お月見の季節のイメージは秋?
日本人なら一度は見聞きしたことがあるお月見。「月を見る」だけなら日時を選べば季節を問わず見ることができます。しかし、お月見が行われる季節はなぜか「秋」のイメージがありませんか?
ネット検索で「お月見 画像」と打ち込むと、ほぼ100%の確率で真ん丸お月様とうさぎ、お月見団子にススキが描かれた画像がヒットします。学校で詳しく習ったわけでもないのに、私たち日本人は無意識に「お月見=秋」というイメージを持っているようです。では、なぜ「お月見=秋」なのでしょうか。
お月見の文化は、日本発祥ではなく9世紀頃(平安時代)に中国から伝わってきたと言われています。その由来となったのが中国の「中秋節」です。中国の中秋節は、3000年ほども歴史がある伝統的な文化で、春節の次に重要視されている祝日でもあります。
文献によると周の時代から「春分に太陽を祭り、夏至に大地を祭り、秋分に月を祭り、冬に空を祭る」という風習があったそうです。この「秋分に月を祭る」行事がやがて庶民に浸透していき、お月見をしながら家族団らんで月餅や秋の実りを楽しむ行事に移り変わっていったと言われています。そして中秋節は今や人気の高い祝日の1つとして中国では親しまれています。
日本に中秋節の文化が伝来した頃は、主に貴族がお月見を楽しんでいました。池に映る月を眺める、借景庭園から月を見上げるなど優雅な催し事として親しまれました。後に庶民へお月見文化が広がると、秋の収穫の時期と重なることから収穫のお祝いの意味も込められて、秋の実りをお供えするようになりました。これが現代につながるお月見に通じているのです。
「お月見=秋」のイメージは歴史に基づいていた季節感覚だったのです。
秋にお月見を行う文化的な由来は分かりました。では、科学的な視点から見ても秋に月を見ることは1年の中でも最も良いタイミングなのでしょうか。
結論から言うと答えは「YES」です。
季節ごとの月を並べて比べることがないので気付きにくいのですが、実は季節によって宙に昇る月の高さ(高度)は異なっています。太陽が季節ごとに南中するときの高度が変わるのと同じ原理で、月も南中高度が季節によって変化しています。月の場合、夏に昇る月が最も高度が低く、冬に昇る月が最も高度が高くなります。春と秋はその中間くらいの高さに昇ってきます。
それを踏まえて、お月見のしやすさを考えてみましょう。夏の低い月は山や建物に隠れやすいですね。一方で、冬の高い月は障害物はないけれど長時間見上げているには首や腰の負担が大きそうです。高さ的には春と秋がちょうど良さそうです。ただ、春は春霞という言葉はあるくらい空気の透明度が良くないので月がぼんやりと見えます。秋は空気の透明度も良く、くっきりと明るいお月様を見ることができそうです。
月の南中高度、気象条件を考慮しても秋のお月見が一番良いタイミングと言えますね。実は、所さんの目がテンという番組で、これと同じ実験をして「お月見は秋が一番良い」ということが証明されています。興味があればその実験内容も読んでみてくださいね。
〇所さんの目がテン 2009年9月19日放送回
※ページ下部のバックナンバーから探せます。
https://www.ntv.co.jp/megaten/archive/link/right_library.html
今年もそろそろお月見シーズンを迎えます。お月様に見立てた丸いお団子を用意して晴れた夜はお月見を楽しんでみませんか。