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西村 勇哉「人類の可能性を拓く先鋭的なイノベーターの所在」

西村 勇哉(にしむら・ゆうや)——NPO法人ミラツク 代表理事・株式会社エッセンス代表取締役。
1981年大阪府池田市生まれ。大阪大学大学院にて人間科学の修士を取得。2011年にNPO法人ミラツクを設立。2021年に株式会社エッセンスを設立。知のアクセスを実現する「Knowledge Tech」企業として研究知と社会の接続に取り組む。大阪大学社会SSI招聘教授。

 研究者、と聞くとどのようなイメージがあるだろう。
 高校時代に心理学という分野があることを知り、学んでみたい!と思った時、まだ大学というのは高校の次に来る学校で、高校までと同じように大学にも「先生」がいると思っていた。
 一年の浪人を経て大学に入ると、そこにはたくさんの先生たちと、そしてちょっとイメージしていた心理学とは違う世界が待っていた。
 大学に入って学びたかったことはどこにあるんだろう、と思いながらも部活に励む毎日。そんな中、たまたま大型書店で手に取った一冊の書籍が大きく人生を変える。アメリカの心理学者D・シュルツが著した『健康な人格』(川島書店、一九八二)は、オルポート、ロジャース、フロム、マズロー、ユング、フランクル、パールズという七人の心理学者の知が凝縮された一冊で、まさにそういうことを考えたかった!と心が躍り、そして研究者は憧れの存在となる。
 やがて、大学院を経て、今度はこの知を世の中に活かしたいと思い、ビジネスの世界に出るためになるべく現場感の強い組織に入ろうと、設立数年のベンチャー企業に就職することに決めた。
 知の社会実装に向けて、日々の業務、細かいことの積み重ね、読む本はビジネス書になり、どうすればもっと売れるか、どうすればもっとおもしろいサービスがつくれるか、どうすればもっと新しいことを形にできるか。
 形にすることを求める中で、研究者はむしろ役に立たない存在、社会とかけ離れた存在となっていった。

―『學鐙』2023年冬号 特集「はたらくをひもとく」より―

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『學鐙』2023年冬号
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灯歌
木下 龍也(歌人)
特集
田中 優子(法政大学名誉教授・江戸東京研究センター特任教授)★
松村 圭一郎(岡山大学文学部准教授)★
嶋田 博子(京都大学公共政策大学院教授)★
西村 勇哉(NPO法人ミラツク 代表理事・株式会社エッセンス代表取締役)★
ナカムラクニオ(美術家・金継ぎ作家)★
平田 はる香(株式会社わざわざ 代表取締役)★
安田 登(能楽師)★
企画連載
岡本 健(近畿大学 総合社会学部/情報学研究所 准教授)
藤江 和子(家具デザイナー)
五十嵐 杏南(サイエンスライター)
髙宮 利行(慶應義塾大学名誉教授)
書評
渡辺 祐真(文筆家・書評家)
水上 文(文筆家 ・文芸批評家)
田尻 久子(橙書店 店主)
原 正人(翻訳家)
丸善出版刊行物書評
湯本 貴和(京都大学名誉教授・日本生態学会前会長)
加野 芳正(香川短期大学学長・元日本教育社会学会長)

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