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質疑応答|最上級の theの有無と解釈
質問
今回は、最上級のtheの有無についてです。
つい最近、次の例文を見ました.
“It is hardest of all to understand him when he is excited.”
この例文の対訳は「彼が興奮している時は、彼の言うことを理解するのは至難のわざだ。」となっていました。
ここで、最上級 hardestに対して、theが付いていないというところが気になりました。そして、解釈の仕方として、次の2つが考えられるのではないかと思いました。
①「彼が興奮している時に彼の言うことを理解することは、他の何より(世の中のあらゆる事柄の中で、と言って良いほど)も難しい。」
②「彼が言うことは、(彼の置かれているあらゆる状況の中で)彼が興奮している時が一番難しい。」
②のような解釈になる例文を、『現代英文法講義』p.572で見つけました。
“She works hardest/*the hardest when she's doing something for her family.”(彼女は、家族のために何かしているときが一番精出して働く。)
いわゆる、同一の人や物のある性質を他の性質と比較したものにはtheを付けないというルールだと思うのですが、問題の例文の解釈はどちらになるのでしょうか。
また、『現代英文法講義』には、【形容詞が叙述的に用いられた時には、theの使用は随意的】(p.572)とありましたので、“The lake is the deepest (one) in this district./The lake is deepest at this point.”(p.572)のようにtheの有無によって意味の区別が明確なものもあれば、そうでないものもあるのしょうか。
例えば、同じく「現代英文法講義」(p.572)に、“Ann is (the) youngest (of all).”(アンは(みんなの中で)一番若い。)のような例文もあり、これについては、theの有無に関係なく、アン以外の人物と比較しているとしか解釈できません。
問題の例文の比較対象がどのようになっているのか、そして、最上級のtheの有無によって、必ず解釈がどちらかに特定されるのかどうか、ご回答いただければ嬉しいです。
ガリレオ流・回答
ご質問ありがとうございます。いくつかポイントがあるので、順を追って項目ごとに整理していくことにしましょう。
'hard(est)'の品詞について
まず注意が必要と感じたのは、ご質問の中にある 'hard(est)'の品詞が2つの例文で異なるという点です。
(1) It is hardest of all to understand him when he is excited.
→ hard(est)は形容詞の叙述用法
(2) She works hardest/*the hardest when she's doing something for her family.
→ hard(est)は動詞 workの様態を修飾する副詞
(2)で定冠詞 theの付いた形が非文法的となっているのは、'hard(est)'が副詞である以上、後述する「定冠詞+名詞」となる構造が想定できないから、という説明が可能でしょう。
(補足:ただし副詞の最上級に theをつけると必ず非文になるわけでもなく、(3)のような例もあるので、「通例」theをつけないと言う方がより正確です)
(3) It was Jill who presented her case (the) most effectively.
theに付したカッコはガリレオによる。
比較の根底:文と文の比較
比較構文を理解する際に重要となるのは、①何を基準に・②何と何を比較しているのか?という点です。『実例解説英文法』の第14章「比較構文」の冒頭に、「比較の根底にあるのは文と文の比較」ということが強調されており、(2)から先に検討すると、比較対象は(例えば)以下のようになります:
(2) She works hardest when she's doing something for her family.
↓
(a) She works [x-much hard] when she's doing something for her family.
(b) She works [y-much hard] when she's doing something for herself.
(c) She works [z-much hard] when she's doing something for her friends.
…
比較基準 = 'hard'の度合い:x > y, z, …
最上級が使われている構文の場合、「文と文の比較」への読みほどきが簡単に行かない場合も多いですが、ご質問の中の「同一の人や物のある性質を他の性質と比較したもの」であることは、上のように考えると確認することができます。
それを踏まえると、「theの有無」それ自体は比較対象の解釈を左右するものではありません。同じ 'work hard'という動詞句が用いられていても、次の例文であれば異なる workers間の比較であることが明らかです:
(4) He worked hardest of the workers here.
彼がここの労働者の中で最もよく働きました。
仮に (4)の he = John, the workers = {John, Nancy, Bill}の集合とすると、(4)で行われている比較は(4)'のようになります:
(4)' He worked hardest of the workers here.
↓
(a) John worked [x-much hard].
(b) Nancy worked [y-much hard].
(c) Bill worked [z-much hard].
比較基準 = 'hard'の度合い:x > y, z
以上を踏まえて (1)に戻ると、'of all'の存在から、やはり仮主語 it = [to understand him when he is excited]と、「他のすべて (all)のこと」との間での比較、すなわち対訳の「彼が興奮している時は、彼の言うことを理解するのは至難のわざだ。」あるいは①として挙げてくださった「彼が興奮している時に彼の言うことを理解することは、他の何より(世の中のあらゆる事柄の中で、と言って良いほど)も難しい。」という解釈であろうと判断できます。
最上級の theを下支えする構造
では、一見すると「theの有無」で意味が大きく変わっているような 'The lake is (the) deepest…'の例文はどのように考えれば良いのか?ということですが、
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