勝利へ手を尽くす 14節 アトレティコvsアラベス(H) 2024.11.23
代表ウィーク明けにこんにちは。
いつものやつから。
ジュリアーノが追加招集されてペルー戦でA代表デビュー。おめでとう。ちなみに追加招集の原因はモリーナの怪我である。なんでやねん。ヒメメスは2試合フル出場。
バリオスはU21代表でイングランドとの親善試合に前半のみ出場した後、A代表に合流。こちらもA代表デビューした。おめでとう。ちなみにU21ではキャプテンだったらしい。どちらの試合もスペインのホームゲームだったがA代表のスイス戦はカナリア諸島でやったので、それなりの移動距離。
スルロットとギャラガーは1得点。ヘイニウドはネイションズカップ本戦出場を決めた。
首位バルサとは7ポイント差の3位にいるアトレティコは14節ホームでアラベス戦。国王杯2回戦もアウェーのはずなのでこの後3試合アウェーが続く日程。
アラベスは6節まで3勝1分2敗と絶好調だったがその後5連敗。マドリー戦、バルサ戦も含まれているのでそこまで気にするものでもない気がする。マジョルカにホームで勝って連敗を止めたが前節はビジャレアルにボコボコにされた。バルサ戦よりボコボコだった印象。ただこの日のアトレティコ戦を終えれば上位勢との試合は一段落。前回対戦は先季の32節
CLでドルトムントに負けた直後で惨敗した。あまり覚えていない。
●スタメン
・アトレティコ
オブラク
アスピリクエタ / ヴィツェル / ラングレ / ハビ・ガラン
ジョレンテ / バリオス / コケ / リーノ
グリーズマン / コレア
アスピリクエタは9月22日のラージョ戦以来2ヶ月ぶりの復帰。
ジョレンテは10月2日のベンフィカ戦以来の復帰。
オブラクとバリオス以外の代表選手は全員ベンチから。モリーナは負傷欠場。
・アラベス
シベラ
テナグリア / アブカル / モウリーニョ / マヌ・サンチェス
ブランコ / ゲバラ / グリディ
カルロス・ビセンテ / キケ・ガルシア / カルロス・マルティン
アラベスは元アトレティコのマヌ・サンチェス、サンティアゴ・モウリーニョがスタメン。レンタル中のカルロス・マルティンも。
シメオネの700試合目の公式戦指揮。
●前半
開始6分の失点があってもなくても景色はそんなに変わらなかったかもしれないがアトレティコが敵陣でボールを持ち、アラベスは全体で撤退する展開が確定した前半。失点のPKに至った流れはアトレティコが右サイドでボールを奪ったトランジションでコレアがロストし、逆襲を受けた形。避けようがなかったので諦めましょう。グリディが決めた。
アラベスの守備設定は4-5-1から6-3-1で撤退する。これは恐らく先制点とは関係なく準備されていたと考えるのが自然。引いてマイボールにしてビルドアップで進んでいく設定だったはず。
エルモソがいた頃からあまり進歩がないがアトレティコはミドルゾーンに構えられた時に配球者になる両HVの前に人を立てられると前進が止まる。その解決策は主にボールを受け取って走り回るデ・パウルなわけで、それが彼の利点である。
この日はバリオスとグリーズマンをハーフスペースに立たせて大外のジョレンテ&リーノにボールを渡す形を模索。ハビ・ガランがコケの隣とリーノの外側を行ったり来たりしながら、ラストサードではかつてのサウルのようにトップポジションに入っていく仕事をする。当然アトレティコからすると自陣でボールロストをしたり出し所がなくて困るような試合ではないわけだが、問題は撤退したアラベスがかなり堅かった事。
ゲバラはバリオスを、ブランコはグリーズマンを見てCB前のエリアを放棄してどこまでも付いていく。変わりにこのエリアに戻ってくるのはグリディでありカルロス・マルティンだった。この仕事のためにこの日の左SHはコネクニーでもレバッハでもなくカルロス・マルティンだったと見る。
余談だが近年ルイス・ガルシア・プラサ監督は各クラブから若手をレンタルして試合に使い成功を納めている。個人的にその信頼感から、彼が与えたタスクというのは"合格"の判断基準になると見ている。つまりこの日の「CHの対応範囲までプレスバックし、さらにトランジションでカウンターに加わる仕事」においてカルロス・マルティンはプリメーラのレギュラークラスとして"合格"していると言っていい。良かったね。
さてここまで引いて守られるとラストサードの崩しが試合のテーマになる。しかしこの日は代表戦の影響をモロに受けた人選で、いない選手に要求したい仕事が可視化されていく。配置で優位を作り、理屈で攻め立てたが堅められたゴール前にボールを送るならスルロットが必要で、出し所がない展開を打破するならデ・パウルが必要で、グリーズマンがゴール付近でコンビネーションを使うならアルバレスが必要で、無から得点機を作るならジュリアーノが必要だった。それを確認する前半45分だったと言ってもいい。
ただし30分頃からグリーズマンが右大外まで移動したりバリオスが左サイドに行ったりとCHのマークから離れるための工夫はピッチ上で十分に行えていた事は書いておく。特にグリーズマンは左SBマヌ・サンチェスの位置まで移動してそこから真っ直ぐ降りる動きでフリーになってライン間でフリーでボールを受けるなど違いを作った。これもハビ・ガランに左サイドを任せられるからこそできる工夫。アラベスは完全に引きこもる事になったがキケ・ガルシアを狙ったロングボールだけでヴィツェルとラングレを結構困らせていたのはさすがに凄い。
●前半終了
早々にPKで失点し、そこから敵陣でプレーし続けた。得点に至らなかったので課題問題がないとは言わないが、なるようにしてなった展開ではある。というか代表明けを考えればこういうメンバーになるのも当然なのでこんなもんでしょう。
アトレティコが前半に作ったチャンスは全てリーノ絡みだった。14分、ボールを持ったリーノがグリーズマンをマークしているブランコに向かってドリブルする事でグリーズマンを浮かせて裏取り。19分にはスローインからゴール前でごちゃごちゃして最後はリーノが振り抜いたがクロスバー直撃。43分にはようやくジョレンテが右サイドを抉るシーンを作ってリーノの前にクロスが上がってきた。もう一息です。
アラベスは先制して以降もカウンターで一つくらいは得点機を作りたかった。シメオネの頭の中にカウンターのリスクヘッジはほぼ不要で、「誰に何分プレーさせて2点取るか」だけを考えるハーフタイムを迎えている。さて逆襲の後半へ。
●後半
アトレティコは2人交代。
やはりゴール前にスルロットが必要。ジュリアーノの投入が早かったのはスピーディな試合展開から考えてジョレンテに無理させる試合ではなかったという判断かと。とはいえリケルメより先にジュリアーノが選ばれる事が判明した。
アスピリクエタが左に移動したのは恐らく4バックで考えた時にジュリアーノは普通に右SBになるためだが、右HVとしてアスピリクエタが放置されてもあまり良い配球ができなかったのでヴィツェルに変えたかったのかもしれない。あとはハビ・ガランがいなくなってシンプルにカウンター対応をする人数が一人減るのでそのバランスなのかもしれない。ラングレを外側に置きたくないとか。
さてジュリアーノの投入で右大外を深くまで取れるようになり、あとはPA内のクオリティ、という展開に変わる。ジュリアーノの対応をするのはマヌ・サンチェスとカルロス・マルティンだったが、正直彼ら2人にはもうちょっと頑張って欲しかった。ちなみにカルロス・マルティンはジュリアーノと同い年。
アトレティコは59分にアルバレスが出てくる。前半はゴール前がコレア&バリオスだったのがスルロット&アルバレスに変わるんだから相手は堪らないでしょう。5分後にはデ・パウルが出てきた。リーノが交代して左大外を空白にした。バリオスがそっちに移動している。
デ・パウルの良い所はボールを受ける位置、受け方にパターンが存在しない事で、撤退して穴を開けたくないアラベスからすると厄介な存在になった。またマジョルカ戦同様中盤に関与してトランジションを動かすアルバレスがややこしく、69分にはジュリアーノへ決定的なパスを送っている。ジュリアーノは相変わらず胸トラップが上手い。
5枚目の交代でリケルメを投入して完成形に。デ・パウルからジュリアーノとアルバレスに配球する形を作ってさらにヴィツェルがサポート。トライアングルにグリーズマンまで関与してきて打開を狙った。結果論だが単品で左サイドに置くならこの時間帯にリーノが欲しかった気はする。
どうにか対応したいアラベスは人が足りなくなるマヌ・サンチェス周辺に人を増やして守るため、ムサ・ディアラを投入したがかえって中盤の人数が減り、前半放置されていたアスピリクエタがボールを引き出していたエリアでデ・パウルがフリーになり、自由にボールを送り込んでいく。
一度は跳ね返されたがスルロットを狙ったボールを入れ直してアブカルのハンドを誘った。放り込み成功。このPKをグリーズマンが決めて15分残して同点に追いついた。CBを増やした直後の失点はアラベスにとって痛恨。じゃあどうすれば良かったのかと言われても4-4ブロックを保ったままデ・パウルにマンツーマンを用意するくらいしか思い付かないが結果論でしょう。
決着は86分。同じような位置でボールを引き出し続けるデ・パウルにゲバラが対応するが今度はドリブルで突破。
ニアに動き直したスルロットの裏抜けにピタリとスルーパスを届けて右足一閃。ひっくり返した。選手交代を活用した見事な展開変更で今季2度目の逆転勝利。
●試合結果
代表戦明けでメンバーはこうするしかなかった。前半早めの失点は事故であり、その後敵陣のプレーを工夫して選手交代でペースアップ。右サイドでジュリアーノが対人で上回れる事を前提にこのサイドからラッシュをかけてデ・パウル→スルロットの配球でチャンスメイクした。毎試合ここまで上手くいくなら誰も苦労しないが今季の各選手の役割が明確になった90分だったと見て良い。この取り組みの中でアスピリクエタとジョレンテも復帰できた。幸先の良いスタートを切れたので気分良くアウェー3連戦へ向かえる。
アラベスはアトレティコのターンオーバーが予期できていたので前半にもっと攻撃的にいけると良かった。とはいえPKで先制してしまったのでなかなか難しい判断だったのかもしれない。グリディを外す選択肢はなかったのかもしれないが、早めに2トップにされた方がアトレティコは対応が難しくなった気がする。
11/23
リヤドエア・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 アラベス
得点者
【アトレティコ】’76 グリーズマン(PK) ’86 スルロット
【アラベス】’7 グリディ(PK)
●ピックアップ選手
スルロット
引いた相手を崩す作業でPK奪取と逆転ゴール。逆足でニア上はストライカーの証明。
デ・パウル
必要とされてピッチを走り回った。2得点を生んだ右足は今季ベストのパフォーマンス。勝利に対して真っ直ぐだった。
ジュリアーノ
後半から右大外で上下動を繰り返してボールを引き出した。右から崩す形へ変化していったのは彼の功績があってこそ。居場所を失わないためにも継続が大切。
バリオス
仕事の多い試合だったが90分完遂。中盤の中心にいた。お疲れ様。
ヴィツェル
得意な展開ではなかったがキケ・ガルシアの対応とトランジションで相手をぶっ飛ばし続けて敵陣での試合を継続させた。
●myQA
14-1 ブロックを崩す手段として
後半の選手交代で、ブロック崩しの武器が可視化できた。前線にスルロットがいないとサイドから放り込めず、最終ライン6枚のような守り方をされると選択肢がなくなる。見事にスルロットが打開した試合だった。
デ・パウルはボールを受け取って走り回る仕事でアラベス守備陣の目線をズラし、自らのパスでゴールを生んだ。アルバレスはグリーズマンの近くでプレーする事で価値を出し、案外ジュリアーノのサイド打開を助ける仕事もやっていた。
そしてジュリアーノは単品で相手SBを上回り、突破する穴を開ける仕事をした。それをジョレンテには出来ないのかと言われれば悩ましいが、少なくともこの試合のジョレンテには出来なかった。ジュリアーノが必要だった。概ね、今季の起用法が見えてきた気がする。あとは組み合わせ。