平田 はる香「はたらくを生活に溶かす」
「いつ寝ているんですか?」とか「全国を飛び回っていて体調は大丈夫ですか?」「休みはあるんですか?」なんてことをよく聞かれる。それは、わたしの行動がSNSで筒抜けで、仕事量が膨大なようにも見えるし、そこら中に移動していることが透けてみえていて〈とても忙しい人〉と見られているからに違いない。
事実はそうでもない。毎日平均睡眠時間は七時間、趣味のボルダリングに週一・二回は通い、毎晩、簡単な手料理と晩酌を楽しみにしていて、日曜日は子どもと遊び呆けている。とても忙しくはあるけれど、人生は充実期を迎えており、自分でも日々幸せだなと感じることが多くなっている。
だが、そこまでに至る経緯は試行錯誤の連続だった。二〇〇九年にパンと日用品の店「わざわざ」を一人で開業してから、大量の仕事に日常が侵食され生活のバランスが取れなくなり苦しんだ。事業が加速すればするほど、日常生活がおざなりになる。そのおざなりな生活は心身の不調を呼び、事業の不調に繋がっていった。そして、働くことと生きることは表裏一体で、密接に関わり合い続けていることを知っていくこととなったのだ。
―『學鐙』2023年冬号 特集「はたらくを繙く」より―
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