Seeing is believing.(百聞は一見に如かず。)
2019年3月7日(アメリカ時間:日本時間では8日)に、伝説の覆面プロレスラー、ザ・デストロイヤーが亡くなった。
バラエティ番組にしばしば出演していた彼は、お茶の間の人気者でもあった。しかし日刊スポーツのネット記事によると、そんな日本で人気の高いデストロイヤーさんも、初来日する前は絶対に行きたくないと言っていたそうだ。
日本が真珠湾攻撃をしたことを許せず、日本人が大嫌い。それでも1試合だけという条件で渋々説得されて日本に来てみると、会う人会う人に歓迎され、一気に日本人に対するイメージが変わってしまったらしい。彼が名勝負を繰り広げた力道山の奥さんに、彼はこう話したらしい。
「ボクの思っていた日本人の感覚とは違っていた。こんなに日本人が素晴らしいとは思っていなかった」
日本が大好きになったデストロイヤーさんは、その後何度も来日して多くのレスラーと名勝負を繰り広げ、数多くのテレビ番組にも出演した。プロレスから遠ざかった後も、最近まで毎年、夏に行われる麻布十番祭りには法被を着て参加していたと、記事には書かれている。
これを読んであらためて思うのは、やはり見ると聞くとでは大違いなのだなということである。
「百聞は一見に如かず」というやつだ。
英語ではこれをSeeing is believing.と言う。デストロイヤーさんにとっての日本人の姿は、「百聞」と「一見」とでは180度違うものであったし、新たな発見であったのだろう。
「嫌い」から「好き」になったという話ではないが、30年ほど前、筆者がアメリカにホームステイ&一人旅をしたときも、教科書では学べない多くの発見をした。
中でも、ホームステイ先の家庭の食事の時間がいつもバラバラで、「お腹が空いたら食べる」というルールに基づいて生活していたことには特に驚いた。一日二食のこともあれば、五食くらい食べる時もある。
そこで、ある時
「なんで食事の時間を決めないの?」
とホストのパパ(と言っても22歳で、当時25歳の筆者より若かったが・笑)にきいてみたら、逆に
「何で決めなくちゃいけないの?」
ときき返された。これにはまったく言葉も出なかった。
そうなのだ。我々日本人は――少なくとも自分にとっては「一日三食」ということが当たり前になっていたのだが、それはあくまで自分にとっての当たり前であり、人によってはそれが当たり前ではないのだということを、そのとき初めて知ったのである。
これもアメリカという、自分にとっては未知の世界に足を踏み入れて、実際にその生活を目にして体験したからこそわかったことであった。つまり、それが私にとってのSeeing is believing.だったのだ。
最近の若い人の中には「別に海外なんて行く必要ない。日本で十分楽しめるし。」と言う人が少なくないようだ。確かにそうかもしれない。だが、「井の中の蛙、大海を知らず」とも言う。外に出れば、必ず何らかの発見があるのだ。
これは、海外旅行だけの話ではない。「自分の知らない世界」に勇気をもって足を踏み入れれば、Seeing is believing.を身をもって感じることができるのである。
(英語科教諭)
Photo by Ali Arif Soydaş on Unsplash
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