【雲取山】秘湯も堪能!東京都最高峰
「東京都最高峰」という響きは登山者の征服欲を刺激する。しかも日帰りだと往復10時間かかるハードルの高さが「いつかは登ってみたい」という気持ちに拍車をかける。
「三多摩が東京都に編入されて以来、この大首都はその一隅に二千米の高峰を持つ名誉を獲得した。あえて名誉という。煤煙とコンクリートの壁とネオンサインのみがいたずらにふえて行く東京都に、原生林に覆われた雲取山のあることは誇っていいだろう」
深田久弥は『日本百名山』に味わい深い名文を残している。今回はこの東京都が誇る山に、山中の山小屋で宿泊する1泊2日の行程で向かった。
10月5日はあいにくの雨予報。眠い目をこすりながら、登山のスタート地点となる「丹波山村村営駐車場」に到着したのは午前5時半ごろ。事前に集めた情報では早朝に到着しないと満車になりそうだというので早く来たものの駐車場は空いていた。
車内で2時間ほど仮眠を取り、午前8時15分ごろいよいよ行動を開始する。駐車場からはしばらく車道を歩く。車道に落ちている大量のイガグリが秋の訪れを教えてくれる。
午前8時45分ごろお祭りバス停を通過。ここから沢沿いの「後山林道」を約3時間歩く。途中、この日の宿泊先である山小屋「三条の湯」の名前が車体に書かれたバンが通り過ぎていく。今夜の夕食の材料でも積んでいるのだろうかと想像が膨らんだ。
正午ごろに三条の湯に到着。林道はアスファルト道も多く、早くも筋肉痛になっていた。三条の湯の魅力は何と言っても温泉があるところ。山の奥地にある温泉は秘湯感たっぷり。ちなみに石けんやシャンプーの利用は厳禁。午後1時ごろ風呂に浸かって、翌日に酷使が予想される足の疲労を癒やした。
風呂上がりは座敷の大部屋で読書をしてゆったり過ごす。午後5時半にお待ちかねの夕食。天ぷらやロースト肉、ポテトサラダなどが木製のプレートに乗って提供された。興味深かったのはマスタケの和え物。オレンジ色のキノコで、魚のマスの色に似ているのが名前の由来のようだ。キノコ特有の独特な臭いはなく、あっさりしておいしかった。
部屋は複数の登山客や従業員との相部屋。隣の男性のいびきが大きかったので、眠れるか不安だった。だが疲れた体にはそんなことは全くの杞憂で午後9時の消灯直後に眠りに落ちた。
翌10月6日は曇り空だが雨はあがっていた。午前5時半ごろ山小屋の朝食を済ませ、午前6時半ごろ登山スタート。三条の湯から雲取山まで900メートルの高低差を3時間半で登り切る。
午前10時ごろ雲取山の山頂にたどり着く。あいにくの曇りだが、東京都最高峰の頂に立った感動はひとしお。昼食は山頂避難小屋近くで三条の湯特製の「ちらし寿司」をいただく。小屋で渡された時は量が多そうに感じたが、ぺろりと平らげた。
ここからはひたすら下り道。午前11時ごろ小雲取山を通過。途中、せっかくなら七ツ石山のピークを踏みたいと軽い気持ちで寄り道したが予想以上に登りが過酷だった。正午ごろ七ツ石山の山頂に到着。行動食でお腹を満たし、午後0時40分ごろには七ツ石小屋にたどり着き、トイレを済ました。
午後1時20分ごろ堂所を通過。平将門に関する小話が書かれた看板を読みながら下山していく。午後2時45分ごろに小袖登山口までたどり着き、午後3時ごろ丹波山村村営駐車場に到着。曇り予想の2日目だったが結局雨に降られ、2日間とも雨の中での山登りとなった。
午後4時ごろ道の駅「たばやま」近くの温泉施設「丹波山温泉のめこい湯」で入浴。公式ウェブサイトによると、「のめっこい」とはこの土地の方言で「つるつる、すべすべ」という意味らしい。温泉内レストランで豚の生姜焼き定食を食べ、帰路に就いた。(2024年10月5日~6日)