西村 勇哉「人類の可能性を拓く先鋭的なイノベーターの所在」
研究者、と聞くとどのようなイメージがあるだろう。
高校時代に心理学という分野があることを知り、学んでみたい!と思った時、まだ大学というのは高校の次に来る学校で、高校までと同じように大学にも「先生」がいると思っていた。
一年の浪人を経て大学に入ると、そこにはたくさんの先生たちと、そしてちょっとイメージしていた心理学とは違う世界が待っていた。
大学に入って学びたかったことはどこにあるんだろう、と思いながらも部活に励む毎日。そんな中、たまたま大型書店で手に取った一冊の書籍が大きく人生を変える。アメリカの心理学者D・シュルツが著した『健康な人格』(川島書店、一九八二)は、オルポート、ロジャース、フロム、マズロー、ユング、フランクル、パールズという七人の心理学者の知が凝縮された一冊で、まさにそういうことを考えたかった!と心が躍り、そして研究者は憧れの存在となる。
やがて、大学院を経て、今度はこの知を世の中に活かしたいと思い、ビジネスの世界に出るためになるべく現場感の強い組織に入ろうと、設立数年のベンチャー企業に就職することに決めた。
知の社会実装に向けて、日々の業務、細かいことの積み重ね、読む本はビジネス書になり、どうすればもっと売れるか、どうすればもっとおもしろいサービスがつくれるか、どうすればもっと新しいことを形にできるか。
形にすることを求める中で、研究者はむしろ役に立たない存在、社会とかけ離れた存在となっていった。
―『學鐙』2023年冬号 特集「はたらくを繙く」より―
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