著者インタビュー『 2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』(大阪市公立小学校 丸岡 慎弥先生)
昨年、『高学年児童がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』(2020年10月刊、学陽書房)をご執筆された丸岡慎弥先生。
今回は、「言葉かけ」シリーズ第2弾として「2・3・4年生」にフォーカスした『2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』が発売されました。
そこで、著者の丸岡先生にお話を伺いながら本書をくわしくご紹介します。本文中のかわいいイラストとあわせてお楽しみください!
▼ 『2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』
(丸岡 慎弥 著、定価=税込1,980円、A5判・136ページ、2021年10月刊)
▼ 本書の目次
CHAPTER1 2・3・4年生はここを押さえる! 言葉かけの超基本
CHAPTER2 決め手はここ! 男女別言葉かけのポイント
CHAPTER3 クラスがまとまり活気づく! 学級活動場面での言葉かけ
CHAPTER4 落ち着きや成長をどんどん引き出す! 生活指導場面での言葉かけ
CHAPTER5 集中&意欲を刺激する! 授業場面での言葉かけ
CHAPTER6 個々の成長とクラスの団結を! 行事指導場面での言葉かけ
2・3・4年生は見逃されがちだけど実は要の学年
―まず最初にお伺いしたいのですが、今回の本では低学年(1・2年)や中学年(3・4年生)という区切りではなく、「2・3・4年生」という区切りで「言葉かけ」にフォーカスされていますが、それはなぜでしょうか?
(丸岡先生)高学年の児童や入学したばかりの1年生には、学校全体でも注目度が高くなるものです。
とくに児童会をはじめとして、高学年生が学校で活躍する場は多く設けられています。
その姿を見るたびに「今年の高学年は……」などと自然と注目が集まります。
―確かにそうですね。すごく昔のことになりますが(笑)、私も「今年の6年生は・・・」とか言われたのを覚えています。
(丸岡先生) また、新しく入学してきたまさにピカピカの1年生の子どもたちにも、自ずと注目が高まる状況があるのは、どの学校でも同じなのではないでしょうか。
そうしたこともあって、2・3・4年生の子どもたちに対しては、教師たちの意識が意図せずに低くなってしまう可能性は少なくありません。
しかし、2・3・4年生の子どもたちは、1年生から高学年までの橋渡しとなる、むしろ要の学年であると私は考えます。
―そうですね。一番成長の幅が大きいかもしれないですね。
ランドセルが歩いているみたいだった小さな子どもたちが、4年生が終わる頃には背も伸びて大人っぽくなってきます。
そして、グッと大人になってしまう子と、まだまだ幼いところを残した子とのギャップも大きくなる学年のような気がしますね。
(丸岡先生)この時期に、教師からの確かな言葉かけを受けているかどうかで、子どもたちの成長は大きく変わっていく。
そういった確信と手応えをもって指導をしてきたからこそ、今回、「言葉かけ」のテーマにおいて、この3学年をステップアップ式に捉えていきたいと考えました。
2年生だってはじめて尽くしの学年
―最初に原稿を拝見した時は、「なんでこの区切りなんだろう?」と感じてしまったのですが、先生のお話を伺ってすごく納得しました。
ところで、現場の先生方からは保育園や幼稚園から上がったばかりの1年生に手を焼く教師の方が多いというお話をよく聞きます。
逆に「2年生がたいへん・・・」というお話はあまり聞こえてこないのですが、2年生は1年生とどのような点で違うとお考えですか?
(丸岡先生) 2年生になると「もう2年生だから」「1年間で学校生活に慣れたから」という暗黙の思いから、教師から子どもたちへの配慮が欠けてしまうことがあります。
そのことは、とくに注意が必要な点であると思います。しかし、2年生も2年生として、はじめて尽くしの学年であることを忘れてはいけません。
担任の先生が変わったり、教室を移動したり、はじめて下級生を迎えて上級生になったり・・・これらは2年生にとってはじめての経験なのです。
1年生は、学校生活自体がはじめてという特別さはありますが、「はじめて尽くし」という点からは、むしろ類似点も多い学年であることに気付きたいものです。
―確かに、少し前まで一番下の学年でいたのに下級生ができるとなると、子どもたちの感覚も違ってきますね。戸惑う子も多いのでしょうね。
2・3・4年生は、発見や成長が楽しみな学年
―2・3・4学年の子どもたちは、成長の度合いにおいて個別の差や男女差などがとくに顕著で、扱いにくいように思います。
これらの学年の担任をされて特に対応に困ってしまったことはどんなことですか?
(丸岡先生) 初任で4年生を担任しましたが、その時、とにかく苦労したのが学力差です。
「10歳の壁」とも言われるように、4年生は子どもたちにとって大きなターニングポイントです。
学習内容も、自分の身近な素材から離れ、自分とは離れた概念の学習を扱うことがメインになります。
そうなると、これまで学習についてくることのできた子どもたちも、生活経験の差や個人の能力差が原因となり、大きく引き離されてしまうことが往々にしてあるのです。
この差をどう埋めるのかということに、教師としてとにかく苦労しました。
―教科書の内容もグッと深く難しくなりますしね。逆に、「この学年の子どもたちっておもしろいな!」と思われることはありますか?
(丸岡先生)2・3年生、また4年生もそうですが、「先生の言うことを聞く」ことに抵抗がありません。よって、すぐに行動に移すことができます。
もちろん、「先生が何を言うか」が重要となることは言うまでもありませんが、先生が前向きな言葉かけや前向きな取り組みをすれば、素直にそれに応えることのできる学年でもあります。
―そうなんですね。かわいらしいですね。
(丸岡先生)1年生の子どもたちも「先生の言うこと」に対しての抵抗感はありませんが、実際に行動に移すということがなかなかできない場合もあります。
その点、とくに3・4年生の子どもたちはずいぶんといろいろなことができるようになる学年であり、「自分の力で」ということにおいて、うんと幅の広がる学年でもあると言えるでしょう。
―そのような観点をもって言葉がけすることで、子どもたちもよい方向にどんどん変わっていく可能性を秘めた学年ということですね。この学年の担任になってみて分かった「気付き」などはありますか?
(丸岡先生)同じ2・3・4年生でも、学校・学年や地域の雰囲気によって子どもたちの様子は変わるということです。
4年生くらいになると、男女の意識が顕著になってくると思われがちですが、学校や学年の雰囲気によっては4年生になっても低学年の頃の雰囲気のまま男女関係なく仲良くしている学校・学年もあれば、4年生くらいからはっきりと男女の違いを意識し始め、抵抗感を抱くようになる学校・学年もあります。
―地域によってそのような差があるのですね。すごくおもしろいですね。
(丸岡先生)これは、私が学校をまたいで指導をする経験を得たことで気が付くことができました。
自分の担任しているクラスの状態をしっかりと注視していくことも大切ですが、同時に、学年や学校全体、地域など、広い視点から俯瞰していくことも非常に大切なことだと思います。
―なるほど。担任しているクラスだけではなくて、地域性なども考えて指導にあたる必要があるのですね。これは特に異動した時には注意したいポイントですね。
子どもたちに響く「言葉かけ」は変わってきている?
―丸岡先生の書籍を読ませていただくと、「言葉の使い方の大切さ」が身に沁みます。
最近の子どもたちを指導されていて、5年くらい前と比較した時に、子どもたちに響く言葉が変わってきたなというような実感はありますか?
(丸岡先生)授業中でも、学習内容を伝えるのではなく、学習方法を伝えることが増えてきたように思います。
もちろん、「これだけは押さえておきたい」という内容は扱うこともありますが、その割合がずいぶんと減ってきたなぁと思うのです。
「内容がどうか」ではなく、「何を使って学ぶのか」「どのようにして学ぶのか」「困った時にどうすればいいのか」を伝えることが、本当に多くなったなぁと実感しています。
それに伴い、「自分のモチベーションをどう上げるのか」「自分の状態をどのように高めればいいのか」といった内容の言葉かけも増えてきました。
このあたりは、本書でもたっぷりと扱っておりますので、ぜひお読みいただきたい内容であります。
―なるほど。私も今の子どもたちに響く言葉かけをもっと知りたいなと思いました。本書がとても楽しみです!
(丸岡先生)そして、変わらないことは、やはり道徳的なことです。
「小さなことから大きなことにつながる」ということや、「自分が成功するまでには必ず壁が現れる」ことなど、こういった点は10年前から伝えていることと同じだなぁと感じています。
―道徳的なこと、人の生きる道というのは、時代がかわっても普遍的な概念ということですね。
まだまだ工夫できる「言葉かけ」
―最近は、2・3・4年生は「扱いにくい学年」という印象に変わってきたという話を伺ったことがあります。
丸岡先生のご勤務校でもそのような状況は見られますか? また、若手教師の方々からそのような相談を受けることはありますか?
(丸岡先生)現在の私の勤務校では、そのような状況は見受けられず、どの学年も前向きに意欲的に学習に取り組んでいますが、私の主催しているオープンチャット「まるしん先生の道徳教育研究所」の中では、全国の先生方からそのような悩みを聞かせていただくことがあります。
子どもが言うことを聞かない、反抗的である、やる気がないなどなど……。もちろん、その子たちにも要因があると思います。
ただ、先生方から状況を聞いている限りでは、まだまだ教師の側にも改善できることが多くあるように思います。
―そうなんですね。
(丸岡先生)そのカギとなることはいくつかありますが・・・
・「子どもたちには乗り越える力がある」という前提で言葉かけをする
・その子との信頼関係を築いてから教師の望む言葉かけをする
・直接的な言葉かけだけではなく、子どもたちから引き出す言葉かけをする
などです。
つまり、私たち教師にできることとして、日々当たり前のように行っている「言葉かけ」においても、まだまだたくさんの工夫や手立てが見出せるということなのです。
ぜひ、本書をお読みいただき、子どもたちにとってよりよい言葉かけというものがどういったものなのかということを一緒に考え、そして実践を重ねながら、手応えをつかんでいただければと思います。
―本書を通して、まだまだ素直な部分が残るこれらの学年の子どもたちの成長をフォローする「言葉かけ」を、ぜひ多くの先生方に知っていただき、実践に役立てていただけたらと思います。
丸岡先生、ありがとうございました!
著者プロフィール
丸岡 慎弥(まるおか・しんや)
1983年、神奈川県生まれ。三重県育ち。大阪市公立小学校勤務。教育サークルやたがらす代表。関西道徳教育研究会代表。
NLPやコーチングといった新たな学問を取り入れて、これまでにない教育実践を積み上げ、その効果を感じている。
教師の挑戦を応援し、挑戦する教師を応援し合うコミュニティ「まるしん先生の道徳教育研究所」を運営。自身の道徳授業実践も公開中。
著書
▼ 『高学年児童がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』
(定価=税込1,980円、A5判・136ページ、2020年10月刊、学陽書房)
▼ 『教師の力を最大限引き出すNLP』
(定価=税込1,980円、四六判・208ページ、2020年3月刊、東洋館出版社 )
▼ 新刊!『2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』
(定価=税込1,980円、A5判・136ページ、2021年10月刊、学陽書房)