成田 聡子「生き残りをかけた「宿主操作」と「寄生」」
現在の地球上で繁栄している人類
今の地球には、どのくらいの種類の生物種が存在しているかご存知でしょうか。人類の数は、国際連合(国連)の推計では二〇二二年に八〇億人に達したと考えられています。これは、人類、つまり生物種で言うと、ホモ・サピエンス(学名:Homo sapiens)という生物一種の数です。
地球上に存在する生物種
では、現在の地球上には、私たちホモ・サピエンスという生物種以外に何種類の生物が発見され名前が付けられているかというと、約一七五万種です。そのうち、哺乳類は約六〇〇〇種で、鳥類は哺乳類より少し多く約九〇〇〇種、昆虫は進化の歴史的にも大先輩なだけあって桁違いの種数を誇り約九五万種おります。さらに、未知の生物種を含めると総計八七〇万種の生物が生息していると推定され、その大部分はいまだ未発見か名前がありません。
「種」の違いとは何か
この膨大に感じる数の生物種ですが、そもそも、種が違うとは何を意味するのでしょうか。人間に最も近いといわれているチンパンジーのゲノム(全遺伝情報)と人間のゲノムを比べてみると、約九八・八%が同じで、その違いはわずか一・二%です。このそっくりなゲノムを持つ人間(ヒト科ヒト属、学名:Homo sapiens)とチンパンジー(ヒト科チンパンジー属、学名:Pan troglodytes)では生物種が違うことは皆さんもご存じかと思います。では、小さな小型犬チワワと警察犬としても活躍する大型犬のシェパードはどうでしょう。これは、同じ種の生物(イヌ科イヌ属、学名:Canis lupus familiaris)になります。
初期の分類学では、翼の形やヒレの特徴など、目に見える外部形態に基づいて、種を分けていました。現在の生物学では、マイア(Ernst Walter Mayr:1904-2005)が提唱した「生物学的種概念」というものが広く受け入れられています。これはざっくりと言えば、「子孫を残せる生物同士を同種」とみなす考え方です。
―『學鐙』2024年春号 特集「いまそこにある問いと謎」より―
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