大台ケ原で車中泊
やってみたかった車中泊の旅へ
期待の絶景は…まさかの断崖絶壁
こんにちは、イラストレーターの北村ハルコです。
第六回は、この夏、大台ケ原で車中泊をした時の話です。
旅行に行きたい、ならば山はどうだ?と考えた私たち夫婦。
一度車中泊をしてみたかったんです。
我が家の車は普通車で、天井が高くないし車中泊できるのかと、半信半疑だったので調べてみることにしました。すると後部座席を倒すとフラットになることがわかり、実際に寝てみました。背の小さな私たち夫婦はギリギリ寝られるとわかったので即決しました。
選んだのは大台ケ原。標高約1500メートルの頂上付近に駐車場があります。ここなら、夏でも夜間は寒いぐらいらしいので、車内でも眠れるのではと考えました。そして、コツコツと準備を始めました。
まずは暑さ対策。夜は涼しいとは聞いているものの、夜になるまではやはり暑そうだったので、車の窓を開けたままにできる窓のシェードと、充電式の小さな扇風機を買いました。ホームセンターで比較的安価で売っていました。
続いては、見えないようにガードするもの。寝ているときに覗かれるのはこわいし、着替えの時に困るというので、窓を覆うカーテンと車内が見えなくなるついたてのようなものを購入。こちらは百均で揃いました。
最後は車内が散らからない対策。引っ掛けられるところを探してフックを付けました。ここに、ゴミ入れ、ティッシュなどを掛けました。
他は手持ちのバーベキュー用のミニテーブル、寝袋をマットレスとして使用、枕、タオルケット。
自炊は禁止されているので、出来合いのものを買い、クーラーバッグに詰めました。冷凍したペットボトルを保冷剤替わりにします。食器類はラップをかけて、一度使うたびにラップを捨てる方法で対応。スプーン、フォークも持っていきました。ちょっとした生活排水を捨てられるバケツと、スプーン、フォーク、歯ブラシなどを洗うようにペットボトルの水も用意。
大台ケ原は奈良県と三重県にまがたる一帯で、ピークは標高1695メートルの日出ヶ岳。降水量が多いことでも有名で、ふもとで晴れていても登ってみたら雨ということもよくあるそう。
出発当日。太陽が輝く晴天。またも早朝起床です。三連休だったこともあり混雑は避けられず先を急ぎます。奈良の市街地から吉野川沿いの道を進むと、みるみるうちに人家が減っていきます。前方にはレジャー用品を積んだ車が二台走っていました。
その二台が大台ケ原に行くと錯覚してついていったら、道を間違えて長いトンネルに入ってしまいました。ずいぶんと引き返すと、大台ケ原山への道がありました。登り初めの道が狭く、対向車とすれ違うのがやっとだったのでゆっくり進みました。
坂道を進むこと30分あまり。頂上付近は晴れていました。
駐車場にはギリギリ駐車できました。ここで満車だとかなり遠くに止めなくてはなりません。九時過ぎ、物産店とビジターセンターで資料を集め登山道に向かいます。初心者コースのようだし、二~三時間ですぐ戻れると思ったので、食べ物はお菓子のみでした。木々の間を行く登山道は楽に歩け、鳥好きの私たちはバードウォッチングをしながらゆっくり進みます。日出ヶ岳では尾鷲市内も海も見えました。
そこから、有名な立ち枯れした木のあるエリアへ。むき出しの白い枯れ木が付き出て下には笹が生え、独特の世界が広がります。
東側は海が、西側は紀伊山地がよく見え、標高の高いところにきたんだと実感。この辺りでは太陽が照り付けて、暑さがこたえます。一刻も早く日影に逃げ込みたい衝動にかられつつ、景色がいいらしい大蛇嵓(ダイジャグラ)へ向かいます。それまでの整備された登山道と勝手が違い、徐々に道が細くなり、右手は断崖絶壁になっていることを察知しました。
まだ先に行くのかあ、と思いながら慎重に進むと、前方と左右が断崖絶壁になっている場所にたどり着きました。ここが大蛇嵓でした。
いやだ、もう逃げたい~という心の声に勝てません。到着された皆さんが次々先端に行っていましたが、足がすくんでだいぶ後ろの方で写真を撮るだけにしました。その後は、登山道でコマドリの姿も見られました。
駐車場に戻ったのは三時前。食堂が閉まる前に店に急ぎます。のどかな食堂でいい感じです。夫はイノシシ肉のカレー、私はイノシシの肉を使ったうどんを食べました。ビールが最高。
夕方になり日帰りの人たちが少しづつ減り、車中泊の準備を開始。車の後部座席は出発前に倒してフラットな状態にしておいたので、そこにバーベキュー用のテーブルをおいて持ってきたお惣菜で夕食。
いよいよ日が落ちて、星が見えるのを待ちます。とはいえこの日は満月に近く、夜空が明るいので天の川までは見えず。設定しておいたカメラで星空の写真を撮ってみます。おお、一応無数の星が写っている!と興奮気味。翌朝はあわよくばご来光を見たいので、さっさと寝ます。でも、なかなか寝付けずウトウトして夜中に目覚めると、星が一つも見えないどころか、すぐ先も真っ白で見えません。いやな予感だなと思いつつも仕方ありません。
四時過ぎ、周囲が起き出していました。みんなは日出ヶ岳まで行くのだとわかり着替え開始。もたもたしているうちにどんどん日の出の時刻がせまり焦ります。霧の中ヘッドライトを頭につけて、防水の上着を着て早歩き。これが応えました。しんどかったのなんの。
日出ヶ岳霧の中にオレンジ色の光が見えました。もちろん視界不良でそれはそれで幻想的な風景でした。
朝食後、まだ行っていないシオカラ谷のつり橋に行ってみることにしました。というのも、昨日シオカラ谷から駐車場に戻ってくる人がヘトヘトになっていてくたびれ果てて上がってくるのがどうにも気になっていたのです。
結果は、とても良いところでした。コマドリのさえずりが響き、いかにも高原という感じでした。谷を降りていったところに小さなつり橋がありました。
川にも降りられたので、水に触ってみたら冷たくて気持ちがよかったです。その後は、超スローペースで登りました。登山道に落ちていたナツツバキがとてもきれいでした。
【北村ハルコ・プロフィール】
○兵庫県西宮市在住。静岡県浜松市出身。
子どもの誕生後、デザインを学び始める。
メーカーでのデザイン職を10年、仕事をつづけながらイラスト塾と絵本塾に通い、雑貨を作り始め関西の雑貨店を中心に活動開始。制作した雑貨が目に留まり、ステーショナリーメーカーのステーショナリーを制作。
その後、イラストを描きたくて2015年よりフリーに。装画塾、デッサン塾などで学びつつ、商談イベント等に出展。現在は、書籍、広告、雑貨イラスト等を描いています。自主制作のZINEを店舗、イベント等で発売中。
〇自然観察とバードウォッチング、旅すること、食べることが好き。
https://kitamuraharuko.jimdofree.com/
↓北村ハルコさんがイラストを担当されています。