葉を付けているようで、
古い葉を落としながら
新しい葉を芽吹いている。

よく見ていないと気付かないくらいの、
微妙な新陳代謝を繰り返しているんですよね。

そうして少しずつ、
枝葉を増やし、幹が太くなる。

同じ葉を付けていては
次の葉は芽吹かないし、
枝を間引いていかないと
栄養や日差しが足りなくなり
上手く果実も実らない。

人もこの常磐の代謝と同じで、
劇的に変わるというより
毎日、少しずつの変化を繰り返すことで、
常に新しい自分を生み出し
「常磐の木」のように
ずっと輝いていられるのかもしれないな
と思うのです。

自身の輝きが
誰かの常磐の光になるよう。

今日も青々と
あなたの緑の葉を、繁らせられますように。

ゆうりちゃん5

落葉のコーデ、常緑のコーデ

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ゆうりちゃん7

同じ着物でも
季節によって変化していく、
これもまた「不易流行」かなと思いつつ*

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ゆうりさん

【まつしたゆうり・プロフィール】
絵本作家・イラストレーター。
「心をつなぐ、扉を描く」ことを大切に、ここではないどこかへ、心をつなげる絵を描いています。
滋賀出身、大阪在住。大阪芸術大学デザイン学科卒。
植物と日々着物暮らし、鳥は愛でるのも食べるのも好き。
 
2021年【出版予定】
● 絵本『イナバのしろうさぎ』(よはく舎)
 古事記に登場する物語を、新しい視点と解釈で描きます。
● 書籍『大伴家持くんの本』(河出書房新社)
 万葉集の面白さ家持くんの良さを、ゆるっと楽しくお届けします。

古典文学を今の感覚で、分かりやすく楽しく伝える活動も。
▶共著『よみたい万葉集』(第5刷)
▶インスタライブ「万葉週話」毎週土曜AM11:00〜
(アーカイブはインスタアカウントから無料で観れます)yuuli_illust

WEBで絵本が読めます▼

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