松村 圭一郎「働くこと、休むこと」
現在、一年間の在外研究でフランス東部のストラスブールに来ている。調査のため夏の二ヵ月をドイツで過ごし、フランスと合わせて半年ほどが過ぎた。ドイツもフランスも、夏のバカンスが長く、多くの人がしっかり休暇をとることは知っていた。だが実際に目のあたりにすると、日本での自分たちの「働き方」やその背後にある時間の感覚について考えさせられた。
夏前から大学の研究者も、多くの人はメールが自動返信になり、メールを送っても返事が来なくなる。いま共同研究をしているストラスブール大学の建物も、八月の一ヵ月は完全に閉まってしまい、事務の人も働いていない。六月には期末試験も終わり学期末になるので、学生たちがいなくなり、キャンパス周辺の街は閑散とする。
大学だけではない。フランスの小学校は、ふつう六月末か七月の第一週までには二ヵ月ほどの夏休みに入る。そもそも公立小学校は、水曜日が休みなので、学校に通うのは週四日だけ。九月に新学期がはじまってからも、十月の秋休み、十二月のクリスマス、二月の冬休み、四月の春休みと、それぞれ二週間ほどの休みがある。もちろん親が働いている児童のための学童保育の制度もあるが、子どもに合わせて仕事を休み、家族で過ごす人も多いようだ。
―『學鐙』2023年冬号 特集「はたらくを繙く」より―
電子版のご購入はこちらから
ここから先は
3,444字
¥ 100
期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?