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著者インタビュー『公務員のための問題解決フレームワーク』(自治体職員 管理職 秋田 将人氏)


5月21日に『公務員のための問題解決フレームワーク 』が発売しました。

そこで著者の秋田 将人氏に、本書を書かれたきっかけや本の内容についてインタビューしました!


▼ 『公務員のための問題解決フレームワーク 』

(秋田 将人 著、定価=税込2,090円、A5判・148ページ、2021年5月刊)

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▼ 目次

第1章 業務の効率を上げるフレームワーク
第2章 問題解決のアイデアを出すフレームワーク
第3章 組織の効率を高めるフレームワーク
第4章 自治体の現場で特に役立つフレームワーク
第5章 自治体でも活かせるラテラル・シンキング
第6章 「問題」の見つけ方・設定の仕方


本書が誕生したきっかけ


―多くの本をご執筆されていますが、今回、「フレームワーク」をテーマにご執筆されたきっかけを教えて下さい。

(秋田氏)最大の理由は、公務員向けのフレームワークに関する書籍がなかったことです。

ビジネスパーソン向けの書籍は数多くあるのですが、公務員である私たちが読むときは、「これが公務員だったら、どのように活用できるのかな」「民間企業とは異なる自治体だと、どうなるのか」など、頭の中で変換しなければなりません。

フレームワークは、意思決定や問題解決のための思考方法ですが、ビジネスに限らず、自治体の現場でも十分に応用が可能です。

こうした方法を知っているだけで、いちから考える必要がなくなり、思考の省力化ができるのです。

―そうなんですね。公務員の皆さんにとって画期的な本ができましたね。

(秋田氏)皆さんも5 W 1 Hやブレインストーミングなど、お聞きになったことがあると思うのですが、 こうした便利な手法はたくさんあります。

資料作成や新規事業の検討の際などにも、意識せずに使っていることもあります。

また、自治体職員ならではのフレームワークもあります。これは、ベテラン職員であれば、必ずといっていいほど身につけているもので、実務の中で先輩から後輩に対して教えられるものです。これについても、今回取り上げました。

―実務の様々な場面でフレームワークが役立つように工夫された内容になっているということですね。

(秋田氏)こうしたフレームワークがどのような場面で活用できるのかを、これまでの経験などを事例にしながら体系化したのですが、きっと自治体の様々な職場で活用できることがわかっていただけるかと思います。


フレームワークは自治体でのしごとでも役立つ!


―本書の特徴として自治体での事例を掲げて、フレームワークを解説していますが、こんなに多くの「フレームワーク」があることに驚きました。日常的にフレームワークを使われて業務を行っているのですか。

(秋田氏)「フレームワークを意識して業務を行っていた」のでなく、後で考えると「これはフレームワークだったんだ」と気付くことが多かったですね。

5 W 1 Hなどの基本的なフレームワークを知ったのは、新人研修の頃だったのですが、本格的にフレームワークの本を読んだのは、最近です。

そうした書籍を読み進めると、「ビジネスパーソンでも、公務員でも、悩むことは一緒じゃないか!」とわかったのです。

もちろん、民間企業と自治体では、目的や環境も異なる場合があるのですが、十分活用できることがわかったのです。

―なるほど。自治体のお仕事でも実際にフレームワークを使っていたというわけですね。

(秋田氏)先人たちが努力してフレームワークを構築してくれたおかげで、私たちはそれを使って問題解決ができるようになったのです。時間も労力も無駄にしなくて済むのですから、こんなに有難いことはありません。

大事なことは、フレームワークの個別の名称を覚えることでなく、「この問題だったら、あれが使えるかな」と肌感覚で覚えていることだと思います。


「なぜなぜ分析」で同じミスを繰り返さない!


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―第2章にある「なぜなぜ分析で原因を深堀りする」は、おもしろい名前のフレームワークで興味を持ちました!業務ではどのようにして使うのですか?

(秋田氏)例えば、多くの自治体で税額や保険料を誤って住民に通知してしまったということがあります。この原因は、システムであることが多いのですが、実際にはプログラムの誤りです。

では、なぜプログラムが誤ったかというと、職員とベンダーとの間で、十分な意思疎通が図られていなかったことなどが挙げられます。

そうすると、次に、なぜ十分な意思疎通が図られなかったのかを考えなければなりません。口頭のやり取りで済ませてしまった、両者で当該プログラムの確認を怠っていたなど、本当の原因が特定できます。

このように、「金額を間違えて通知してしまった」ということ1つだけでも、本当の原因を探るには、これだけ「なぜ」を繰り返さなければいけません。この本当の原因が解決できなければ、また間違いは繰り返されてしまうわけです。

―それは、大変です。2度とミスを繰り返さないように「なぜ」を繰り返す必要があるのですね。

(秋田氏)このようなミスがあると、「あいつが悪い!」のような犯人捜しになってしまう恐れがあります。そのため、原因を追及せず、ついうやむやにしてしまうことがあります。

そうした職員の心情も理解できますが、それでは問題はいつまでも放置されたままで、またミスが発生してしまいます。

真に問題解決するには、このように追及していく「なぜなぜ分析」のようなフレームワークを活用することが非常に有効なのです。


「ハインリッヒの法則」で事故やトラブルを未然に防ぐ


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―第4章の「ハインリッヒの法則」を使って、実際に事故やトラブルを未然に防いで助かったことはありましたか?

(秋田氏)例えば、かつて保育課に在籍していたことがあるのですが、ある保育園でアレルギーのある園児に、間違ってアレルギー対応食(除去食)ではない通常の配膳をしてしまったことがありました。

結局は、大事に至らないで済んだのですが、一歩間違えれば、生死に関わる問題になっていました。こうした1つの重大な事故を「たまたま間違った」ではなく、「実は、その他にもたくさんミスがあったはず」と考えるのは、一般的なことです。

それを具体的に説明してくれたのが、ハインリッヒの法則です。現場の保育士たちは、この名称を正確に認識していないかもしれませんが、実際には先のような危機感を持っていてくれています。

このため、実際に配膳について見直しを行ったところ、その保育園ではそうした事故は起こらなくなりました。このフレームワークが活用された事例といっても良いかと思います。


―この法則が活かされ、事故を防ぐ意識が徹底されたわけですね。


(秋田氏)ここで大事なことは、危機感をもって組織的な体制を見直すか、ということです。

「たまたま間違った」時に、「大事にならないで、良かった」で済ませては、事故は再発する可能性があります。

「配膳の体制を見直さなくては」と考えられるか、考えられないのかが大きな分かれ道になってしまうのです。


VUCA(ブーカ)の時代に求められること


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―本書では、問題や前提を疑う考え方や先入観を捨てることの大事さについても説明されていました。先が読めない時代に特に必要になってくる考え方だと思いましたがこの点についていかがでしょうか。


(秋田氏)ラテラル・シンキングは重要です。ロジカル・シンキングは論理的に考える直球思考ですが、ラテラル・シンキングは、問題そのものを疑う、別人になって考えるなど、変化球思考です。

本書でも取り上げていますが、「13個のオレンジを3人に等しく配分するには、どうしたらよいか」のような問題に対して、ロジカル・シンキングで考えるのは、どうしても限界があります。これに対して、臨機応変に対応できるように考えるのが、ラテラル・シンキングです。

現在は、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったVUCA(ブーカ)の時代とも言われます。

正に、問題や前提を疑う考え方や先入観を捨てる、頭の柔らかさが現在の公務員に求められていると思います。

―変化球の考え方が、これから求められているわけですね。

(秋田氏)ただ問題を真正面から解くのでなく、「その手があったか!」「一本取られた」と思うような解決策を発想できるかが、これからは大事になってくると思います。

これまで、公務員はこうした発想が苦手とされてきました。しかし、上司がこのような発想ができれば、部下の残業を減らしたり、無駄な作業をなくしたりすることも可能となります。

本書でも、自治体の現場で起きる事例を取り上げていますので、ぜひ、楽しみながら読んでいただければと思っています。


読者へのメッセージ


―最後に読者の方へ向けてメッセージをお願いします!

(秋田氏)フレームワークというと、「MBAやビジネスシーンだけで使われている思考法」「意識高い系の人が使うもので、自分には関係ない」と考えるかもしれませんが、そんなことはありません。

これまで述べたように、公務員の問題解決にとって便利なツールなのです。

本書では、原則、冒頭に事例を示しています。これをぜひクイズと思って、解いてみてください。

そうすると、きっとフレームワークを身近に感じることができるはずです。本書が少しでも皆さんのお役に立つことができれば、これほど嬉しいことはありません。


―ありがとうございました。ぜひ、多くの公務員の方にフレームワークを活用していただき、実務に役立てていただけることを願っております。


著者プロフィール


秋田 将人(あきた・まさと/筆名)

基礎自治体の管理職。これまで保育、防災、教育、福祉事務所などの現場から、人事、企画、財政、議会などの内部管理部門まで幅広く勤務。専門誌への投稿や研修講師なども行う。


著書

▼ 『ストレスゼロで成果を上げる 公務員の係長のルール』

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