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今季の全方向 22節 アトレティコvsマジョルカ(H) 2025.2.1

無事CLリーグフェーズを終えて22節。
対するはマジョルカ。前回対戦。

アルバレスのゴールで1-0勝利。CLパリSG戦の直後でジュリアーノスタメンの形に確信を持ち始めていた時期だね。もはやちょっと懐かしい気もする。なかなかペースを掴めない試合だったがそのジュリアーノの独走からアルバレスの決勝ゴールを生んでいる。ジュリアーノが期待のホープから不可欠な戦力になった試合と位置付けても良いのではないか。

今季は順調に勝ち点を重ねているマジョルカは21節終了時点で6位。前日に22節を終えているラージョに抜けれて現在7位だが、1月は公式戦4試合を全敗。

国王杯3回戦vsポンテベドラ(A) ●0-3
スーペルコパ準決勝vsマドリー ●0-3
20節vsビジャレアル(A) ●0-4
21節vsベティス(H) ●0-1

ついでに無得点。ちなみに今季の9勝は全て1点差勝利なので割と薄氷だったとも言える。さらにアトレティコ戦はパブロ・マフェオが怪我で欠場。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ジョレンテ / ル・ノルマン / ラングレ / ヘイニウド
ジュリアーノ / コケ / バリオス / リーノ
アルバレス / スルロット

デ・パウル出場停止、ハビ・ガランはまだ欠場中。グリーズマンはお休み。スルロットはラリーガのスタメンはなんと10節レガネス戦以来。

・マジョルカ
グレイフ
モレイ / ヴァリエント / ライージョ / コペテ / モヒカ
サム・コスタ / ダニ・ロドリゲス / ダルデル
ラリン / ムリキ

CB3枚。電柱2本。マフェオのいない右サイドはモレイが使われる。


●前半

・ジュリアーノの新タスク
・グリーズマン無しで
・バリオスの責任感

お品書き(久しぶり)

アトレティコは普段との変更点は主にジュリアーノの立ち位置に起因する。

マジョルカは5-3-2。アトレティコは大外を右ジョレンテ、左リーノを基準とした。ジュリアーノは普段の右大外ではなくスルロットの衛星ポジションに入る。アトレティコに戻ってきてから初めてのタスクとなった。

これはグリーズマンがいない環境で選手達の能力を最大化させる視点で、アルバレスの並列に選手を置きたかった意図が強く感じられる。その役割をジュリアーノにやらせたのは新たなる信頼の証。ルマルもやれる仕事でありリケルメも本人が望んでいるタスクだろう。そして中央に基準となるスルロットがいるからこそできる形でもある。グリーズマン以後を考えているとは思えないがグリーズマン無しだったらこういう形、あるいはこういう形ならグリーズマンがいない方が効率が良さそうという形を見つけたのは素晴らしい事。
基本の挙動は右はジョレンテ&ジュリアーノをバリオスがサポート、左はリーノ&アルバレスをヘイニウドが後方サポートする。ヘイニウドが高い位置に行きすぎない事でダニ・ロドリゲスを連れ出す事ができて、その分アルバレスのプレーエリアを確保できた。ヘイニウドは自分がボールに触っている以外のプレーの価値をあまり理解していない感じの選手だがこの日は良い立ち位置をイメージできた。お勉強。
コケが4人目として関与する形は優勝した20-21シーズンに似た形。というかリバイバルなのかも。あのシーズンもグリーズマンいなかったし。そしてスルロットがいる事でゴール前にクロスを上げる選択肢が持てたので幅広い攻撃になっていたように思う。さらにクロスを上げる事で相手が単純なクリアを選んでトランジションを発生させる事ができるのも良かった点。

グリーズマンがいない事で"自分が降りてボールを引き取ろう"という意識を強く持ったのはリーノとアルバレス。特にリーノはザルツブルク戦でたくさん出来た良いプレーをここでも発揮。相手のWB(SB)を引き出して背後のスペースを空けさせた。アスピリクエタに教えてもらった物が出てきた。

アトレティコ最初のチャンスは20分。

リーノが高い位置に出ていくのを見たアルバレスが中盤に留まってコケからボールを引き取り、ドリブルで進出。左へ流れてきたスルロットに渡して、左足を振る得意の形を作り出した。アルバレスのこのムーブはアルゼンチン代表などでよく見る動き。人数関係を把握してアルバレスを追い越していったヘイニウドのランニングも見事。こういう時に案外理屈で動けるのはヘイニウドの強みである。考えすぎな時もあるが。

26分に先制。ムリキのポストプレーをル・ノルマンが引っ掛けてジュリアーノが内側へ独走。一番遠くに走り込んでいたリーノに渡して左足を振り抜いた。見事。ザルツブルク戦でこういうのが決まると変わるのかも、と書いたら早速決めた。このゴールは個人的にお気に入り。ル・ノルマンもボールを奪い切れる強みを存分に出した。足下だったらラリンよりムリキの方が狙いやすい判断もあったと思われる。


マジョルカ側は失点シーン以外はほぼ完璧に対応できていたのは流石の守備力。綺麗な5-3-2。このチームの良い所はやはり蹴っ飛ばせば2トップがどうにかできる事で、この日も守って蹴っ飛ばせば陣地回復できる強みをちゃっかり活かしてアトレティコに連続攻撃をさせないようにしていたのは巧い。ラリンが左サイドに流れてボールを受ける動きも何度か使ったがそうなるとゴール前がムリキしかいなくなるのがなかなか厳しかった。まあこの辺は最近点が取れていない悩みの要因なのでしょう。
2トップにボールが収まるとはいえ、2人で速攻を完結するのはさすがに無理で、遅攻。後ろ3枚で保持するが、おあつらえ向きにアトレティコは攻撃形のまま右からジュリアーノ、スルロット、アルバレスの3人でプレス。

マジョルカは中央のサム・コスタのボールの引き取り方が異常に上手い。普段やらされてる積み重ねが活きている。大外をWBが一人でやるしかない環境は流石に難しかったが、左はジュリアーノが前に出ていってくれる分ダルデルがプレーエリアを確保できた。アトレティコはここにバリオスが対応。バリオスはこの守備タスクを問題なく任せられるのが今季の成長ポイントである。本人もこういう対応に対する責任感が強い。


●前半終了

この日のスタメンでやるべきサッカーができていた。それが非常に好印象。リーノである理由もヘイニウドである理由も、デ・パウルがいないデメリットを消す事も、グリーズマンがいないデメリットを消す事も全てできていた。そのためにジュリアーノのタスクをいじった事もまた良かった。素晴らしい45分。

マジョルカは5バックで構えたがスルロットがスタメンだった時点でその効果は薄くなり、両サイドのトライアングルに押されてトランジションでも捕まった。それにしてもアンカーポジションのサム・コスタは上手かったが。点が取れない悩みを打ち破るようなソリューションをアラサテ監督は準備する事ができるのか。後半へ。


●後半

・突き続ける背後
・秩序のある守備
・消耗戦

お品書き

双方選手交代なしで後半。主な環境は変化なかったが、点を取りたいマジョルカはダルデルが目に見えて守備を放棄し始める。この選手がフル出場が少ないのはこういう所なのかもしれない。ジョレンテ&ジュリアーノのサイドでそれをやり始めると収拾が付かなくなる可能性があるが、確かにラリンがせっかくボールを収めてもサポートの距離が遠くて孤立させてしまっている展開を見ると気持ちはよくわかる。ダルデルの責任感でもあると思うが、アラサテはあんまり好きではなさそうな動き。

アトレティコはアルバレスとジュリアーノを61分で交代。ギャラガーとグリーズマンを入れた。元気なアトレティコは65分に左サイドをヘイニウドが駆け上がり、リーノとアルバレスの対応をさせられ続けてきたヴァリエントが思わず足を掛けてイエロー献上。この日は非常に機能したアトレティコの左サイドだった。その直後は何故かバリオスとル・ノルマンの2人で右サイドを打開しグリーズマンにラストパスを届けるなど。充実しているル・ノルマンはラリンの代わりに出てきた浅野に綺麗に股抜きされて思わず手を出して止めた。このイエローでマドリーダービー欠場となる。ラリンはだいぶ調子が良さそうだったがそれでも動き直しを続ける浅野の方がル・ノルマンの苦手なタイプだな、と思っていたところでまさかカードを貰うとは。

それ以外にも浅野はラリンよりもサイドフローが上手く、ル・ノルマンを引っ張り出してロベルト・ナバーロにスペースを提供。チャンスを作り出していた。浅野の組み込み方は今後マジョルカの議題に上がりそう。

その後は疲労もあってお互いに球際を強調し始めて其処彼処で人が倒れていく。85分にコレアがファールを受けた時は4,5人倒れていた。消耗戦。どうにか守り切ったアトレティコはロスタイム+3分にカウンターからグリーズマンの美しいループシュートで仕上げ。ラリーガでは1月12日オサスナ戦以来の勝利となった。


●試合結果

安心の勝利。この試合の取り組みはアトレティコが今季やっているローテーションと全方向性の一つの答えと位置付ける。良い試合だった。そこに欠かせない選手はジュリアーノ・シメオネだった。誰が想像しただろう。おれもここまでは考えられなかった。凄い選手だ。

この試合の形は「このスカッドでヘイニウドを活用するならば」の意味もあり、そして「スルロットを活かすならば」でもあり、リーノがいる意味を示すものでもあった。コケは当然としてアルバレスも配置を選ばない万能性を発揮したもの良かった点。たくさん褒める。わかりやすくお気に入りの試合。

マジョルカは点が取れない悩みといっても贅沢なもので、またどこかで勝ち始める。浅野拓磨とロベルト・ナバーロを仕組みにハメる作業は実質道半ばであり、まだまだ余白があると捉える。そして現状の勝ち点を考えればのんびりそれをテストする時間もあるだろう。

次は国王杯ヘタフェ戦を挟んでマドリーダービー。難しい試合を勝ち続けてきた今シーズン。言い訳なしの試合を期待したい。


2/1
リヤドエア・メトロポリターノ
アトレティコ 2-0 マジョルカ
得点者
【アトレティコ】’26 リーノ '90+3 グリーズマン


●ピックアップ選手

ル・ノルマン
広範囲に動き回るラリンをパワーで止めながらムリキの相手もするタスク量の多い試合だったが流石の安定感。浅野が出てきてから対応に困ってイエロー献上。マドリーダービーを欠場する。

ジュリアーノ
新しいタスク。問題なくプレーできたのはまず収穫。仲間を信じて。もっと出来る。

リーノ
"相手の守備陣形が整う前に"という話題になれば確実に仕事をする。得意な仕事以外の時間にビルドアップを推進させる仕事が良かった。継続起用したくなる出来。

ギャラガー
敵陣深く攻め込んでいる時間帯、強烈なネガトラの強さは捨てがたい。理屈では語れない貢献度。

グリーズマン
30分強の出場で特に何もしていなかったが最後の最後にハイライトになるループシュートで試合を終わらせた。気づくと点を取らなくなるタイプで、そういえばラリーガでは6試合振りの得点。


●myQA

22-1 ジュリアーノの内側タスク
シャドーの位置でアルバレスの対。初めてのタスクになった。それがメインタスクになる事はないだろうが、それができる必要があるのは明白で、彼個人の幅としてもチームの右サイド全体の幅としても重要。階段を一段飛ばしに登ってきたがまだまだ頂上は見えない。もっと登れる。もっと上手くなる。

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がーすけ
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