春の良さ、秋の良さ
こんにちは。
そろそろ寝間着の浴衣を名残惜しく仕舞いながらも
秋の着物が纏えるのをわくわくしている
絵本作家のまつしたゆうりです。
秋の草花、秋の虫も顔を覗かせ声を聴かせてくれて
すっかり季節が変わってきましたね!
秋に近づくと鈴虫モチーフのものも
付け始められて、絵柄から音を妄想させてくれます*
(聞こえない音を聴く、奥ゆかし!)
絽の羽織裏↓ 背中に見えるお洒落です。
草むらから小さな弦楽器のような音が響く夕べは
見えない闇に、思わず目を凝らしたくなります。
9/23から秋分
秋分は、昼と夜の長さが同じになる
年に2回だけの特別な時。
ここを過ぎると夜の時間の方が長くなり、
寒さが増してゆく切り替えの時。
二十四節気では「秋分」前が「白露」、
後が「寒露」ということ、
朝晩の冷え込みで露が降りてくる季節になります。
(白露からグンッと夜の冷え込みが増し、
うちでは浴衣納めとなりました。)
秋草と露をイメージしたコーディネートも
秋口ならではの装い。
大好きな、淡く渋い色合いが良く似合う季節です*
この日は「秋分の日」として毎年祝日になる日。
「太陽が秋分点を通過する日」なので、
毎年日付を変える&太陽の運行で日付を決める
世界的にみても特殊な祝日だそうです!
(知らなった!!)
太陽が天秤座の位置に移動する日でもありますよね。
天秤座といえばバランス!
いろんな切り替え、体調や心の動きなど
あらわれてくる頃かと思いますので、
ゆるり受け止めつつ、天秤が振れすぎないようにしつつ、
“季節や星のせい”を上手く使いながら
暮らすと良さそう*
食も切り替え
昼と夜の時間の長さが変わる、ということは
陽と陰の比率が反転すること。
夏に陰性のものを取りすぎていると胃腸が弱るので
ちょっと食欲が落ちてきている人もいるかも?!
白米を食べるのがしんどいな〜という人は
サツマイモや栗、蓮根など、デンプン質が多く
陽性の野菜と一緒に炊き込みご飯にすると
少し軽く食べれて、胃腸の調子も整うそう。
残暑を感じつつも、秋の食事に切り替えて
寒さに備えたいところ。
万葉集でも人気の秋
雪も降らないのに寒い冬や
コンクリートが溶けそうなくらい暑い夏に比べ、
春と秋は(花粉やPMに悩む人はお辛いかもですが)
どちらも気候的には過ごしやすくて甲乙つけがたい!
万葉集にも「春と秋、どっちがいい?」と
討論(?)しあった話が載っています。
春と秋、どちらがグッとくるか
男性陣が漢詩で競ったあと、
女性の額田王が歌で判じた、というもの。
「春はこんな風にいいけれど、
秋のこんな良さが私は好き!」
と、春を立てつつ、自分の好みを伝えています。
万葉集 16 額田王
冬ごもり 春さり来(く)れば
鳴かざりし 鳥も来(き)鳴きぬ
咲かざりし 花も咲けれど
山をしみ 入りても取らず
草深(ふか)み 取りても見ず
秋山(あきやま)の 木(こ)の葉を見ては
黄葉(もみち)をば 取りてそしのふ
青きをば 置きてそ歎(なげ)く
そこし恨めし 秋山そ我(あれ)は
(訳)
春が訪れると
今まで鳴かなかった鳥も、来て鳴きます。
咲かなかった花も咲きますが、
山が茂っているので、分け入って取ることもせず、
草が深いので、手に取って見ることもありません。
けれど秋山の木の葉を見ては、
色づいたものを手に取っては愛で、
青いものはそのままにして溜息をつきます。
そこが残念ですが、
秋山こそ、と思います、私は。
「春はここが良いけれど、ここが残念。
秋はここが良いけれど、ここが残念。
でも、私は秋!」
と、双方の良い点、残念な点を比べた上で
「私は」と余白を残しつつ言い切っているのが
角が立たなくて良いですよね。
万葉集の歌上手な女性歌人の2大巨頭のもうひとり大伴坂上郎女ねえさんもですけれど、
歌上手さんって
「相手の気持ちを推し量りつつ
絶妙な距離感と言葉のチョイスで
相手に自分の気持ちを的確に伝えられる人」
だと思うんです。
つまり「歌上手さん」=「話上手さん」
の可能性がめちゃ高いということです!
より多くの人が「いいね」と思う歌には
それだけの人の心に響く魅力、
伝わりやすさ、印象的なワードなど
普段の会話に活きるポイントが隠されているのでは。
名歌に触れると、そんな要素を
少しずつ取り入れられるように思うこの頃です。
春と秋で思い出しました!
擬人化された春と秋が、お手紙の遣り取りをする
お友達の作家さんのが描かれたこちらの絵本、
めちゃオススメです*
■note連載【万葉週話】はじめました*
■インスタライブ「万葉週話」
『万葉集』の季節の歌や万葉小ネタ話、オススメ昔話もお話しています。(無料で聴いていただけます)
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【まつしたゆうり・プロフィール】
絵本作家・イラストレーター。
「心をつなぐ、扉を描く」ことを大切に、ここではないどこかへ、心をつなげる絵を描いています。
滋賀出身、大阪在住。大阪芸術大学デザイン学科卒。
植物と日々着物暮らし、鳥は愛でるのも食べるのも好き。
2021年【出版予定】
● 絵本『イナバのしろうさぎ』(よはく舎)
古事記に登場する物語を、新しい視点と解釈で描きます。
● 書籍『大伴家持くんの本』(河出書房新社)
万葉集の面白さ家持くんの良さを、ゆるっと楽しくお届けします。
古典文学を今の感覚で、分かりやすく楽しく伝える活動も。
▶共著『よみたい万葉集』(第5刷)
▶インスタライブ「万葉週話」毎週土曜AM11:00〜
(アーカイブはインスタアカウントから無料で観れます)yuuli_illust
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