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松村 圭一郎「働くこと、休むこと」

松村 圭一郎(まつむら・けいいちろう)——岡山大学文学部准教授。
専門は文化人類学。著書に『うしろめたさの人類学』『くらしのアナキズム』(ミシマ社)、『旋回する人類学』(講談社)、共編著に『働くことの人類学【活字版】』(黒鳥社)など。

 現在、一年間の在外研究でフランス東部のストラスブールに来ている。調査のため夏の二ヵ月をドイツで過ごし、フランスと合わせて半年ほどが過ぎた。ドイツもフランスも、夏のバカンスが長く、多くの人がしっかり休暇をとることは知っていた。だが実際に目のあたりにすると、日本での自分たちの「働き方」やその背後にある時間の感覚について考えさせられた。
 夏前から大学の研究者も、多くの人はメールが自動返信になり、メールを送っても返事が来なくなる。いま共同研究をしているストラスブール大学の建物も、八月の一ヵ月は完全に閉まってしまい、事務の人も働いていない。六月には期末試験も終わり学期末になるので、学生たちがいなくなり、キャンパス周辺の街は閑散とする。
 大学だけではない。フランスの小学校は、ふつう六月末か七月の第一週までには二ヵ月ほどの夏休みに入る。そもそも公立小学校は、水曜日が休みなので、学校に通うのは週四日だけ。九月に新学期がはじまってからも、十月の秋休み、十二月のクリスマス、二月の冬休み、四月の春休みと、それぞれ二週間ほどの休みがある。もちろん親が働いている児童のための学童保育の制度もあるが、子どもに合わせて仕事を休み、家族で過ごす人も多いようだ。

―『學鐙』2023年冬号 特集「はたらくをひもとく」より―

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灯歌
木下 龍也(歌人)
特集
田中 優子(法政大学名誉教授・江戸東京研究センター特任教授)★
松村 圭一郎(岡山大学文学部准教授)★
嶋田 博子(京都大学公共政策大学院教授)★
西村 勇哉(NPO法人ミラツク 代表理事・株式会社エッセンス代表取締役)★
ナカムラクニオ(美術家・金継ぎ作家)★
平田 はる香(株式会社わざわざ 代表取締役)★
安田 登(能楽師)★
企画連載
岡本 健(近畿大学 総合社会学部/情報学研究所 准教授)
藤江 和子(家具デザイナー)
五十嵐 杏南(サイエンスライター)
髙宮 利行(慶應義塾大学名誉教授)
書評
渡辺 祐真(文筆家・書評家)
水上 文(文筆家 ・文芸批評家)
田尻 久子(橙書店 店主)
原 正人(翻訳家)
丸善出版刊行物書評
湯本 貴和(京都大学名誉教授・日本生態学会前会長)
加野 芳正(香川短期大学学長・元日本教育社会学会長)

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