山田 雄司「忍ぶもの、解き明かすもの」
忍者研究の始動
近頃、活字を見ていると、「忍」という文字だけが目に飛び込んでくる。二〇一二年から忍者研究をはじめ、十年あまり経つが、意識せずとも脳が自然と「忍」を見つけ出すようになったようである。
それまでの私の研究テーマは、怨霊や怪異、伊勢信仰、熊野信仰といったところであったが、突然忍者研究に携わることになった。それは、三重大学が国立大学法人となり、地方国立大学の使命として、地域とともにさまざまな課題に取り組み、地域からの要望に応えていく必要が生まれてきたからである。そして、伊賀市からも、ぜひ三重大学が市の問題解決に関わってほしいとの要望があり、上野商工会議所・伊賀市・三重大学人文学部で「伊賀連携フィールド」という組織を作り、教育・文化振興・研究の推進を図るとともに、地域振興上の諸課題等に対応することにより、伊賀地域の充実・発展に貢献することとなった。
その際、具体的にどのようなテーマについて取り組んでいこうかと話し合った結果、一つの柱として「忍者」に取り組むことに決定した。それは、忍者は伊賀・甲賀がよく知られていて、その存在は世界にも広まっているものの、学術的にはしっかり研究されていないことから、史料に基づきしっかり解明していこうということになった。
―『學鐙』2024年春号 特集「いまそこにある問いと謎」より―
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