著者インタビュー『集客力がアップする! 弁護士のためのネット広告入門』(弁護士 深澤 諭史氏)
10月15日に、『集客力がアップする!弁護士のためのネット広告入門』が発刊のはこびとなりました。
「オンライン○○」といった手段が、ビジネスの現場でもいっそう市民権を獲得した令和の時代。ほとんどの弁護士の先生方が、なんらかのネット媒体上に弁護士広告を出していることと思われます。
そんな、今やもう必修ともいえる「弁護士広告のいろは」は、どのように習得するとよいのでしょうか。
弁護士会の研修では、「やってはいけない」弁護士広告について学ぶことができます。マーケティングを学べば、「効果的な」弁護士広告について知ることができるかもしれません。
しかし、そのいずれもバランスよく、かつしっかりと踏み込んで弁護士目線で解説した資料は、これまでほとんどなかったように思われます。
本書は、さまざまな広告への取り組み方や長所・短所、費用対効果やその確認方法、トラブル対応はもちろん、広告業者が口にしない(!)不都合な真実まで、盛りだくさんの解説がなされた1冊です。
発刊を記念して、著者の深澤諭史先生に、本書執筆の経緯から弁護士広告や問合せ対応のポイントについて、インタビューさせていただきました。
ぜひ、本書の内容と併せてお楽しみください。
▼ 『集客力がアップする! 弁護士のためのネット広告入門』
(深澤 諭史 著、定価=税込2,750円、A5判・164ページ、2021年10月刊)
▼ 本書の目次
第1章 弁護士広告を始める前に知っておきたいこと
第2章 ネット広告の始め方・作り方
第3章 ネット広告の続け方
第4章 ネット広告と問い合わせ対応
ネット広告のみで「食べていける」弁護士になれた
-深澤先生、このたびはよろしくお願いいたします!
まずは、読者の方が気になる部分、深澤先生ご自身の広告による成功体験について教えていただけますか。
第1章では、「広告がきっかけで、依頼はもちろん、取材や出版の依頼がくるようになった」とあります。このあたりをぜひ、詳しくお話してください!
(深澤先生)私は、東京23区内で独立し、独立の時期も早かったので、独立元から引き継いだ事件や、あるいは、弁護士会の法律相談などで入る仕事は、ほぼありませんでした。
したがって、待っていても、一件の仕事も入りません。
ということで、広告なしでは、仕事はゼロであり、入ってくる仕事は、基本的に全てネット広告経由である、ということがいえます。
-早いうちから「自分で仕事をとるしかない」環境に身を置いていたのですね。依頼者の方は、深澤先生のネット広告のどこを決め手にしていたのでしょうか?
(深澤先生)ネット広告経由の依頼者の方からは、広告の文面を見て、「弁護士の処理方針やポリシー」、「諦めないこと」が好印象であったとか、「例え自分に責任がある事件でも自分を責める必要は無い、請求を受けている側が弁護士を付けることは悪いことではない、ということがわかった」、「相談前に広告を見て弁護士に相談するに当たっての不安が解消した、安心した」、と言われたことが、印象に残っています。
-相談の前段階から、前向きなメッセージが依頼者に伝わっていたのは嬉しいですね。
(深澤先生)早いうちに、ネット広告経由の事件だけで「食べていけるようになった」というのが、最大の成功体験です。
また、昔に掲載した広告を見て、忘れた頃に依頼がくる、取材を受けるということもたびたびありました。
過去からの積み重ねが全て無駄にならないのが、ネットを利用した弁護士広告のメリットであり、そして醍醐味であると思います。
-確かに我々出版業の人間も、ネット広告をとっかかりにしながら取材先や著者の先生を探すことがあります。
弁護士のネット広告は、自身の経験や長所を継続的にアピールし続けられる場にもなるのですね。
なにより依頼者が見ているポイントは「○○○」!?
-先ほど、依頼者の方が深澤先生を選ぶ決め手になったネット広告上の決め手をいくつか具体的にご教示いただきました。
第2章では、こういった「弁護士紹介」の書き方のコツについて詳しく書かれています。依頼者がホームページを見るときに「弁護士費用」より「弁護士紹介」に注目する、という点は意外な事実でした。
具体的な弁護士紹介のフレーズ例まで紹介されており、これからホームページを準備する読者が活用できる情報が満載であると感じました。
依頼者目線に立った記述が光りますが、深澤先生はこういった広告に対する依頼者の意見をどのように集めているのですか?
(深澤先生)それは、法律相談時です。実は、インターネット経由で相談をする、依頼をする人というのが、「お目が高い」ということがいえます。
これは、どういうことかというと、複数の弁護士のネット広告を比較検討して、それで弁護士を選んでいる、ということです。
-依頼者の方は、どのような点を重視して弁護士を選んでいるのでしょう?
(深澤先生)弁護士選びにあたっては、弁護士の能力も重要ですが、それと同じくらい、依頼者と弁護士の相性が重要です。
そこで、相談者が依頼を迷っているときは、「相性の問題もあるので、是非、いろいろな弁護士の意見を聞いてみてから決めてもよいと思います。」と案内することにしています。
-いわば、弁護士のセカンドオピニオンをオススメするのですね。
(深澤先生)そうした中で、自分を選んでくれた依頼者は、選んだ決め手を教えてくれることが多いです。法律相談の場では、相談者は、色々と率直に語ってくれます。
法律相談は、いわば、ネット広告の採点、答え合わせの場であるともいえます。
-依頼者の方の「生の声」を取り入れている深澤先生だからこそ、依頼者目線の弁護士広告を展開できているのですね。
「ネットはニガテ……」な先生でも広告はつくれる?
-弁護士の先生方は、「忙しくて広告にかける時間がない……」「ネットに疎くて……」など、広告に注力することに踏み込めないという悩みを抱えておられる方も多いと想像できます。
そんな、いわゆる「ニガテ意識が強め」な方にもネット広告はうまく運用できるのでしょうか?
(深澤先生)苦手意識があっても大丈夫です。私は、実は、ネット広告が下手な弁護士はほとんどいないと思っています。
-そうなのですか!
(深澤先生)本書でも何度も繰り返しましたが、ネット広告というのは、要するに、法律相談の応用です。
相談者が、その事件について、頻繁に疑問に思うこと、不安に思うこと、知りたいことをわかりやすく説明することが、最重要のポイントです。
法律相談ができない弁護士がいないのと同じく、ネット広告に記載するべき点が見つからない弁護士もいないと思います。
ネット広告については、苦手意識というよりも、ネット広告は特別なものであるという、そういう意識を捨てることから、始めるべきだと思います。
-ネット広告づくりには、弁護士の先生方のふだんのお仕事の姿勢に通じるものがあるのですね。
具体的な広告の解説の手引きについても、第3章でやさしい説明があります。ニガテ意識のある先生にこそ、ぜひまずは本書を手に取ってみていただきたいですね。
問合せ対応の「キモ」はこれだ!
-ここまで、弁護士広告の作成方法やその伸ばし方についてお話いただきました。
第4章では、弁護士広告に対する問合せ対応の注意点について解説されています。問合せの対応には思いがけないリスクが潜んでいることを、改めて実感するセクションでした。
すでに弁護士広告を作成し、運用している方に向けて、問合せ対応において重要なポイントを改めて教えてください。
(深澤先生)弁護士広告のコストは、広告そのもののコストだけではなくて、問い合わせ対応のコストも含まれます。
つまり、弁護士広告においては、コストをかけて問い合わせを集め、そして、コストをかけてそれらに対応し、受任できてようやく売り上げにつながる、コストが回収できるという関係にあります。
ですから、問い合わせの対応を誤ることは、せっかく少なくないコストをかけて集めた問い合わせを、さらに問い合わせ対応というコストを使って無駄にしている、ということになります。
-問合せ対応の重要性がよくわかりました……!では、せっかくの問合せを無駄にしてしまう「NG対応」には、どんなものがありますか?
(深澤先生)他の弁護士にも相談した、問い合わせたという話を、相談者から聞くことがよくあります。
その中には、「自分で証拠を集めてから来て欲しい」とか「あなたが悪いのだから請求に応じるべき」とか、あるいは、感じが悪かった、怖かった、という不満を聞くことが珍しくありません。
-弁護士の第一印象が、受任の可否に大きく左右するのですね。具体的にはどう対応すれば、受任につながったのでしょう?
(深澤先生)なるべく早めのレスポンス(返事)を心がける、しっかりと名乗る、特に最初はゆっくりとしゃべる、その事件分野において「よくある不安」については、相談前の問い合わせ対応時に教えてしまう、これらは少し心がけるだけで実現可能です。
これらの点は、アソシエイト弁護士にもよく指導して、心がけてもらうだけで、相談や受任につながる確率は、非常に伸びると思います。
-今日から実践できそうな具体的なアドバイスです!第4章でも、より詳しく問合せ対応のコツをご解説いただいています。こうした少しの工夫で受任につながるならば、ぜひ実践していきたいですね。
なお、第4章には、そもそも「相談にも受任にもつながらない問合せ」の見分け方・減らし方も解説されています。
こちらもかなり実践的で踏み込んだ内容なので、ぜひ読者の目に触れて欲しいなと思いました!
弁護士広告は「社会のインフラ」という意識を!
-最後に、読者の方にメッセージをお願いします!
(深澤先生)弁護士広告というのは、単に弁護士が事件を受任する、利益を得るというだけではなくて、社会と弁護士をつながる大事な架け橋です。
また、弁護士は社会のインフラである、とも言われますが、そうであれば、弁護士広告もまた、社会のインフラです。
弁護士広告は、弁護士の個人的な利益を追求するためだけのものではなく、法の支配を社会に行き渡らせるためのものであり、弁護士が専門性を獲得して、より良質なサービスを提供するための研鑽の手段でもあります。
そういう意識で、弁護士広告に取り組んで欲しいと思っています。
-適切で効果的な弁護士広告は、社会のインフラにもなりえるのですね。
プロフェッショナルとして日々真剣に仕事をされている先生方の、仕事ぶりやお人柄がにじみでるような、また依頼者の方にそれが伝わるような、そんな弁護士広告がより増えていくと良いですね。
具体的なテクニックの記載はもちろんのこと、真摯に弁護士広告のあり方に向かいあってきた深澤先生の思いが感じられる点も、本書の大きな魅力だと感じました。
深澤先生、このたびはまことにありがとうございました!
著者プロフィール
深澤 諭史(ふかざわ・さとし)
服部啓法律事務所。第二東京弁護士会所属。
著書
▼『改訂版 これって非弁提携? 弁護士のための非弁対策Q&A』
(定価=税込3,300円、A5判・262ページ、2020年12月刊、 第一法規)
▼『Q&A 弁護士業務広告の落とし穴』
(定価=税込2,750円、A5判・188ページ、2018年2月刊、 第一法規)
▼新刊! 『集客力がアップする! 弁護士のためのネット広告入門』
(定価=税込2,750円、A5判・164ページ、2021年10月刊、学陽書房)