西表島を夢見て#2
【第二話】春合宿「幻の湖調査」
今回は駒澤大学探検部が過去に行った、春合宿「幻の湖調査」(1980)の報告書をまとめて掲載する。
◯活動概要
隊員:総勢11人
時 :昭和55年3月18日~3月28日
目的:幻の湖の多方面からの調査
趣旨:前人調査いまだわずかな西表島の湖を調査することによってパイオニア精神を宿す
合宿内容及び方法概略:
1)測量、魚類、水質の各調査班と岩壁登攀班と置き、湖に至った時点で各班に分れ調査・行動を行う
2)調査場所 幻の湖
期間 一日
◯西表島全体図
西表島には飛行機が通っていないため、石垣島から40分程かけてフェリーで行くことができる。発着港は上原と大原の二つのみ。
幻の湖は西表島上空を飛ぶ飛行機の上から見つかり、それをきっかけに誰かが実際に発見したらしい。駒大が第一発見者かは定かではない。
◯「幻の湖調査」
ルート確認
幻の湖はイタジキ川の最上流に存在する。駒大探検部一同はヒナイ、イタジキ、浦内、前良と、四つの川沿いを通りながらジャングルを縦断するルートで挑んだ。総勢11人、全部で7泊8日という大探検の末この活動を成功させた。
◯1日目(晴れ)
西表島初日は船浦橋近くで幕営。翌日はヒナイ川流域を進む予定だ。
◯2日目(雲り)
ついにジャングルへ出発。ジャングル内はとにかく藪がすごい。予定ではヒナイ川沿いを進むはずだったが、途中で道を間違えたのか、西表農場(詳細不明)に行ってしまい川を見失った。とりあえず昼休憩をはさむが、メシが固くて食えたもんじゃない。食事を済まし再びヒナイ川を目指すと、二時間かけてやっと川に出ることができた。この日は、ピナイサーラの滝を少し越えたあたりの山道で幕営して終了。
◯3日目(曇り)
再びヒナイ川沿いを進む。途中に地図では名前が記されていない滝があり、報告書には西部滝と書かれていた。川がなくなると次は山を越えて、幻の湖へ繋がるイタジキ川へ向かう。その道中、部員の一人がコンタクトを落としたようで、私はこの時代にすでにコンタクトがあったことに驚いた。この日も山の中で幕営して終了した。
◯4日目(曇りのち雨)
ついに「幻の湖」へ向かう。イタジキ川をさらに進み、湖が近くなったところでベースキャンプを設置。湖を調査するために一泊二日で滞在した。
湖までの道中は、大きな岩や滑りやすい箇所が多くあり、かなり大変だった。ある部員は30回はすっ転び、おかげで受け身が上達したそうだ。ベースキャンプから約1時間、険しい道を乗り越えついに、幻とされる湖に到着した。
ジャングルを探検し続けて四日目。藪漕ぎしたり、滑って転んで怪我したり、苦難を乗り越えて見つけた幻の湖だったが、報告書によると、実際はただぽっかり空いた大きな穴に水が溜まっている、沼のような場所だった。感想にも失望や残念などの、悲観的な意見が目立った。倉庫に写真がなかったので調べてみると、確かに沼のような、水の色は深緑色で、周りは木々に覆われて日も当たりにくく、どこか薄気味悪い場所だった。
どうやらNHKが提供した?情報に誤りがあり、それに対して部員一同かなり激怒していた。NHKによると湖には100mの岩があり、そこでクライミングをするのが楽しみだったようだ。
◯5日目(曇りのち雨)
想像していたのと違い、かなり落胆していた一同だったが、さっそく調査を開始。幻の湖では測量、水深、水質、さらには生態調査まで幅広く行われた。以下調査結果である。
調査結果
①測量報告
方法:巻き尺を使った略測量の視角方法
・写真の通り
②魚類班
魚類:(体長)約5cm~10cm、(色)白っぽい、黒っぽい体に青い線
えび類:体長約1cm~10cm(色)うすい赤茶色の半透明、(特徴)ハサミが丸みを帯びてなく尖っていた
③湖水調査班
水質:中性
【備考】
水深は、持ってきたボートに乗るもすぐに沈没し測れず(原因不明)。水質も検査キットの不具合などで十分な結果が得られなかった。他にも岩質やロックを目的に、岩壁登攀調査も行ったが、ハーゲンや釘が打てず、こちらも失敗したらしい。
◯6日目(晴れ)
調査も無事終了し、ベースキャンプを離れ再びジャングル探検へ。来た道を戻るのではなく、そのまま進み縦走する。浦内川沿いを進むと、川沿いの滝近くに浦内川の看板があるらしい。この日は川が分岐しているあたりで幕営して終了。
◯7日目(晴れのち雲り、雨)
ついにジャングル探検最終日。川沿いを進んだ後は再び山越え。報告書内には歩道と書かれているが、詳細は書かれていない。それを超えるとラストスパート。途中体調を崩した隊員もいたらしいが、なんとか最後の前良川沿いを進み、そのまま海岸に出てついに活動を成功させた。
以上7泊8日の大探検は無事成功し、これにて幕を閉じた。
最後の感想欄には一人一人の正直なエピソードが書かれていてとても面白かった。調査が失敗したことや幻の湖が沼に近かったこと、NHKの間違った情報のせいでクライミングができなかった!など、不満が目立ち、失敗という言葉が多くみられた。同時にこの活動を無事成功させた事への喜びや、次の活動への兆なども書かれており、この時代の先輩方の探検に対する熱い思いを私は感じた。
この報告書を読んで胸を熱くした、探検未経験の私は、他大学の探検部さんの協力もあり、この春ついに探検の聖地「西表島」へ行くことができた。
文責:吉田 勇也(駒澤大学探検部)